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セルフメディケーション推進へ スイッチOTC薬の拡大を
日経DI2013年12月号

2013/12/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年12月号 No.194

 今年1月の最高裁判所による判決以降、続々とネット事業者や大手流通企業が一般用医薬品(OTC薬)の販売に乗り出している。だがそれとは裏腹に、医療用医薬品のスイッチOTC化はなかなか進まないようだ。10月には日本OTC医薬品協会が、特に生活習慣病分野のスイッチOTC薬の承認審査が一部の利害関係者の発言により不当に妨げられているとして、厚生労働大臣に緊急要望書を提出した。同協会は2007年以降にスイッチOTC薬の候補として129品目を挙げてきたが、このうち実際には13品目しか承認されていないという。

 なぜ、承認されないのか。一つの見方として、OTC薬が、病気に悩む人が何らかの事情があって病院に行けない、または行きたくないという場合に当座しのぎで使う薬と認識されていることが挙げられる。つまりその主な対象は急性疾患のような短期使用であり、生活習慣病分野に代表される慢性疾患のような長期使用には不向きと見なされている。脂質異常症治療薬のエパデールがスイッチOTC薬化されたが、販売に様々な条件が課せられたことにもそれなりの根拠はあるといえよう。

 しかしOTC薬を、急性疾患の当座しのぎだけのものとするのはあまりにもったいない。むしろ予防医療のツールとしてしっかりと位置付け、販売にはセルフメディケーションの支援の役割を担う薬局薬剤師が関わっていくべきではないか。スイッチOTC薬の品目が増えることで、セルフメディケーションにおける選択の幅が広がるのだから、スイッチOTC薬の承認が進まないのはあまり望ましいことではない。

 保険診療で用いる医療用医薬品は、一部例外はあるものの、原則として病気になった人に給付されるものである。それは当然で、まだ病気でない人にも保険で薬を給付していたら日本の医療財政はパンクしてしまうからだ。だが検証すれば、医療用医薬品の中にも疾病の予防に効果的なものが少なからずあるだろう。実際、一部の糖尿病治療薬には、条件付きで予防の効能が認められている。

 もちろん、医療用医薬品のスイッチOTC薬化に際しては副作用リスクなどを十分に考慮する必要があるし、予防的な利用にもエビデンスがあることが証明されなければならない。エビデンスが不十分な製品を売り込んで、消費者の不利益を招くような事態は絶対に避けねばならない。ただ販売するだけではダメで、薬局薬剤師が関わる意義もそこにあるといえるだろう。

 日本には国民皆保険制度があり、いつでも気軽に病院で医療用医薬品を処方してもらえるのだから、スイッチOTC薬を増やす必要はないと言う人もいるだろう。しかし日本の医療保険財政は火の車だ。誰もがあまりに気軽に病院に行くために、診察をする医師が多忙を極め、本当に医療が必要な人に十分な時間を割けないという問題もある。その点、スイッチOTC薬を増やし、それを活用して予防と早期回復に努めてもらう方がよほど効率的だ。医療費削減の観点からも、スイッチOTC薬の品目を拡大すべきだ。

 OTC薬は、一部の利害関係者のものでもネット事業者や大手流通企業のものでもない。健康を求める人のためのものである。薬剤師はセルフメディケーションの支援者としてその知識と経験を生かし、スイッチOTC薬のさらなる活用を提案していくのも職能だと思うのだが、いかがだろうか。(みち)

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