DI Onlineのロゴ画像

CaseStudy
石川県薬剤師会 (金沢市)
日経DI2013年12月号

2013/12/10
江澤 智絵

日経ドラッグインフォメーション 2013年12月号 No.194

「どうも眠れなくて、睡眠薬を増やしてもらったんです」─。

 こんな患者が目の前に来た場合、適切な患者指導ができているだろうか。

 睡眠薬を服用している患者の中には、医師から必要以上に睡眠薬を増量されていることがある。その結果、過量投与による日中の眠気や注意障害、依存性などが問題となりやすい。

 そこで石川県薬剤師会では、睡眠薬の適切な服薬指導を行うため、お薬手帳に貼る3タイプのシールを作成し、各薬局で活用している。

不眠を手掛かりに傾聴
 きっかけは自殺対策だ。同会では、政府が自殺の予防に重点を置く中で、薬剤師が関与する方法を検討するために「向精神薬服薬リスク未然防止事業委員会」を2011年に設置した。薬剤師が患者とコミュニケーションを密にすることが最も重要と考え、まず手掛けたのが今回のシールの作成だ。

 同委員会のメンバーとして携わった、メディ菊川薬局(金沢市)管理薬剤師の北山朱美氏は、「シールをお薬手帳に貼ることで、薬剤師が睡眠薬に対する患者の悩みを聴きやすくなり、過量投与の防止など一定の効果を上げている」と語る。

石川県薬剤師会の委員として、お薬手帳シールの作成に携わった、メディ菊川薬局の北山朱美氏。患者1人の服薬指導に30分以上掛けることも多い。

 作成したシールは、「睡眠障害対処12の指針」「睡眠・くすりで困っていることはありませんか?」「睡眠日誌」の3種類(写真1~3)。1つ目のシールは、睡眠に関する正しい知識を患者に身に付けてもらうためのもので、「日中の眠気で困らなければ十分」「寝酒は不眠のもと」といった内容だ。2つ目は睡眠と服薬の悩みを解消するためのアドバイスが記載されている。3つ目は睡眠日誌になっていて、患者が自分の睡眠のパターンを記入する。

写真1 お薬手帳用シール「睡眠日誌」

画像のタップで拡大表示

睡眠日誌とその記入方法を示したシールが貼られたお薬手帳の例。眠っていた時間は塗りつぶし、床に就いて起きていた時間は斜線、眠気の強かった時間は、睡眠薬を服用した時間は⇔などと記載する。覚醒回数と起床時の気分を記載することで、睡眠薬が適しているかどうかの判断に活用できる。シールは会員薬局に無料で配布している。

写真2 「睡眠・くすりで困っていることはありませんか?」のシール

画像のタップで拡大表示

睡眠薬の特徴と飲み方などアドバイスが中心。

写真3 「睡眠障害対処12の指針」のシール

画像のタップで拡大表示

厚生労働省『睡眠障害の診断・治療ガイドライン作成とその実証的研究班』2001年度研究報告書から作成。

睡眠日誌が処方提案にも
 「不眠に悩む患者は多くの場合、『眠れない』としか話さない。しかし、よく話を聞けば、寝付きが悪い、何度も目が覚める、起きてからもしばらく眠い、といったパターンを聞き出すことができる」と北山氏は語る。

 そうした詳細な情報を引き出すのに特に有用なのが、3つ目の睡眠日誌だ。睡眠日誌に記載する「起床時の気分」は服薬指導に重要な手掛かりを与える。

 ここには「A.すっきりしている」「B.少しだるい・眠い」「C.かなりだるい・眠い」の3段階で評価して記入する。BやCの記入が多ければ、薬の効果の『持ち越し』が問題になっている可能性がある。すると、より短時間作用型の薬に変更するよう処方医に提案したり、服用タイミングを早くするなどのアドバイスができる。また、覚醒回数が多い場合は、長時間型の薬への変更といった提案が可能になる(ケース1、2参照)。

図1 睡眠シールや声掛けがきっかけで適正使用につながった事例(北山氏による)

画像のタップで拡大表示

 表1は、12年に石川県内の薬局を対象に行ったアンケートの結果だ。重複・過量服薬を発見・指摘できた事例が少なからずあり、処方変更・減薬・中止に至ったケースもあった。

表1 睡眠薬関連シールとお薬手帳の貢献度

画像のタップで拡大表示

石川県内保険薬局396カ所を対象に2012年6月~8月の8週間にわたり実施したアンケートの結果。回収率58.6%。

 北山氏は、「向精神薬を服用している患者と話をする機会を増やすのが一番の目的」と話す。今回の取り組みを生かして、向精神薬全体について適切な服薬指導ができる体制を構築していく方針だ。 (野村 和博)

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ