DI Onlineのロゴ画像

Dr.名郷が選ぶ 知っていてほしい注目論文
ビタミンCはかぜの予防や治療に有効か? ほか
日経DI2013年12月号

2013/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年12月号 No.194

名郷直樹
武蔵国分寺公園クリニック(東京都国分寺市)院長

1986年自治医科大学医学部卒業。東京北社会保険病院(東京都北区)臨床研修センター長などを経て2011年に開業。エビデンスに基づく医療(EBM)の考え方を日本でいち早く取り入れ、普及に努めてきた。著書も多数。CMEC-TVでもEBM情報を配信中。

画像のタップで拡大表示

 今回はビタミンCとかぜという、古くて新しい話題を取り上げる。

 ビタミンCがかぜに効くという話は、ノーベル化学賞と平和賞を受賞した生化学者、ライナス・ポーリング氏が主張したのが発端だといわれている。著名なノーベル賞受賞者が「私はビタミンCでかぜを予防している」と言えば、いかにも大きなインパクトがある。

 しかし、それに反発する人たちもいたようである。データで明らかにすべく、長期にわたり研究が行われてきた。ポーリング氏がビタミンCの効果を主張したのは1970年ごろであるが、その後40年以上も議論が交わされ、研究に没頭している人がいることを考えると、やはり氏は偉大である。

 さて、ビタミンCのかぜに対する治療と予防の効果に関するシステマティックレビューが2013年に発表された。その結果はなんとなく微妙である。

 予防効果については、違いはたかだか3%にすぎず、少なくとも個人がビタミンCを飲んで実感できるような大きな効果はないといえそうだ。一方、治療効果については、かぜ症状の平均持続日数が統計学的に有意に少なくなっている。しかし、これもよく見てみると短くなるのは10%弱。5日のかぜが4.5日に短縮する程度である。

 これはどこかで聞いた話だと思ったら、オセルタミビルリン酸塩(商品名タミフル)の治療効果の議論に似ている。タミフルでインフルエンザ罹病期間がどれだけ短縮されるかは議論があり、本論文の出典元であるコクランデータベースにある最近のシステマティックレビューでは、タミフル群の罹病期間はプラセボ群の160時間よりも21時間(13%)短いとの結論が出されている。

 上記のデータを踏まえた上でタミフルを服用したいと考える患者であれば、ビタミンC入りのドリンクをどっさり買うのかもしれない。

表1 ビタミンC投与群とプラセボ投与群における研究結果の比較

画像のタップで拡大表示

図1 ビタミンC投与群とプラセボ投与群におけるかぜへの影響の比較

画像のタップで拡大表示

画像のタップで拡大表示

 本研究は、心筋梗塞のリスクが低い日本人において、スタチンの一次予防効果を統計学的に初めて明らかにした、歴史的に重要な論文である。スタチンは日本で開発されながら、日本人に対する効果はなかなか論文にならなかった。心筋梗塞の一次予防効果がスコットランドの研究で1995年に初めて示されてから10年以上後の発表である。

 本試験の結果は、スタチンの投与により「100人の冠動脈疾患が67人にまで少なくなる」というものであった。この論文のインパクトは、スタチンの効果だけではなく、日本人の心筋梗塞のリスクがどれほど低いかを明確に示したところにもある。プラバスタチン非投与群1000人年当たり5人しか心筋梗塞や狭心症になっておらず、スタチンの服用によって3人に減ることが示された。

 この事実をもう少し踏み込んで解釈してみると、両グループともそれほど心筋梗塞にならない。日本人は虚血性心疾患の死亡率が欧米人の5分の1程度とされており、そもそも心筋梗塞を心配しなくていい人を対象に行われた研究であるとも解釈できる。

 薬の効果を判断する際、幅広い視点を持たなければならない。それを説明するのによく引き合いに出される本論文は、やはり歴史的に重要である。

表2 プラバスタチン投与群と非投与群におけるイベントの発生率とハザード比

画像のタップで拡大表示

(本コラムは新連載です。隔月で掲載します。)

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ