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DIクイズ3(A)
DIクイズ3:(A)抗うつ薬の量が増えたことを心配する会社員
日経DI2013年11月号

2013/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年11月号 No.193

出題と解答 : 今泉 真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)

A1

パキシルCR錠(一般名パロキセチン水和物塩酸塩)は、薬が徐放化されており、有効成分の血中での急激な上昇が抑えられることで、副作用の軽減を図れるため。

A2

(1)パキシルCR錠は、パキシル錠と比較して、パロキセチンが肝臓での初回通過効果の影響を大きく受けるため。

 うつ病の薬物治療は、長期にわたることも多く、服薬コンプライアンスを維持するためにも、副作用の軽減は重要である。

 選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、副作用として悪心・嘔吐などの消化器症状が問題になることが多い。これはSSRIがセロトニンの再取り込みを阻害して、消化管粘膜近傍細胞のセロトニン濃度を増大させることにより、セロトニン受容体(5HT3)を介して嘔吐中枢が刺激されるためと考えられている。

 今回、Uさんに処方されたパキシルCR錠(一般名パロキセチン水和物塩酸塩)は、従来のパキシル錠の徐放製剤である。CRとは、controlled releaseの略称で、薬物が溶ける体内部位や溶け方をコントロールする技術を導入した製剤を指す。

 CR技術により血中濃度のピークを下げて、反復投与時の血中濃度の変化を抑えるとともに、有効濃度が長時間維持される。このため、治療効果の向上および副作用の軽減などが期待できる。

 パキシル錠が白い錠剤であるのに対し、パキシルCR錠は、上下で色の異なる二層構造となっている。上層の浸食性バリアー層は、薬物層の表面積を減らすことで、パロキセチンの溶出を制御する役割を果たす。一方、下層の親水性マトリックス薬物層は、有効成分を含む徐放層で、表層からパロキセチンが緩やかに溶出する。

 さらに、パキシルCR錠は、全体が腸溶性フィルムでコーティングされており、胃で溶解せず、腸で溶けるようになっている。

 こうして、パキシルCR錠は胃を通過後緩やかに溶出し、速放錠と比較して5HT3受容体への急激な刺激が減少することで、悪心・嘔吐の副作用が軽減すると考えられている。

 DSM-IV(米国精神医学会による精神障害に関するガイドライン)で大うつ病性障害と診断された患者640人を対象に行ったプラセボ対照二重盲検比較試験では、治療1週間目における悪心発現率は、パキシル錠(n=217)が23%、パキシルCR錠(n=212)が14%と、CR錠の方が悪心の副作用は少ないというデータが得られている。

 今回新たにUさんに処方されたパキシルCR錠の用量は12.5mgであり、Uさんはパキシル錠10mgよりも薬の量が増えたため、症状が悪化したのではないかと不安を感じている。こうした用量の違いについては、パキシルCR錠とパキシル錠の代謝の違いが関係している。

 パキシルCR錠は、腸管内で薬物を緩徐に放出するために、パキシル錠よりも肝臓での初回通過効果の影響を大きく受ける。すなわち、肝代謝によって初期に消失する薬剤の割合が多くなる。そのため、パキシル錠に比較してCR錠の成分量が多く設定されている。

 パキシルCR錠は12.5mg錠、25mg錠が発売されており、それぞれパキシル錠、10mg、20mgと効果が同等とされる。なお、パキシル錠5mgに対応するCR錠は発売されていない。

 従って、Uさんの主治医は、Uさんの病状が悪くなったために薬の量を増やしたのではなく、前回と同等の効果を得るためにパキシルCR錠12.5mgを処方したと考えられる。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 お薬が変更になったことを心配されているのですね。Uさんは今回から「パキシルCR錠」を12.5mg服用することになりました。有効成分は同じですが、お薬が変わっています。

 今回処方されたCR錠は、お薬が胃では溶けず、腸に入ってから徐々に溶け出すように作られています。そのためお薬によるおなかへの急な刺激が抑えられて、吐き気などの副作用が起きにくいといわれています。先生は、Uさんの吐き気を軽くするために、この薬に変更されたのだと思います。

 お薬の量は、一見増えているようですが、これはお薬の溶け方が変わって分解されやすくなったので、従来と同じ効果が得られるように用量が調整されているためです。Uさんのご病気が悪くなったのではないと思いますので、ご安心ください。

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