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特集:処方箋の裏側 かぜ編
〔実践編〕のど:喉の激しい痛みに経口ステロイドを2日分
日経DI2013年10月号

2013/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年10月号 No.192

 「朝起きたら喉がすごく痛くて。痛過ぎて食べ物が飲み込めないんです」。今村恵美子さん(仮名、56歳)は、診察室に入るなり、切実な表情で訴えた。OTC薬のかぜ薬を服用し、うがいをして様子を見ていたが、症状が悪化してきため当院を受診したという。

 今村さんの喉を見ると、喉の奥や口蓋垂(いわゆるのどちんこ)が真っ赤になり、高度に浮腫を起こしていた。その下にある喉頭蓋が腫れている場合は、腫れた喉頭蓋が気道を塞いで呼吸困難となる恐れがあるため入院加療が必要だが、今村さんは咽頭の上部を中心に症状を認めたので外来で治療することにした。

 咽頭所見により、(1)細菌性で起こることが多い扁桃腺の腫れを認めない、(2)喉が浮腫状に腫れる咽頭炎の多くはウイルス性である、(3)細菌性でよく見られる喉の膿栓がない─などから、ウイルスが原因の強い炎症が起こっていると考えられた。

 今村さんは、炎症が非常に強いことと、飲み込む際に痛みがあるのはつらいので早く痛みを取ってあげることが重要と考えた。こうした場合に私がよく使うのが、経口ステロイドだ。

 感染症に免疫抑制作用がある経口ステロイドを出すと、症状が悪化するのではないかと心配する人がいるかもしれないが、このように強い炎症がある場合は、抗炎症作用を期待して、経口ステロイドを短期間だけ使用することがよくある。

 1日10mgをごく短い期間だけ服用させると、抗炎症効果により、2時間程度で少しずつ痛みが軽減し、6時間程度で痛みが引く。たいてい1日分、炎症がひどい場合は2日分出して、痛みが落ち着けば翌日は服用しなくていいと伝える。その後はトラネキサム酸(商品名トランサミン)だけを服用してもらう。食事ができるようになれば、あとは何とかなるという感じだ。

 経口ステロイドの使用を短期間にとどめるのは、免疫抑制作用が強く出すぎると治癒が遅れる恐れがあるからだ。多くの場合、経口ステロイドのみで痛みは半減し、トラネキサム酸によりさらに痛みが軽減されるが、これらが効いてくるまで痛みがつらい場合には、ロキソプロフェンナトリウム水和物(ロキソニン他)を1回120mg頓用してもらう。

 痛みが強くなるようなら翌日、そうでなければ2~3日後に再受診するよう伝える。たいていは翌日には痛みは取れて、2~3日後の受診時にはもっと楽になっているが、痛みが増しているようなら、細菌感染を疑い抗菌薬の投与を検討する。

 3日後の再診で、今村さんは、「プレドニンを飲んだら、次の日には喉の痛みが楽になった」とうれしそうに話した。症状は改善傾向にあることが明らかだったので、前回処方したトラネキサム酸を飲み切るよう指導して診察を終えた。(談)

ふたばクリニック[東京都新宿区]
院長
橋口 一弘氏
1982年慶應義塾大学医学部卒業。同大耳鼻咽喉科、北里研究所病院耳鼻咽喉科部長を経て、2010年から現職。

写真:山下 裕之

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