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DIクイズ5(A)
DIクイズ5:(A)心房細動に抗不整脈薬が処方されない理由
日経DI2013年11月号

2013/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年11月号 No.193

出題と解答 : 今泉真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)

A1

(1)プラザキサ(一般名ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩)、
(3)イグザレルト(リバーロキサバン)
(5)ワーファリン(ワルファリンカリウム)

 心房細動は、心房で不規則な電気興奮が起こり、心房が細かく震えて大きく収縮できなくなる疾患である。発作の持続期間から、(1)発症後7日以内に洞調律に戻る「発作性心房細動」、(2)発症後7日を超えて心房細動が持続する「持続性心房細動」、(3)電気的あるいは薬理学的に除細動が不能の「永続性心房細動」─の3つに分類される。Kさんが診断された持続性心房細動では、薬物療法が治療の中心となる。

 従来、心房細動の薬物療法では、抗不整脈薬による洞調律の維持が重要視されてきた。洞調律に維持することで自覚症状が改善し、運動耐容能が増し、心原性脳梗塞を予防できると考えられてきたからである。

 しかし2000年以降に発表された国内外の大規模臨床試験で、洞調律維持療法(リズムコントロール)によって洞調律を維持していても抗凝固療法は必要で、抗不整脈薬には重篤な副作用が発生し得る一方、心拍数を低下させる心拍数調節療法(レートコントロール)でも、生活の質(QOL)の改善が見られ、比較的安全な治療法であることが分かった。

 さらに、持続性心房細動では、高い心拍数が続くと心不全に至ることが分かり、現在では心拍数調節療法が治療の柱となっている。心房細動による症状の多くは高い心拍数に起因し、症状を抑える意味でも心拍数調節療法は効果的である。具体的には、β遮断薬など心拍数を下げる薬を投与して、心拍数を安静時は60~80/分、中等度運動時は90~115/分に維持するようにする。Kさんに今回処方されたβ遮断薬のカルベジロール(商品名アーチスト他)は、心拍数低下作用に加えて心保護作用もあるといわれており、心房細動患者によく使われる。

 持続性心房細動におけるもう一つの治療の柱が、抗凝固療法である。心房細動では、心房で血液がよどんで血栓ができ、心原性脳梗塞を起こすリスクが高い。この予防に抗血栓薬を使用する。

 従来は、抗血栓薬としてアスピリンが用いられるケースも多かった。しかし、心房細動でできる血栓は血液凝固因子の活性化によるもので、血小板の働きを抑えるアスピリンでは、心原性脳梗塞の発症を抑える効果が不十分とされる。実際、国内で行われたJAST試験では、心房細動患者をアスピリン投与群と非投与群に分けて比較したところ、アスピリンは心原性脳梗塞の予防に有効でなかったばかりか副作用である出血の頻度を高めた。

 現在では、心原性脳梗塞の予防には、アスピリンはあまり使用されない。抗血小板薬のクロピドグレル硫酸塩(プラビックス)も同様である。

 心原性脳梗塞の予防には、ワルファリンカリウム(ワーファリン他)やダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)といった凝固因子によるフィブリン形成を抑える薬を用いる。なお、エドキサバントシル酸塩水和物(リクシアナ)に心原性脳梗塞予防の適応はまだない。

こんな服薬指導を

イラスト:山田 歩

 持続性心房細動との診断だったのですね。Kさんのおっしゃる通り、以前は不整脈の薬で心房細動を起こさないようにする治療が行われていました。ただ最近、心房細動が続いている患者さんでは、不整脈の薬を使うよりも心拍数を下げる薬を使う方が、心臓の負担を減らして症状を抑えられることが分かってきました。それで、Kさんにはアーチストという心拍数を下げるお薬が出ています。

 また、アスピリンも以前は心房細動の患者さんによく処方されていました。心臓にできた血栓による脳梗塞を予防するためですが、最近、アスピリンよりもKさんに出されているワーファリンの方が予防効果が高いことが分かってきています。医療の進歩によって、効果が高いと分かったお薬がKさんに出されていますので、安心してお使いください。

参考文献
1)日本循環器学会他「心房細動治療(薬物)ガイドライン(2008年改訂版)」
2)Stroke. 2006;37:447-51.
3)Geriatric Medicine. 2008;46 :1019-24.

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