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いまさら聞けない栄養の話
運動を始めるならお勧めは階段昇降
日経DI2013年11月号

2013/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年11月号 No.193

太田 篤胤 Atsutane Ohta
城西国際大学薬学部教授
東京農工大学卒業。テルモ、明治製菓を経て、2004年から現職。「オリゴ糖のミネラル吸収促進作用」の研究で、トクホを商品化した経歴を持つ。趣味はフルマラソン。

 前号は、運動の強さを表すMETsという値を使った、運動によるエネルギー消費量の計算方法を紹介した。そして、エネルギー消費を増やすためには、日常生活の中でこまめに体を動かすことが重要とお伝えした。

 では、これに加えて、もっと積極的な運動もしてみたいと思った場合には、何から始めればよいだろうか。

 日常生活の中で行いやすい運動として最もお勧めなのが、階段昇降だ。

 厚生労働省が、「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」をスローガンに階段利用キャンペーンを推進しているのをご存じだろうか。「目の前の健康づくり・階段利用」というポスターはなかなかの秀作だ。

 階段を1階分上るのに要する時間は、ゆっくりでも20秒程度。4階まで上がったとしても1~2分しかかからない。運動は一定時間以上続けて行わないと効果がないと考えている人も少なくないが、このような短時間の運動でも1日に何回も繰り返しているうちに、効果は確実に表れてくる。

 実際に、米国の研究グループが、1~2分の運動でもその合計が1日30分くらいになれば、ジムに通って運動するのと同等の効果が得られることを報告している(参考文献1)。

 階段昇降は、エレベーターの待ち時間でできる上、お財布にも優しいといった点でもお勧めだ。意気込んでジム通いを始めるよりも、まずは階段利用を徹底してみてはいかがだろうか。まさに「ダイエットは小さなことの積み重ね」なのである。

早く走っても消費量は同じ
 一方、ジョギングやウオーキングは、エネルギー消費量が計算しやすいという点でお勧めの運動だ。

 実はジョギングやウオーキングの場合、エネルギー消費量は、下式のように簡単に計算できる。

エネルギー消費量(kcal)=
 移動距離(km)×体重(kg)

 この式が成り立つのは、METsがほぼスピード(km/時)と等しいからだ。例えば、8.0km/時でランニングした場合のMETsは8.3である。少々誤差はあるが目安としては十分に使える。

 この式によると、エネルギー消費量は、単純に移動距離と体重に応じて決まる。つまり、どんなに早く走ろうとも、移動距離が同じであれば、消費エネルギーはほぼ同じなのだ。

 100mを全速力で10本走ったらかなり疲れるし、運動したという達成感があるだろう。一方で、1kmを8分くらいかけて軽くジョギングしてもあまり運動した気にはならないだろう。だが実際には、両者の消費エネルギーに大差はないのである。

 このことを認識していないと、短時間で猛ダッシュして、「今日は頑張ったから自分にご褒美!」などと食べ過ぎてしまう。そして「頑張って走っているのに体重が減らない」と思い込み、モチベーションが低下するという悪循環に陥ってしまうので、注意が必要だ。

参考文献
1)American Journal of Health Promotion 2013;27:143-51.

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