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CaseStudy
いながき薬局立川店(東京都立川市)
日経DI2013年11月号

2013/11/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年11月号 No.193

写真:山下 裕之

いながき薬局立川店では、薬剤師と事務スタッフが連携して、薬局でのイナビル吸入に取り組んでいる。左から2番目が稲垣美知代氏。

 東京都立川市の住宅街にある、いながき薬局立川店。地域で有名な小児科診療所の門前に位置しており、保護者と患児が次々に来店する。

 同薬局では、抗インフルエンザ薬のラニナニビルオクタン酸エステル水和物(商品名イナビル)が処方された患児に対して吸入指導を行い、その場で服用させている。このサービスは、イナビルが発売された3年前に処方医と相談しながら始め、毎シーズン100人ほどが薬局で吸入を行っている。

 イナビルを吸入させている薬局は少なくないが、同薬局の特徴は、第2待合室を利用する、事務スタッフと連携するなどの工夫でイナビル吸入の業務フローをスムーズにしている点だ。

 いながき薬局取締役の稲垣美知代氏は、「子どもにとって『吸う』という行為は大人が想像する以上に難しい。またイナビルには決められた操作手順があり不安を感じる保護者も多い。薬剤師の負担は増えるが、業務フローを効率化することで、イナビルが処方された患児全員に対し、薬局での吸入を行えている」と話す。

投与の流れをポスターで説明
 とはいえ、インフルエンザ流行期の小児科の門前薬局は多忙を極める。いながき薬局では、常時3人の薬剤師が業務に携わっているが、イナビルの吸入指導のために薬剤師が患児1人当たり10~15分も付きっきりになるのは大きな負担。それをカバーするのが、(1)第2待合室の活用、(2)事務スタッフとの連携、(3)指導内容の標準化─といった工夫だ。

 第2待合室は、薬局の入り口のすぐ右にある2畳ほどの広さの部屋(図1)。一般待合室から遮断されているので、他の患者への感染リスクを減らせる上、患者が周りの目を気にせず落ち着いて吸入が行える。

図1 いながき薬局の第2待合室(隔離室)の工夫

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 壁には、イナビル投与の流れを説明したポスター「イナビル投与の流れ」を作成して貼った。患者がこれからどのような作業を行うか知ることができ、不安を感じずに済む。また第2待合室には窓があり、受付から事務スタッフが中の様子を確認できる。

 イナビルを使用する患者が来院すると、図2のような流れで対応する。事務員が患者を第2待合室へ案内し、イナビルの吸入方法を解説する動画(製薬会社が配布しているもの)を見るよう伝える。患者は、動画を見終わったら「イナビル動画見ました」と書かれた紙を窓に貼る。事務スタッフや薬剤師がそれに気づいたら、薬剤師がイナビルを持参して吸入指導を開始する。

図2 イナビルが処方された患者への対応

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 薬剤師が吸入指導する前までの流れを主に事務スタッフが行うことで、薬剤師は調剤や吸入指導など本来の業務に集中できるわけだ。

薬局内で指導内容を共有
 薬剤師によるイナビルの吸入指導は表1の手順で行う。吸入指導の内容は、月1回程度行っている勉強会などを通じて事務スタッフも含めて全員で共有し、効率化につなげている。

 まず、吸入ができるか否かの判定と練習を兼ねて、製薬会社が配布している練習用の「笛」を使い、吸う力を実感させる。これは吸入を確実に行うための重要なプロセスだ。

表1 薬局でのイナビル吸入の手順(稲垣氏による)

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 その後、実際に吸入を行う。表1の通り、患児が確実な吸入ができるように薬剤師は身振りを交え、声かけをしながら吸入させている。吸入するたびに容器を机などで軽くたたいて粉をならすといった操作は薬剤師が行う。

 どうしても吸えない患児は、処方医に連絡して薬剤を変更するが、これまで吸う行為ができなくて吸入を断念した患児が2人いた以外は、成功しているという。保護者からは「吸入練習の笛を使ってみたら、強く吸わないと音が出ず驚いた」「以前に患児の兄弟が自宅でイナビルを使用した時は、今回薬局でやったようにしっかりは吸えていなかった」という声が寄せられている。

 第2待合室などがない薬局でも、パーティションなどで分けたスペースに椅子を置くなどして、同様の取り組みを始めることは可能だろう。稲垣氏は「イナビルの薬局での吸入は、一見手間がかかるようだが、工夫さえすればさほど負担にならない。保護者や処方医に相談しながら、指導に取り組んでみては」と話している。(富田 文)

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