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特集:処方箋の裏側 かぜ編
〔実践編〕せき:かぜの後の長引く咳はβ2刺激薬で鑑別
日経DI2013年10月号

2013/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年10月号 No.192

 「1カ月ほど前にかぜを引いてから、ずっと咳が治らない」と訴えて、主婦の広田文江さん(仮名、63歳)が受診してきた。これまでも、かぜの後に咳が残ることが多かったが、今回は特にひどく、咳のために睡眠が障害されたり、胸や腹筋が痛くなり、心配になって来院したという。

 咳が3週間以上続く病態は「遷延性咳嗽」、8週間以上続く病態は「慢性咳嗽」と呼ばれる。私は、広田さんのような遷延性・慢性咳嗽の患者に、短時間作用型の吸入β2刺激薬を頓用で1週間程度、使ってもらうことがある。咳がひどいときに吸入して、β2刺激薬が有効かを確認するためだ。

 遷延性・慢性咳嗽の原因には様々な疾患があるが、最も多いのは咳喘息だ。咳喘息は、激しい咳を伴い、気道の炎症や過敏性の亢進が見られる。喘鳴を伴う典型的な喘息に移行することもあるので、早めに診断を付けて、ロイコトリエン受容体拮抗薬や吸入ステロイドなどで治療を開始することが大切だ。

 しかし咳喘息には、気管支喘息における喘鳴のような特徴的な症状がないため、症状だけではかぜ症候群後咳嗽やアトピー咳との鑑別が難しい。そこで役に立つのが、短時間作用型の吸入β2刺激薬を用いる鑑別診断だ。これが咳に有効であれば、咳の背景に気管支狭窄がある、すなわち咳喘息であると診断できるのだ。

 広田さんには、まずは1週間、咳が止まらないときにメプチンエアー(プロカテロール塩酸塩)を2吸入するよう指導。同時に、ロイコトリエン受容体拮抗薬のシングレア(モンテルカスト)と、咳を抑える漢方薬の麦門冬湯(ばくもんどうとう)も処方した。さらに、咳が出た時間帯と強さを4段階で評価する咳スコアや、メプチンエアーの使用状況を記録する咳日誌をつけてもらった。

 鑑別だけを目的とするならば、メプチンエアーのみを処方するところだが、実際には本例のようにロイコトリエン受容体拮抗薬や、場合によっては吸入ステロイドなどを同時に処方し、治療を進めながら確定診断を行うことが多い。長引く咳は、睡眠を障害するなど患者の生活の質(QOL)の低下を招くため、早く治療を開始して症状を抑えることも重要だからだ。

 1週間後に受診した広田さんは、「寝る前や早朝に咳が出ることが多かったけれど、寝る前にメプチンエアーを2吸入することで、夜、ぐっすり眠れるようになった」と報告してくれた。β2刺激薬が有効だったことから、本格的に咳喘息の治療を始めた。(談)

新潟県立柿崎病院[新潟県上越市]
院長
藤森 勝也氏
1985年自治医科大学卒業。新潟県立加茂病院副院長などを経て2007年から現職。遷延性・慢性咳嗽や難治性喘息などの治療に力を入れる。

写真:岩船 雄一

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