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特集:処方箋の裏側 かぜ編
〔実践編〕みみ:重症中耳炎の併発に経口抗菌薬を翌日から
日経DI2013年10月号

2013/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年10月号 No.192

 3日前に、咳と鼻水を主訴に受診した木村優菜ちゃん(仮名、1歳5カ月)。通っている保育所でRSウイルスが流行していたため、検査を行いRSウイルスによるかぜと診断。熱は38.2℃とそれほど高くなく、食欲もあったため、去痰薬のアンブロキソール塩酸塩ドライシロップだけを処方して様子を見るよう伝えた。

 ところが、その3日後に母親が優菜ちゃんを抱いて再受診した。母親は「前回の受診から熱が続いており、食欲がなく、水分も飲まなくなった」と、ひどく心配そうに話した。

 診察すると、ぐったりしていて元気がなく、入院させるべきか迷うほどだった。

 耳鏡で鼓膜所見を診ると、中耳に貯留液があり、鼓膜に強い発赤と膨隆を認め、急性中耳炎を起こしていることが分かった。血液検査を行うと、白血球8600/μL、CRP7.5mg/dLとやや高く、炎症を起こしていた。そのため、二次性の細菌感染の可能性を考慮し、抗菌薬を投与することにした。

 ウイルス性のかぜをきっかけに、常在菌や免疫のバランスが崩れ、二次性の細菌感染を起こすことは少なくない。ウイルスが地ならしをして細菌が繁殖しやすくなるような印象だ。

 このケースでは、抗菌薬の投与方法に工夫を凝らした。

 乳幼児に苦い抗菌薬を飲ませるのは難しく、ほとんど飲めない子は少なくない。そのため私は、優菜ちゃんのように状態が非常に悪い患児に抗菌薬を確実に投与したい場合は、まずは、点滴静注で抗菌薬を投与して、翌日から自宅で経口抗菌薬を服用させる。

 優菜ちゃんには、セフェム系抗菌薬のセフトリアキソンナトリウム水和物をその場で点滴静注。アンブロキソールに加えて同じセフェム系のセフカペンピボキシルを5日分処方して、翌朝から服用するように指示した。下はそのときの処方箋である。

 点滴静注を行うほど重症の患児では、患児の状態と点滴静注の効果を確認するために、翌日必ず受診させる。抗菌薬が効けば、翌日には状態がぐっとよくなっているはずだ。翌日は、前日処方した抗菌薬を朝に服用させてから、受診するよう説明している。

 中耳炎を確実に治し、耐性菌を出さないために、抗菌薬は最低でも5日間服用してもらう。アンブロキソールは通常は分2だが、薬局でセフカペンと一包化してもらうために分3にしている。優菜ちゃんは、抗菌薬の点滴静注がよく効いて、翌日の診察時には全身状態がかなり改善していた。おかゆやスープも少し口にするようになっていたため、入院加療は必要ないと判断した。

 抗菌薬を飲み切った頃には、活気を取り戻し、鼓膜の炎症所見も改善していた。(談)

つちだ小児科[福井県坂井市]
院長
土田 晋也氏
1986 年福井大学医学部卒業。同大小児科、福井赤十字病院小児科などを経て、2003年から現職。

写真:山岸 政仁

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