DI Onlineのロゴ画像

Interview
薬局薬剤師を外来のチーム医療の一員に。疑義照会一部不要へ
日経DI2013年12月号

2013/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年12月号 No.194

 京都大学医学部付属病院では2013年10月、病院長と近隣薬局が合意書を交わし、剤形変更や規格変更、粉砕や一包化などの8項目は疑義照会せずに変更調剤できるようにする制度の運用を開始した。薬薬連携の新しい取り組みを進める狙いを同病院薬剤部長の松原和夫氏に聞いた。(聞き手は本誌編集長、橋本宗明)

まつばら・かずお
1955年生まれ。78年京都大学薬学部卒業。島根県(保健所)、島根医科大学医学部などを経て、97年旭川医科大学医学部教授、病院薬剤部長。2012年4月から、京大医学部付属病院教授・薬剤部長に就任。文部科学省の薬学教育モデル・コアカリキュラム改訂に関する専門研究委員会委員などを務める。

─京都大学医学部付属病院では、薬局薬剤師からの疑義照会を一部不要とする取り組みを開始しました。その目的を教えてください。

松原 まず、言っておきたいのは疑義照会だけを問題視しているわけではないということです。京大病院ではずっとチーム医療を進めてきましたが、2012年の診療報酬改定で病棟薬剤業務実施加算が設けられ、チーム医療に薬剤師が加わる枠組みが出来上がってきました。翻って、外来のチーム医療がどうなっているかというと、現時点では十分な体制はありません。それで薬局薬剤師にもチーム医療に加わってもらえないかと考えたのです。

 一方で、チーム医療の利点の一つに各職種の負担軽減があります。例えば、10mg錠を半錠のところを5mg錠に替えるなど、薬剤師の判断で変更してもいいのではないかということがあります。病院内ではそれを薬剤師の判断で変更調剤できる運用にして医師の負担を軽減したのですが、同じようなことは院外処方でもある。だから外来のチーム医療を進めれば医師の負担を軽減できると考えました。

 それから、疑義照会については以前から疑問がありました。薬剤師法第24条の疑義照会というのは、本来、その処方が患者さんの薬物療法として適しているのかをチェックするものです。ところが、現実に疑義照会しているのは処方箋の記載の不備や、一包化、錠剤の粉砕といった内容ばかりです。もともと個々の患者さんが一番飲みやすい形で薬を提供するのが調剤で、調剤料という技術料が設定されていたはずです。ところが、調剤料とは別に一包化加算などの加算が設けられました。すると、薬を飲みやすい形にするのは本来の薬剤師の役割だから、いちいち許可をもらうことではないはずなのに、加算の算定のために疑義照会を行うようになり、それに対応するために医師の負担が重くなってきた。だから、薬局薬剤師にはチーム医療の一員となって、処方箋をしっかり監査して疑義照会すべきものはしてもらいますが、そうでないものは合意に基づいて不要にしようと考えたのです。

─京大病院では、8月に薬局薬剤師が得た情報を処方医にフィードバックする服薬情報提供書(トレーシングレポート)の運用を開始し、9月からは肝機能や腎機能など13項目の検査値を全ての院外処方箋に記載しています。今回の取り組みもこれらの延長上にあるのでしょうか。

松原 そうです。病院の入院日数が短くなり、外来では今まで以上に重症な患者さんを診なければならなくなっているので、外来におけるチーム医療の必要性は高まっています。それで、処方を監査して疑義があれば疑義照会してもらいますが、疑義ではないけれど服薬上大事なことを患者から聞いた場合に、トレーシングレポートとして病院に返してもらい、電子カルテに貼って医師が見られるようにしました。検査値についても、薬局薬剤師がチーム医療の一員として処方を監査するのに必要な情報だから記載するようにしました。これには他の病院から「うちもやる」という連絡をたくさんもらっています。

 そういう一連の動きの中で、今回の疑義照会の取り組みを見てもらいたいのですが、これだけを捉えて批判する声が聞こえてきます。「厚生局に確認してやっているのか」と言われることもありますが、担当者によって見解が異なるかもしれないので確認はしていません。京大病院がやれば社会的インパクトもあるので当局もむげなことを言ってはこないだろうし、薬物療法の安全性向上のためという信念があるのでそれを主張していきたいと思っています。

─トレーシングレポートや検査値の記載は全ての薬局に対して行っていますが、疑義照会一部不要の合意書は近隣10カ所の薬局とだけ交わしました。

松原 どこでも認めてしまうと、診療報酬の加算を請求するなど悪用される可能性がありますから。10年4月のチーム医療の推進に関する厚生労働省医政局長通知にある「プロトコルに基づく薬物治療管理」(PBPM)の一環として実施するので、法的な裏付けはあるのですが、京大病院の考えを理解しないところがやると法的な問題も生じかねません。だから日ごろから顔の見える薬局に限定しました。

─一連の取り組みに対する反響はいかがでしょうか。

松原 苦情は聞きますね。われわれだけでなく、合意書を交わした薬局も色々言われているようです。

 処方箋への検査値の記載についても、「処方箋には薬以外のことを書いてはいけないことを厚生局に確認しましたか」と、わざわざ言ってくる人がいる。だけどわれわれの見解は、この項目がなければ処方監査ができないから、処方箋に必須というものです。

 処方箋に薬以外は書けないからと、検査値を記載した紙を横に張り付けているような取り組みはこれまでもたくさんありますが、それでは「紙が違うので見えなかった」ということで済まされかねません。だから処方箋に直接記載して、「薬局薬剤師の義務として見てください」と言っているのです。

 そうすると薬局からは、「責任を持てないのでやめてほしい」という声も出てきます。でも、薬局が外来患者のチーム医療、あるいは地域のチーム医療の中に組み込まれるならば、責任を持つべきです。薬局薬剤師の役割を取り戻すには、そこは理解していただきたい。もし責任を持てないということなら、それこそネット調剤(医療用医薬品のインターネットを介した交付)で十分ということになりかねません。

─病院の薬剤部の立場で、薬局薬剤師をチーム医療の一員に位置付けたいと言われるのは、それだけ信頼されているということなのでしょうか。

松原 信頼をおける存在になってほしいということです。病院内ではチーム医療の方向性ははっきりしていますし、色々なことに取り組んでいますが、それだけでは薬剤師が社会の中でリスペクトされる職業にはなりません。薬剤師のポジションを確立するには、全体の底上げが必要なので、そこに貢献していければと考えています。

 それと、薬学教育に僕も関わってきたので、自分たちが作ったカリキュラムの中で育った薬剤師に頑張ってほしいという気持ちもあります。6年制の薬剤師が出てきたのに、現場でやっていることが同じだったら意味がない。勉強してきた人たちがその知識を使えるような職場にしないと、何のための6年制だったのかという話になりかねません。病院内のわれわれの業務も変えないといけないし、薬局にもちゃんと対応してもらわないといけない。今、変わらなければ変わる時がないと思います。

インタビューを終えて

記事では割愛しましたが、松原氏は病院内でのチーム医療に関して、「薬剤師もカルテに記入するのが基本」と指摘します。「情報共有するには、薬歴だけでなく医師や看護師が毎日見るカルテに書かなければ意味がない」からです。

 その松原氏のリーダーシップで始まった外来でのチーム医療の取り組み。目指すのはやはり、チーム内での患者さんの情報の共有化なのでしょう。京大病院での取り組みが、今後どのように進展していくのかが注目されるところです。(橋本)

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ