DI Onlineのロゴ画像

Interview
後発品のシェアは2025年に約90%を目指すといい
日経DI2013年11月号

2013/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年11月号 No.193

 日本ジェネリック医薬品学会は、後発医薬品使用促進に関する政策提言「ジェネリック医薬品普及のための提案2013」を政府に提出すべく検討しているところだ。同学会代表理事で国際医療福祉大学大学院教授の武藤正樹氏に、この政策提言(案)についてポイントを聞いた。(10月8日収録。聞き手は本誌編集長、橋本宗明)

1949年生まれ。74年新潟大学医学部卒業。国立横浜病院、国立医療・病院管理研究所医療政策研究部長、国立病院機構長野病院副院長、国立長野病院副院長、国際医療福祉大学三田病院副院長、医療福祉経営審査機構CEO、医療福祉総合研究所社長などを歴任。2013年4月から現職。

─日本ジェネリック医薬品学会の政策提言(案)の1番目には「2025年のジェネリック医薬品の使用目標の検討」とあります。

武藤 政策提言はまだ最終決定していませんが、現在、10個の提案を検討しているところです(表1)。

表1 「ジェネリック医薬品普及のための提案2013」(案)

画像のタップで拡大表示

国際医療福祉大学大学院の武藤正樹氏の資料より抜粋、一部改変

 その1番目は、25年の目標数値を設定することです。13年4月に厚生労働省が発表した「後発医薬品のさらなる使用促進のためのロードマップ」の新目標は17年度末の数量シェア60%になっていますが、一方で国の社会保障制度の議論は25年の将来像を見据えています。だから後発品の施策でも25年の中長期的目標を掲げて考えていくことが必要だと思います。

─2番目と3番目は、新ロードマップに掲げる60%の目標を早期達成するための施策を挙げています。

武藤 提案の2番目には、医療費適正化計画に示された後発品使用促進策の完全実施など、目標の早期達成のために実施する必要のある施策を挙げました。例えば、中央社会保険医療協議会(中医協)に後発医薬品使用促進専門部会を設置することを求めています。現在、DPC評価分科会をはじめ、中医協の色々なところで行われている後発品に関する議論を、集中討議する場所が必要ではないかと考えたからです。

 また、目標達成のためにはモニタリングをきっちりやって、適宜政策を見直していく必要があると思います。これを3番目の提案としました。

─4番目では次期診療報酬、調剤報酬改定における後発品の使用促進策を幾つか具体的に挙げています。

武藤 まず「後発医薬品調剤体制加算の一本化」を挙げました。現在は後発品の数量シェア22%、30%、35%と段階的に加算を設定していますが、これだと最初の階段に達したら止まってしまう。だからハードルは最初から高くして、基準はロードマップの新目標の60%にすべきです(編集部注:新目標は、「後発品のある先発品の数量」と「後発品の数量」を分母に算出。従来通り「医薬品の全数量」が分母だと約34%に相当)。これは次期改定で、必ずやる必要がある。

 また、「医師の後発品処方、一般名処方のさらなる評価」というものも挙げました。具体的には、医師の一般名処方に対する加算の2点を、もうちょっと増やしてもいいと考えています。

 フランスには、効能別に後発品使用率の目標を設定し、達成したら診療所の医師、薬局の薬剤師の双方に報奨金を支払うジェネリックP4P(Pay for Performance)という制度があります。こういう制度の導入も一案です。

 「変更不可処方箋の変更不可理由の明記」も挙げました。医師が「変更不可」としていても、患者の希望があれば、もちろん疑義照会してからでしょうけれど、薬剤師の判断で変更してもよいのではないでしょうか。

 さらに、療養担当規則では医師に対しても薬剤師に対しても後発品の使用促進に関する記載があって、これにはかなりの強制力があるはずですが、みんなお題目のような感じで受け止めているので、「療養担当規則のさらなる強化」も盛り込みました。

 調剤報酬改定に関しては、「より安価な後発品への変更の評価」も求めています。より安価なローコストジェネリックの使用に関しても一定の基準を設け、それを超えたら薬局にインセンティブを与える。ローコストジェネリックP4Pというのですが、これもドイツ、フランスなど諸外国で実施されているので、導入してはどうかと提案しています。

─後発品の中でも、より価格が安い製品の使用を促すわけですね。

武藤 そうです。薬局は安いものを扱うと、売上高も下がるしマージンも下がるので、原則、高いものを使いたい。この結果、患者は高いものを買わされている。だから安い薬を普及させるには、仕組みが必要なのです。

─日本では海外に比べて後発品の価格は高くなりがちです。

武藤 日本では後発品も薬価が決まっているので、薬価が高い製品を扱った方が薬価差益が大きくなる。でも、グローバルに見れば、世界中に販路を持って、薄利多売するのが後発品事業です。米国では先発品の96%引きで売る代わりに、全世界に売って商売を成り立たせたりしているわけです。

 だから提案の5番目に盛り込んだのですが、参照価格制度の導入を、もう一度考えなければならない。全面導入は難しいので、生活保護受給者など公費負担が大きいところや、高価なバイオ医薬品でバイオシミラーを標準価格とするような方法を提案しています。

 ただ、英国、フランス、ドイツと日本の後発品使用促進策を比較すると分かるのですが、日本でも既にある程度の施策は実施済みです。やっていないのは参照価格制度とジェネリックP4P、自己負担の軽減ぐらい。問題は、これらの施策を小出しにしてきたことですね。

 もっとも、米国でも1980年代は日本と同じ状況で、85年ごろから本格的に始まり、25年たって現状の90%となりました。日本は本格的にスタートしたのが2000年だから、25年に90%ぐらいを目指せば、ちょうどいいじゃないですか。

─薬局薬剤師の中には後発品の使用に積極的ではない人もいます。

武藤 医師も薬剤師もそうですが、昔のイメージで捉えている人が多いからでしょう。でも後発品企業の技術水準はすごく進歩しています。まずはそのことを知ってもらいたい。

 一方、今後の薬局経営を考えれば、後発品の使用促進にインセンティブがつくのは間違いないでしょう。もちろん薬局経営だけでなく、患者の自己負担額のことを考えても、後発品の使用促進は待ったなしだと思います。

インタビューを終えて

 後発品推進の論客として知られる武藤氏ですが、雰囲気はいたって気さくで朗らか。ただし言葉は鋭く、関係者の意識や取り組みの遅れを、歯切れよく指摘します。国内の中堅製薬企業への影響に話が及ぶと、「実態は既に後発品企業なのにまだ新薬開発という夢物語を追っている」とばっさり。「2025年になったら後発品やバイオシミラーが最先端産業になっているのに、その認識がないね」と語る武藤氏の視野は広く、医療だけでなく社会経済の動向までも見据えています。(橋本)

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ