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DIクイズ5(A)
DIクイズ5:(A)歯の黒ずみを気にするパーキンソン病患者
日経DI2013年10月号

2013/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年10月号 No.192

出題と解答 : 今泉真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)

A1

(1)マグラックス(一般名酸化マグネシウム)とドパゾール(レボドパ)の相互作用。

 パーキンソン病は神経変性疾患の一つで、安静時振戦、筋固縮、無動、姿勢反射障害といった運動症状と、自律神経症状や精神症状などの非運動症状を呈する。中脳黒質のドパミン分泌細胞が変性して線条体でのドパミン欠乏が生じ、また相対的にアセチルコリンが過剰となることで、パーキンソン病に特徴的な種々の症状が表れる。中高年以降の発症が多く、日本神経学会の『パーキンソン病治療ガイドライン2011』によると、日本における患者数は約15万~18万人と推測されている。

 Fさんに処方されているレボドパ(商品名ドパストン、ドパゾール)は、最も古くから用いられているパーキンソン病治療薬で、多様な治療薬が開発された現在でも治療の主軸を担う薬剤である。

 パーキンソン病の初期治療は、レボドパなどのLドパ製剤か、ドパミン受容体作動薬(ドパミンアゴニスト)の単剤投与により開始する。70~75歳未満の非高齢者で精神症状や認知機能障害を合併していない場合はドパミンアゴニストを第一選択薬とし、Fさんのような高齢者や、精神症状や認知機能障害を合併している場合、運動症状を改善する必要性が高い場合は、Lドパ製剤を第一選択薬とする。

 さて、Lドパ製剤には種々の副作用が知られている。特に頻度が高いのが悪心・嘔吐や食欲不振などの消化器症状で、不随意運動や不眠などの精神神経症状、立ちくらみや動悸などの循環器症状なども生じる。これらの副作用によって服薬の継続が困難となり、薬剤の変更を余儀なくされるケースも少なくない。

 一方、薬剤の変更原因となるほどの支障はないが、患者や家族からしばしば相談される副作用の一つが、歯や歯茎、唾液、汗、尿、便の黒ずみである。これは、Lドパ製剤の化学的性質に起因する副作用で、酸化マグネシウム(マグラックス他)などの塩基性製剤との併用で発症頻度が高まると考えられている。Lドパ製剤はカテコール骨格を有しており、塩基性条件下では、キノン体を経て黒褐色色素であるメラニンへと至る酸化反応が進みやすい。その結果、水に難溶性の黒色の重合体が生成して、歯などへの沈着や唾液、汗などの着色が生じるのである。

 Fさんの主治医は、Fさんの歯の黒ずみの原因が、レボドパと酸化マグネシウムの相互作用によるメラニン生成の亢進であると推測。酸化マグネシウムを弱酸性製剤であるピコスルファートナトリウム水和物(ラキソベロン他)に変更することで、メラニン生成を抑えようとしたものと思われる。

 なお、Lドパ製剤と酸化マグネシウムなどの塩基性製剤の併用では、配合変化という観点でも注意が必要である。レボドパと酸化マグネシウムを混和溶解した実験では、混和直後からレボドパの分解が始まり、約10分でレボドパの残存率がほぼ0%となることが報告されている。

 Fさんはレボドパを毎食後、酸化マグネシウムを就寝前に服用しており、服用時点がずれているため、臨床的に問題となる力価の低下はなかったと考えられる。しかし、経管栄養の患者への投薬時などに、酸化マグネシウムや炭酸水素ナトリウム、制酸剤などの塩基性製剤とLドパ製剤を混和溶解すると、Lドパ製剤の力価の低下が起こる恐れがあるため避けるべきである。

こんな服薬指導を

イラスト:山田 歩

 ご主人の歯が黒ずんできて、ご心配でしたね。実は、お飲みになっているパーキンソン病のお薬のドパゾールが分解されると、黒い色素ができるのです。下剤のマグラックスには、ドパゾールの分解を進める作用があるので、先生はドパゾールの分解に影響しない下剤に変更されたのだと思います。

 今夜からお使いいただくラキソベロンは、水に溶かして飲むタイプの下剤です。コップ1杯の水に10滴を垂らして飲んでください。効き目は今までと同じくらいだと思いますが、もし便が出にくくなったなどでお困りでしたら、いつでもご相談ください。

参考文献
週刊薬事新報2010;2633:619-22.

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