DI Onlineのロゴ画像

医師が語る 処方箋の裏側
ステロイドと保湿剤の混合処方で 「変更不可」の理由
日経DI2013年12月号

2013/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年12月号 No.194

 銀杏の葉が色づくころ、高橋文雄さん(仮名、82歳)が「全身が痒くて」と受診してきた。この時期、空気の乾燥から皮脂欠乏性湿疹が増える。高橋さんもその一人だ。

 皮脂欠乏性湿疹にはステロイド軟膏と保湿剤を処方するのが定番だが、必ず「アンテベート軟膏とヒルドイドソフト軟膏を1対1で混合」の処方を「変更不可」で出す。同じランクであっても別のステロイドは使わないし、後発医薬品など同成分の他薬への変更もしてほしくないからだ。

 ステロイド外用剤の処方時に混合調剤を指示することは少なくない。保湿剤を混合して全体量を増やすことで、広い塗布範囲に十分に塗れるというメリットがある。アンテベート軟膏の場合、16分の1まで希釈しても効果は低下しないことが分かっている。

 ただし混合調剤には、基剤の乳化の安定性や主剤の安定性、皮膚透過性などが変化するといった思わぬ落とし穴がある。配合変化の有無をその都度調べるのは難しく、問題がないと確認されている組み合わせを知っておき、それ以外は使わないとするのが現実的だ。その点、アンテベート軟膏とヒルドイドソフト軟膏は、各種文献で注意が必要とされている点を全てクリアしている。両メーカーも混合時のデータを出しており、安心して使える。

 皮膚外用剤においては、主剤が同じでも基剤が異なれば別ものと考えざるを得ない。データがなく確証が得られない以上使うべきではないと考える。

 なお、全身に痒みを訴えていた高橋さんには、たっぷり塗ってもらいたいため少し多めの量を処方し、「1週間で使い切ってください」と伝えた。薄く擦り込むように塗る人が多く、使用量の目安を示すことが大切だ。1週間しっかり使って湿疹が治まれば、後は保湿剤だけでコントロールが可能となることもある。ポイントは十分な量を毎日、塗ること。薬局でも患者がきちんと塗れるように、量も含めた具体的な指導をしてほしい。(談)

常深 祐一郎氏
Tsunemi Yuichiro
東京女子医科大学講師。1999年東京大学医学部卒。東大病院と国立国際医療センター(当時)皮膚科で研修後、東大皮膚科医員、助教を経て、2010年から現職。医学博士。日本皮膚科学会認定専門医、日本医真菌学会認定専門医。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ