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DIクイズ1(A)
DIクイズ1:(A)Ca拮抗薬服用中にCa摂取不足になったら
日経DI2013年12月号

2013/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年12月号 No.194

出題と解答 : 東風平 秀博
(田辺薬局[東京都中央区])

A1

(1)副甲状腺ホルモン、(2)破骨、(3)上昇、(4)上昇、(5)上昇

 高血圧患者と、血圧が正常な人とで血管壁平滑筋細胞内のカルシウム濃度を比較すると、高血圧患者の方が高い。これは、高血圧患者では何らかの原因で、細胞内にカルシウムイオンが細胞膜上のカルシウムイオンチャネルを介して流入した結果、血管壁の平滑筋が収縮し、血圧上昇が引き起こされているからである。

 カルシウム拮抗薬は、カルシウムイオンチャネルと結合して、細胞内にカルシウムが流入しないようにする機序を持つ。この働きはカルシウムの摂取量が多少増えても弱まるものではないと考えられる。カルシウム拮抗薬の中にカルシウム製剤が併用禁忌または併用注意となっている薬剤はない。

 一方、Kさんのように、食事からのカルシウム摂取が不足すると、血中のカルシウム濃度を低下させないように副甲状腺ホルモン(PTH)が分泌され、破骨細胞が骨を溶かして、血中にカルシウムが溶け出し、高カルシウム血症や骨粗鬆症になる。血中の過剰なカルシウムは尿中に排泄されるが、カルシウムが慢性的に不足していると、常に骨から血液中にカルシウムが溶出するため、血管壁にカルシウムが沈着、石灰化するほか、細胞内のカルシウム濃度が上がり、血圧の上昇を引き起こす可能性が示されている。

 古いデータではあるが、1983年から10年間に公表された23の疫学調査を基にしたメタ解析でも、カルシウム摂取量と血圧との間に、このような負の相関関係を認めている。また、Honolulu Heart Studyで対象となった米国ハワイ州ホノルル居住の日系米国人男性では、1日のカルシウム摂取量が320mg未満の群では有意な血圧高値が示されていた。この報告によれば、高血圧発症の危険性が高くなるカルシウム摂取量の閾値は、約500mg/日以下とされている。高血圧患者ではカルシウムの摂取が重要であると考えられており、米国高血圧合同委員会(JNC)は、高血圧の非薬物療法の一つとして十分なカルシウム摂取を推奨している。

 カルシウムの摂取による降圧のメカニズムとして考えられているのは以下の通り。まず、カルシウム補給により血管平滑筋細胞膜が安定化し、膜透過性が低下するため、細胞内へのカルシウム流入が抑制される。そしてCa2+-ATPaseやNa+/ K+-ATPaseの活性が亢進することにより、細胞内のCa2+濃度が減少し、血管平滑筋の弛緩を来す。また、PTHとビタミンD3の分泌抑制やカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)の増加、腎臓からのNa排出の亢進、レニン・アンジオテンシン系の抑制、交感神経系活動の低下も、降圧に寄与すると考えられている。

 日本骨粗鬆症学会などによる「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」では、骨粗鬆症の患者では1日700~800mgのカルシウム摂取が推奨されている。なお、心血管合併症などの副作用を予防するため、一度に500mg以上は摂取せず、分けて取るよう勧めるとよいだろう。

 また、骨粗鬆症などで活性型ビタミンD3薬が併用されている患者では、高カルシウム血症を発症する可能性があるため、注意する必要がある。

 これまでカルシウムの摂取不足だったKさんには、乳製品、骨ごと食べる魚、殻を含むエビ、葉物野菜などカルシウムを多く含む食品を積極的に取るように伝えることが重要である。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 カルシウム拮抗薬は確かにカルシウムの働きを抑えますが、だからといってカルシウムを取るといけないわけではありません。むしろ積極的に取る方がいいのです。体は骨からカルシウムを溶かして利用しますので、カルシウムが不足すると、血液中のカルシウムの濃度が逆に高くなって、血圧が上がる原因になります。また、骨がもろくなって骨粗鬆症になってしまいます。

 カルシウムは牛乳やチーズといった乳製品、骨ごと食べる魚、葉物野菜などに多く含まれています。1日摂取量は700~800mgが目安で、何回かに分けて食べるとよいでしょう。

参考文献
1)日本医事新報 1996;3764:348-9.
2)日本医事新報 1997;3797:108.
3)CLINICAL CALCIUM 1997;7:77-81.
4)日本骨粗鬆症学会など「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン」(ライフサイエンス出版、2011年).

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