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特集:
待ち時間の“質”が患者の満足度を左右
日経DI2013年11月号

2013/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年11月号 No.193

 「いつになったらお薬ができるの?」「前回と同じ薬なのに、なぜこんなに待たされるんだ」─こんな苦情を患者から浴びせられた経験はないだろうか。

 「病院や診療所に比べ、薬局は、待ち時間が薬局全体に対する患者満足度に直結しやすい」。こう指摘するのは、医療機関の待ち時間対策について述べた書籍『待ち時間革命』(日本評論社、2010年)の著者で、医療マーケティングを行うスナッジ・ラボ(東京都中野区)代表取締役の前田泉氏。その理由について同氏は、「多くの患者が立地を基準に薬局を選んでいるのが現状。患者のニーズは、薬局が提供する医療サービスの質よりも、むしろ『利便性=時間が掛からない』という点にある」と分析する。

 実際、慶應義塾大学薬学部社会薬学講座助手の川合由起氏らが2010年に、神奈川県藤沢市の11薬局を訪れた患者313人を対象に「薬局に期待するもの」を尋ねたところ、「薬剤師による薬の説明や対応」「病院や家からの距離」を抜いて、「待ち時間」がトップだった。川合氏は、「消費者は目に見えるサービスを評価する傾向にあるが、薬局が提供するサービスのうち、薬学の専門家としての医療サービスは見えにくい。その結果、待ち時間という、目に見えるサービスがおのずと重視されてしまうのではないか」と指摘する。

“待たされ時間”の短縮が鍵
 そもそも、人にとって“待つ”という行為は、その先に何らかのメリットがあってはじめてポジティブに捉えられるもの。意思に反して無為に時間を過ごすことになった途端、その時間は“待たされている”というネガティブな感情しか生み出さない。その上、待たされる理由が分からなかったり、待たされる時間の長さの見通しが立たなかったりすると、不安感が募り、不満は増幅する。

 一方で、処方鑑査や薬剤調製、服薬指導といった薬剤師の業務の遂行には、一定の時間を要する。ルーチンワークをいくら効率化しても、疑義照会や錠剤の粉砕、一包化といった突発的な業務が舞い込むことも多々ある。処方内容によって優先的に短時間で調剤するサービスを打ち出す薬局もあるが(別掲記事)、全ての薬局で実行できるわけではない。

 それゆえ、薬局の待ち時間対策は、待たされることへの患者のストレス、いわば“待たされ時間”を、いかに減らすかが鍵となる。「患者が興味を持って何かに取り組めば、その間は“待たされ時間”ではなくなる。そのためには、患者のニーズを把握し、それに応じたサービスを提供することが重要だ」と、医療機関や薬局の経営コンサルティングを行うMMP(愛知県蒲郡市)代表取締役の鈴木竹仁氏はアドバイスする。

計数調剤に特化し「4品目まで15分以内」顧客離れに歯止め

 越谷市立病院(埼玉県)の近隣にあるわかば薬局越谷。同薬局を運営する薬樹(本社:神奈川県大和市)は2011年11月、すぐ隣にふたば薬局越谷を開局した(写真手前)。ふたば薬局の売りは、スピード調剤。PTPシートの錠剤、貼付薬、点眼薬といった計数調剤のみで済む薬剤で、かつ4品目以内であれば、15分以内に渡すというサービスを全面的に打ち出している。

 きっかけは、長期処方の拡大や近隣薬局との競争激化により、わかば薬局の処方箋枚数が減少に転じたこと。薬樹事業統括本部チェーン・オペレーション本部本部長の小林英長氏は、約30~60分に上っていた待ち時間の長さが顧客離れの一因と考え、計数調剤のみを行う「エクスプレスライン」を考案した。

 さらに、エクスプレスラインと、一包化や計量混合といった時間が掛かる調剤を一つの店舗に共存させるのは、スペースや薬剤師の導線の複雑化などの観点から難しいと判断。店舗を分け、2号店のふたば薬局をエクスプレスラインに特化させることにしたわけだ。一方のわかば薬局では、待ち時間を事前に伝えたり、薬の受け取り方法を選んでもらったりするなどの改善策を講じた。

 2号店開局後、2店舗合計の処方箋枚数はV字回復し、患者の平均滞留時間も短縮したという。

患者のニーズを把握せよ
 では、患者の待たされ時間を減らすためには、具体的にどうすべきか。待たされる側の患者の視点で考えてみるとそのヒントがおのずと見えてくる(表1)。

 まず取り組みたいのは、待たせる理由と時間の見通しを伝えること。「予想待ち時間が分かれば、患者は待つ覚悟ができる」と前田氏は言う。

 次に、患者が待ち時間を過ごす場所である待合のアメニティーを見直したい。その際、無料ドリンクや雑誌を置くなど、待合で快適に過ごしてもらうためのサービスを提供することはもちろんだが、薬局ならではのサービスも考えてみよう。待ち時間を「患者が薬局に滞在する時間」と捉えれば、その「時間」と「空間」を有効活用しない手はない。一般用医薬品(OTC薬)や健康食品の相談に乗ったり、血圧測定や栄養相談などを行ったりすれば、治療に対する患者のモチベーションアップにつながるだけでなく、地域における健康ステーションとしての薬局の存在感も増すはずだ。

 もっとも、処方箋を持参して来局する患者は、一刻も早く自宅に帰って休みたいと思っているもの。処方箋受け付けから薬剤交付までのプロセスを見直し、効率化を図る余地がないかどうか、いま一度確認しよう。総合メディカルDtoD薬局本部教育研修部の平島八恵子氏は、「絶えず『患者を待たせている』という緊張感を持って、業務に取り組むのが基本」と説く。

 薬局によって、訪れる患者のニーズや待ち時間を生み出す要因は様々。次ページから、薬局が抱える待ち時間の問題点を把握し、待ち時間の改善策を実践しているケースを紹介しよう。

表1 待ち時間の心理と、患者の不満を減らすための5つのポイント

(取材を基に編集部まとめ)

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