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徹底マスター 薬の相互作用としくみ
スタチンやARBの薬効にUGTの遺伝子多型が影響
日経DI2013年12月号

2013/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年12月号 No.194

嶋本 豊、杉山 正康 ハマダ薬局(山口県下関市)、杉山薬局(山口県萩市)

 薬物の代謝、排泄、解毒に関わる薬物代謝酵素群とその反応機構は、第1相のチトクロームP450(CYP)酸化反応、第2相の抱合反応、第3相の薬物トランスポーターに分けられる。抱合反応は、親水性分子を薬物に付加する酵素反応であり、グルクロン酸抱合、硫酸抱合、グルタチオン抱合などがある。中でもグルクロン酸抱合は、肝細胞の小胞体膜に存在するUDP-グルクロン酸転移酵素(UGT)によって触媒される反応であり、第2相反応の中心的な役割を担っている。

 UGTにはUGT1とUGT2の2つのファミリーがあり、17の分子種が存在する。これらの分子種には遺伝子多型が存在し、UGT活性の変化により抱合が抑制または促進され、薬の効果や副作用発現の個人差をもたらすことが示されている。

 グルクロン酸抱合が関与する相互作用については、本誌2011年6月号DI BOXで述べたが、UGTの遺伝子多型の影響を受ける薬剤を把握しておくことは、抱合が関与する相互作用を防ぐ上で極めて重要である。そこで今回は、日本人で頻度が高いUGT1A1、1A3、1A4、1A6、2B7の遺伝子多型と、それらの影響を受ける薬剤について解説する(表1、2)。

表1 日本人の主なUGT遺伝子多型の頻度

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表2 UGTの遺伝子多型が問題となる主な薬剤

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UGT1A1の遺伝子多型

 UGT1A1*6およびUGT1A1*28変異型アレルの存在によって、グルクロン酸抱合が阻害されることが知られている。UGT1A1*6は、UGT1A1遺伝子の1番目のエクソンに存在する一塩基多型(SNP)であり、この変異によりアミノ酸置換が起こるため酵素活性が低下する。一方、UGT1A1*28では、UGT1A1遺伝子の転写開始に関わるプロモーター領域のチミン(T)とアデニン(A)の反復配列(TATAボックス)が、通常の6回ではなく7回の繰り返しになっているため、UGT1A1の発現量が低下する。

 UGT1A1はビリルビンの唯一の代謝酵素であるため、遺伝子多型による発現量や活性の低下は、遺伝性非抱合型高ビリルビン血症(Crigler-Najjar症候群、Gilbert症候群、母乳性黄疸)の原因となる。またUGT1A1は、抗癌剤のイリノテカン塩酸塩水和物(商品名カンプト、トポテシン他)の活性代謝産物であるSN-38を解毒する酵素としても知られている。

 日本では2008年6月、UGT1A1*6および*28をホモ接合体(*6/*6、*28/*28)または複合ヘテロ接合体(*6/*28)で持つ患者において、イリノテカンによる重篤な副作用の発現リスクが高まるとの報告を受け、同薬の添付文書が改訂され、「重要な基本的注意」にUGT1A1*6および*28に関する記述が加えられた。同時に両遺伝子多型の測定キット「インベーダーUGT1A1アッセイ」が製造販売承認を取得し、08年11月に保険収載、09年3月に発売されている。

 また、UGT1A1*28/*28を持つ患者では、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)のラロキシフェン塩酸塩(エビスタ)の作用増強(骨密度上昇)や、それに伴う血中ビリルビン濃度の上昇が報告されている。*28/*28を持つ患者では、ラロキシフェンとビリルビンの抱合が共に阻害され、血中濃度が上昇すると考えられる。さらに*28/*28では、エゼチミブ(ゼチーア)の血中濃度が上昇する可能性も示されている。

 そのほか、UGT遺伝子多型による血中濃度上昇や総ビリルビン値、黄疸リスクの上昇などが報告されている薬剤として、ラルテグラビルカリウム(アイセントレス)、インジナビル硫酸塩エタノール付加物(クリキシバン)、アタザナビル硫酸塩(レイアタッツ)、ソラフェニブトシル酸塩(ネクサバール)、トシリズマブ(アクテムラ)がある。クロザピン(クロザリル)も、UGT1A1*28による抱合反応の阻害が示されている。

 なお、アトルバスタチンカルシウム水和物(リピトール他)は、UGT1A1によってラクトン体(不活性型)へと代謝される。UGT1A1*28を持つ患者では、ラクトン体の血中濃度が上昇するケースが報告されている。

UGT1A3の遺伝子多型

 UGT1A3*2遺伝子多型は、肝臓における抱合反応を促進すると考えられている。そのためUGT1A3*2を持つ患者では、アトルバスタチンやテルミサルタン(ミカルディス)の抱合が促進され、薬効が減弱する。興味深いことに、UGT1A3とUGT1A1の遺伝子多型の頻度は相関関係にあることが示されている(連鎖不平衡)。

 例えば、前述のUGT1A1*28を持つ患者でアトルバスタチンの抱合促進が認められるのは、UGT1A3*2の発現促進に起因することが示されている。テルミサルタンも同様、UGT1A1*28により1A3*2aの発現が増加し、抱合が促進すると考えられる。UGT1A1*6とUGT1A3*4aも連鎖不平衡にあるが、*2aと異なり*4aの存在下では抱合が抑制されるため、UGT1A3*4aを持つ患者ではテルミサルタンの血中濃度が上昇する恐れがある。

 なお、アトルバスタチンの服用によってミオパチーを起こした患者は健常人に比べ、ラクトン体(アトルバスタチンラクトンおよび2‐ヒドロキシアトルバスタチンラクトン)の全身曝露量がそれぞれ2.4倍、3.1倍に増加することが示されており、UGT遺伝子多型による抱合促進がミオパチーの発現に関与する可能性も示唆されている(Clin Pharmacol Ther. 2006;79:532-9.)。

UGT1A4の遺伝子多型

 UGT1A4遺伝子多型のうち、日本人では、SNPによりアミノ酸置換を生じるL48V(142番目のチミン[T]がグアニン[G]に置換した多型)の頻度が高い。L48Vを生じるアレルにはUGT1A4*3、*6、*7があるが、*6と*7の頻度はそれぞれ0.2%であることから、L48Vの大半はUGT1A4*3である。L48Vによる抱合促進と薬効減弱には注意が必要である。

 UGT1A4*3の影響を受ける薬剤には、オランザピン(ジプレキサ)、クロザピン、ラモトリギン(ラミクタール)、イミプラミン塩酸塩(トフラニール他)などがある。*3/*3を持つ患者で、オランザピンの10-N-グルクロン酸抱合体濃度が2.5倍に上昇することが報告されている。また、UGT1A4 L48Vにより、クロザピンおよびその活性代謝物(ジメチルクロザピン)のグルクロン酸抱合体が2~5倍に増加することや、ラモトリギンの血中濃度が52%低下することが報告されている。クロザピンは、UGT1A1*28を持つ患者でN+-グルクロン酸抱合体が減少することから、UGT1A4*3だけでなく、UGT1A1*1の影響も受けると考えられる。

UGT1A6の遺伝子多型

 UGT1A6遺伝子多型のうち、UGT1A6*2は日本人の21%に存在する。アスピリン(バイアスピリン他)は、脱アセチル化によりサリチル酸に変換された後、UGT1A6で抱合される。UGT1A6*2によりアスピリンの抱合反応が迅速になることが示されている。

 一方、アセトアミノフェン(カロナール他)は、約50%がUGT1A6で代謝される。UGT1A1多型が関与するGilbert症候群の患者が同薬を服用すると、肝障害のリスクが高まることが報告されているが、これはUGT1A1多型とUGT1A6多型の連鎖により、抱合能が低下するためとも考えられる。

 なお、UGT1A6遺伝子多型により、バルプロ酸ナトリウム(デパケン他)の抱合反応が促進または抑制され、薬効が変動することも報告されている。

UGT2B7の遺伝子多型

 日本人ではUGT2B7*2、*3の頻度が高い。UGT2B7*2におけるシロドシン(ユリーフ)の抱合阻害(薬効増強)、UGT2B7*3におけるカルベジロール(アーチスト他)のクリアランス減少が報告されている。

 エピルビシン塩酸塩(ファルモルビシン他)は、UGT2B7(268tyr/tyr)の多型を持つ患者で効果が増強することが報告されている。一方、ジドブジン(レトロビル)は、UGT2B7*1cにおいて抱合促進(薬効減弱)が示されている。

多型を考慮した服薬指導

 遺伝子多型は薬物相互作用の発現に深く関わっている。例えば、UGT1A1遺伝子多型により抱合が阻害される薬剤と、UGT1A1阻害薬(アタザナビル、トラニラスト[リザベン他]など)やUGT1A1で抱合される薬剤を併用する場合、患者がUGT1A1活性を低下させる変異型アレルを有していると、両者の血中濃度が上昇して副作用の発現リスクが高くなる。

 特にUGT1A1に関しては、活性低下を招く1A1*28、*6の遺伝子多型の頻度が高い。UGT遺伝子多型の影響を受ける薬剤の中には、ラロキシフェン、エゼチミブ、アセトアミノフェンといった、処方頻度が高い薬剤もあるため注意を要する(ケース1)。

 また、UGT遺伝子多型により抱合が促進されるアトルバスタチンとテルミサルタンを併用した場合、UGT1A3による抱合が競合する可能性がある(ケース2)。

 UGT1A4*3の影響を受ける薬剤(オランザピン、クロザピン、ラモトリギン、イミプラミンなど)を互いに併用する場合も同様に、抱合の競合による薬効増強に注意を要する。

 当薬局での実際の対応を示す。

 Aさんは骨粗鬆症と脂質異常症のため、ラロキシフェンとエゼチミブを服用している。いずれもUGT1A1の基質であり、UGT1A1遺伝子多型を有する患者では血中濃度が上昇する可能性がある。

 Aさんが多型を有するかどうかは不明だが、両薬剤の併用により抱合反応が競合し、双方の作用が増強する可能性が高い。エゼチミブの主な副作用は便秘や下痢、腹部膨満感などの消化器症状だが、ラロキシフェンは重篤な静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症、肺塞栓症、網膜静脈血栓症など)を引き起こす恐れがある。

 そこで薬剤師は、おなかの調子が良くない場合は相談すること、足の痛みやむくみが現れたり、突然呼吸しにくくなったり、物が見えにくくなったりした場合は、直ちに連絡するように伝えた。

 また、発症頻度は不明であるものの、ラロキシフェンおよびエゼチミブによる肝機能障害が報告されている。さらにアセトアミノフェンも、UGT1A1および1A6阻害作用により肝障害を起こす恐れがある。これらの薬剤の併用により、肝障害のリスクが高まるほか、UGT1A1の競合阻害によって血中ビリルビン値の上昇や黄疸を引き起こす可能性が考えられた。

 Aさんには、主な薬剤性肝障害の副作用である頭痛、吐き気、悪心、発熱、食欲不振、倦怠感、黄疸(皮膚や目が黄色くなる、皮膚の痒み、尿の色が濃くなる)といった症状に注意し、これらの症状が表れた際にも速やかに受診するよう伝えた。肝機能障害の早期発見には、定期的な血液検査を受けることが重要であることも説明している。

 Aさんは2年以上、服用を継続しているが、現在のところ静脈血栓塞栓症状や肝機能異常は認めていない。

 アトルバスタチンを1年以上服用中のBさんは、高血圧と診断され、テルミサルタンが追加された。

 両薬剤はUGT1A1および1A3遺伝子多型の影響を受けることが知られている。併用によりUGT1A1や1A3による抱合反応が競合し、双方の血中濃度が上昇する可能性が考えられた。

 担当した薬剤師は、初めて降圧薬を服用した際は、ふらつきやめまい、立ちくらみなどの低血圧症状が表れる恐れがあるので、車の運転など、危険が伴う機械の操作には十分注意するように伝えた。

 さらに、テルミサルタンとの併用によってアトルバスタチンによる筋肉障害の発症リスクが高まる可能性があることを伝え、これまでと同様、手足の筋痙攣や痛み、脱力感などが表れた場合には必ず相談するよう指導した。

 テルミサルタンの開始から数カ月経過したが、異常は認めていない。引き続き、投薬時にはこれらの症状の有無を確認している。

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