DI Onlineのロゴ画像

後発品をどう選ぶ
〔ファイザー〕後発品を自社ブランドの新製品として供給することで価値を高める
日経DI2013年11月号

2013/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年11月号 No.193

本誌の後発品企業ランキングで、一昨年29位だったファイザーは昨年5位、今年は4位と着実にランクアップしている。事業の今後の方向性などを同社取締役執行役員の松森浩士氏に聞いた。


─ファイザーでは「エスタブリッシュ医薬品」という言葉を用いてプロモーションしていますが、これはどういうものですか。

松森 エスタブリッシュ医薬品を一言で表現すれば、「長く使われている標準的治療薬」といえます。つまり、臨床での長期にわたる使用経験に基づいて効果と安全性が確立され、今後も長く使われていく標準治療薬のことで、特許期間が満了した先発品(長期収載品)と後発品が含まれます(図)。

図 エスタブリッシュ医薬品の考え方(ファイザーによる)

画像のタップで拡大表示

 これまでのファイザーにとって、後発品は競合する存在でしたが、発想を大きく変え、後発品を自社ブランドの新製品として売り出すことで価値を高めていこうと考えています。そして今後は、アンメットニーズに応える「特許で守られている新薬」と、実地医療の現場で効果と安全性が評価されている「エスタブリッシュ医薬品」という2つの大きな軸で医薬品マーケットを考えていきます。超高齢社会を迎えたわが国で、エスタブリッシュ医薬品の価値を高めて普及させることは、医療経済の視点からも貢献度が高く、社会的意義も大きいと考えています。

─後発品をファイザーブランドの“新製品”として扱うということですね。

松森 例えば、後発品でも有害事象が起こり、それが未知の有害事象なら伝達・報告義務が生じます。その義務をきちんと果たすことが、医薬品を扱う企業の真の責任だと考えています。つまり、本気で後発品を扱う以上、全てに責任を持つことが求められるのです。そこで、製造承認を得て、できるだけファイザーの名前を付けた自社ブランドの後発品を増やそうと、この数年間努力してきました。

─今回の調査の一環で「今後備蓄したいメーカー」と聞いたところ、第2位(第一三共エスファが1位)に選ばれ、病院薬剤師に限ると第1位でした。この結果をどう思われますか。

松森 このランキング調査の対象は薬剤師の先生方ですから、このように高く評価されたことはとてもうれしく思っています。私たちは、エスタブリッシュ医薬品の価値を最もよく分かっているのは薬剤師の先生方だと考え、当初は主に病院薬剤師さんの理解が得られるように努力してきました。ですから、「今後備蓄したいメーカー」で第2位に選ばれたことは、私たちの努力が実った、非常に素晴らしい結果だと受け止めています。おそらく、「ファイザーは後発品も本気で取り扱う」ということが伝わったのではないでしょうか。

─一方、ヒヤリハットを防止するために様々な工夫をしていますが、その点はまだ浸透していないようです。

松森 当初は既存の後発品を扱っていたため、製剤設計に関与できませんでした。そこで、パッケージやラベルに記載されている製品名や含量の表示を工夫するなど、医療安全に配慮した様々な工夫を行ってきました。例えば、ユニバーサルデザインの発想に基づき、可読性を高めることを目的に開発された書体「つたわるフォント」を医薬品のパッケージやラベルに採用したのはファイザーが初めてです。ただ、品数が少なかったため大きなインパクトを与えることはできませんでした。しかし、マイラン製薬との業務提携により、2014年からファイザーが情報提供活動を行う後発品は300製品以上になり、その多くがファイザーブランドの製品ですから、今後は、こうした医療安全を考慮した様々な工夫が生きてくると思います。

─その意味では、2014年からが本格的な勝負ですね。

松森 ファイザーが後発品マーケットに参入するという話題だけでなく、確かな存在感をマーケットに示す時がきたと考えています。既存の後発品メーカーさんの中には、ファイザーのエスタブリッシュ医薬品事業を脅威と捉える向きもありますが、決してそのようなことはありません。

 近年、政府は後発品の使用促進策を強化していますが、いまだに多くの処方医は後発品に対して漠然としたネガティブなイメージを持っていて、できれば使いたくないというのが本音なのです。後発品に対するこのようなネガティブイメージを払拭するのは、処方医と面会機会の多い私たちの役割だと考えています。実際、長期収載品の情報提供を行う際に後発品の話をすると、「何となく信用できない」「メーカーの顔が見えない」という声を聞きます。そこで、ファイザーが責任を持って情報を届けますと伝えると、それなら一度使ってみようかと言われることが多いのです。

 このように、後発品に対する処方医の偏見を取り除き、後発品のイメージを変えるには、ファイザーのエスタブリッシュ医薬品のようなビジネスモデルがとても有効なのです。後発品に対する偏見がなくなれば、マーケットは拡大し、後発品専業メーカーと新規参入メーカーの健全な競争でマーケットはさらに活性化し、より低価格でより良い製品が患者さんに届けられると期待できます。

 また、良い製品を安定供給するにはコストがかかりますから、政府のインセンティブ型促進策に頼っているだけでなく、長期収載品と後発品の適切な薬価についてもきちんと主張していかないと、健全なマーケットは育っていかないと考えています。

─最後に、薬剤師へのメッセージをお願いします。

松森 私たちは、薬剤師の先生方のご意見・ご提案を最も尊重しています。薬剤師の先生方は薬を公平に評価できる専門家であるとともに、薬を直接手渡しされるので、患者さんの薬に対する不満や要望などを最もよく知っておられます。そのため、薬剤師の先生方が正しいと思う方向性が、エスタブリッシュ医薬品の今後の方向性だと考えているのです。

 超高齢社会では在宅医療も進み、これまで経験しなかった様々な課題が医療現場で生じます。その意味でも、患者さんの最も身近にいる薬剤師の先生方のご意見・ご提案は貴重であり、その声にできるだけ応えていきたいと考えています。

写真:秋元 忍

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ