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薬剤師10大トピックス
トピックス2:薬学教育が6年制に
日経DI2013年11月号

2013/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年11月号 No.193

 臨床に強い薬剤師を育成したい─。その願いは、2006年の6年制への移行によってかなえられたが、大学薬学部・薬科大学の学生の質の低下が心配されている。延びた2年分の時間と学費の負担増が受験生の薬学部離れを引き起こし、新設校の増加も相まって競争率の低下から偏差値が下げ止まらない状態が続いている。


 医薬分業と同じく、薬剤師が希求してきたのが「薬学教育への6年制導入」だった。古くから6年制である医学部や歯学部と医療従事者を育成する教育機関としての足並みをそろえるべく、日本薬剤師会(日薬)などの職能団体が実地研修の導入を視野に入れた教育年限の延長を望んでいた。本誌2000年1月号「2010年の薬局・薬剤師」によると、1993年ごろから当時の厚生省が6年制の検討を始め、00年度にも導入といわれていた。しかし、大学の設備不足や6年制教育の核となる学生実習の受け入れ態勢が整備されていないなどとして文部省(当時)と大学側が強硬に反対し、実現への期待は一度突き返されることになった。

 99年からは厚生省、文部省、日薬などで構成する「薬剤師養成問題懇談会(六者懇)」で、6年制教育の実現に向けた具体的な検討が始まった。

薬局も教育の担い手に

 中でも本誌が注目してきたのは、5年次の学生に薬局と病院で計5カ月実施する長期実務実習だ。臨床に強い薬剤師を育てる6年制教育の一部を、従来の薬学教育を受けてきた薬剤師が担うことになった。多くの都道府県薬剤師会は学生を受け入れる薬局の整備に追われた。また、学生を指導する薬剤師の養成も急務とされた。

 6年制に移行する直前の06年2月号「薬学6年制カオスからの出発」では、10年4月から始まる長期実務実習に向けた体制の整備が不十分で、現場が困惑している様子を伝えている。薬局での実習内容を示した「実務実習モデル・コアカリキュラム」で薬局に求められたレベルが高く、当時は薬局による実習の質の差も心配された。

 日薬は指導薬剤師の質を担保すべく、05年に認定実務実習指導薬剤師制度を発足させた(09年から日本薬剤師研修センターの独自事業に)。修了者は08年度中に厚生労働省が目標としていた7000人を上回った。また、07年3月には受け入れ薬局の満たすべき要件を具体的に示した(本誌07年4月号「薬局実務実習受け入れ薬局の要件が明らかに」)。08年6月には、実習にかかる経費に関して、大学が薬学生1人当たり(2.5カ月)に付き、標準で27万円負担することも決まった。このように薬局での実務実習の受け入れ態勢が一歩ずつ整えられていった。

2006年2月号

臨床力の強化のため、教育カリキュラムに実務実習が加わった。大勢の薬学生を全国規模で薬局が受け入れることは初めてで、現場はその対応に追われた。

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薬学部離れが深刻化

 6年制への移行が決定し、「臨床に強い薬剤師」の育成に道が開けたのだが、それを手放しで喜ぶことはできなかった。期を同じくして、03年ごろから大学薬学部・薬科大学の“乱立”が始まった。本誌03年10月号「迫り来る“薬剤師過剰”時代」によると、同年4月、20年ぶりに薬学部が新設された。当時、政府の規制緩和方針により学校教育法の一部が改正され、大学や学部の設置認可が受けやすくなっていた。以降、複数校の新設が毎年続き、02年には46校だった大学薬学部・薬科大学は現在74校にまで著増した。

 新設ラッシュが始まった当時、薬学部は「4年間で手に職を付けられる(国家資格を得られる)」という点で、大学側が学生を容易に確保でき、学校の特色を出しやすいなどのメリットが大きかったようだ(本誌03年3月号「全国各地で薬学部新設の動き」)。

2003年10月号

03年から大学薬学部や薬科大学の新設が相次いだことを受け、「迫り来る“薬剤師過剰”時代」では、当時の開設計画を図示。学生を集めやすい“ドル箱”として人気を博していたが、2年間の年限延長が裏目に出てしまい、設置を断念する大学も現れた。

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 だが、06年度に6年制教育が導入されると、「臨床能力を習得できる」という魅力よりも、延びた2年分の時間と学費の負担が大きくなり、大学薬学部・薬科大学を志願する受験生は減っていった。入学試験の偏差値は低下して、入るのは簡単になったものの、受験生の薬学部離れは止まらず、07年には薬系私立大学の5校に1校が定員割れを起こした。“誰でも入れる”環境下で、薬学生の基礎学力の低下が心配される事態にまで陥った(本誌11年1月号「これでいいのか6年制薬学部」)。

 学生の質の担保に向けた策の1つが共用試験だ。実務実習に出る前の4年次にカリキュラムの達成度を見るコンピューター試験(CBT)と客観的臨床能力試験(OSCE)からなる試験を課している。一方、国家試験の内容も見直され、実地に即した設問が組み入れられた。初の6年制卒業生が受験した12年の国家試験(第97回)では合格率が88.3%、翌年の国家試験(第98回)も79.1%と、高い水準を保つことができている。

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