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薬剤師のための「在宅アセスメント」入門
排泄
日経DI2013年10月号

2013/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年10月号 No.192

執筆:黒澤 幸太郎(シップヘルスケアファーマシー東日本株式会社[仙台市泉区])
監修:早川 達(北海道薬科大学)
排泄異常のチームケア

 排泄異常は、表1に示すような種々の要因により引き起こされる。内的な要因には器質的・機能的な疾患など、外的な要因には薬剤の服用や食事環境の変化などがある。個々の要因の影響度を評価し、どのようなコントロールやケアが適切かを考察した上で、プライバシーに配慮しながら複数の職種で介入していくことが在宅医療・ケアの現場では特に大切になる。在宅において排泄のコントロールは重要な課題であり、チームで解決に当たることが望まれているからである。

 患者のケアに関わる各職種がそれぞれの立場からアセスメントやケアを行っているが、薬剤師も自らの専門的な視点で患者の状態をアセスメントし、ケアに関わる多くの職種と情報を共有することが欠かせない。

表1 排尿・排便異常の内的要因と外的要因

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初期アセスメントのポイント

 排泄の初期アセスメントに用いるアセスメントシートを、表2に示す。初期アセスメントでは、(1)排尿の状態、(2)排便の状況、(3)尿・便失禁の状況─の3つを把握する。排尿の状態は1日の回数または量で、排便、失禁の状況は1日または1週間の回数で判断する。

 健常者の尿量は1日に500~2000mLである。1日の排尿回数が4回以下または尿量が500mL以下の場合は乏尿、10回以上を頻尿とする。乏尿の場合は、浮腫などを併発しやすいことに注意しておく。

 さらに、残尿感、排尿痛、排尿困難の有無も確認しておくとよい。残尿感や排尿痛がある場合、まずは膀胱炎を第一に疑い、対処を考える。なぜなら、免疫機能が低下している在宅患者では細菌感染が重症化しやすく、時に死に直結するからである。残尿感や排尿痛のような訴えは、薬剤師でも比較的確認が容易である。早期治療につなげるため、訪問時に訴えを確認できた場合には、医師と相談し抗菌薬の投与の検討などを行うことが望ましい。

 排便の状況のアセスメントにおいて、週に3回以上排便がない場合、通常は便秘と判定する。ただ、排便の状況には個人差が大きく、排便回数がこれより少ないからといって異常というわけではない。定期的な排便があり、排便がない期間に腹部膨満感などによる生活の質(QOL)の低下がない場合は「問題なし」と判定しても差し支えない。定期的な緩下薬の服用によって良好な排便が保たれている場合も「問題なし」とする。緩下薬の服用の有無についても同時に確認しておく。

 加齢に伴って頻度が増す失禁は、トイレ移動時の転倒や社会的孤立などの危険性を高め、介護負担を重くする。結果的に在宅での介護が難しくなって、施設に入所しなければならなくなるケースもある。しかし尿失禁については、原因を明らかにし、適切な治療を行うことで、治癒または少なくとも大幅な改善が可能である。

 尿失禁がある場合、まずはセルフケアとして、適度な運動と水分制限を勧める。運動は筋力の維持が目的であり、負荷が大きくなり過ぎないよう気を付ける。また、高齢者は体内水分量が少ないため、水分制限はこの点を考慮しつつ注意深く行う。こうしたセルフケアでも十分な改善が認められない場合は、尿取りパッドの使用や尿道カテーテルの留置による対応を検討する。

表2 排泄に関する初期アセスメントシート

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薬剤師による支援のポイント

 排泄障害の中でも、便秘を引き起こす薬剤は多岐にわたる。服用薬の数が多くなるほど、どの薬剤が主たる原因になっているかの判断が難しくなる。また、たとえ原因薬であっても、疾患の治療に欠かせない場合は、中止や減量ではなく対症療法薬の追加による対応が必要になる。

 従って、薬剤性の便秘が疑われる場合は、服用薬に「優先順位」を付けてケア方針を考えるようにするとよい。一般には、重度の便秘を起こすリスクが高い薬剤、すなわち抗コリン作用を持つ向精神薬、抗パーキンソン病薬、抗アレルギー薬、頻尿治療薬の服用の有無をまず確認する。

 抗うつ薬には抗コリン作用を持つ薬剤が多いが、中でも三環系抗うつ薬は抗コリン作用が強いため便秘を起こすリスクが高い。精神状態への影響を考えると安易に薬剤は変更すべきではないが、便秘症状がひどく、精神状態に多大な影響を与えている場合には、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)やセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)など、抗コリン作用の弱い抗うつ薬への変更も検討する。

 抗パーキンソン病薬が便秘の原因である場合、薬剤を変更してもそれによる日常生活動作(ADL)機能の低下が便秘を引き起こすため、便秘の改善にはつながりにくいと考えられる。このようなケースでは、医師と相談の上、酸化マグネシウム(商品名マグラックス他)やセンノシド(プルゼニド他)などの緩下薬を追加する。

 気管支拡張薬では、チオトロピウム臭化物水和物の吸入薬(スピリーバ)などの吸入薬に注意が必要である。なぜなら、患者は吸入薬で副作用が起こるとは普通は考えないため、便秘があっても「歩かなくなったから」「そういえばご飯の量が減った」など、薬以外の原因を訴えてくるからである。副作用の存在がマスキングされてしまいがちなので、抗コリン作用を持つ吸入薬を使用していて便秘がある場合は、いつから吸入薬を開始し、いつごろから便秘症状が出てきているのかを確認して、因果関係の有無を判断する。

 医療用麻薬は、その作用機序から、便秘を引き起こすことが避けられない。医療用麻薬が必要となる病態においては、疼痛コントロールを優先し、排泄コントロールについては、便を軟らかくする薬剤や腸を刺激する薬剤、浣腸など、他薬の追加によって対応することが基本となる。便秘状態が長期に続いて宿便(直腸・結腸内に硬化した便が付着した状態)を生じている場合は、オリーブ油を用いる浣腸が有効である。

 このほか、在宅で便秘に注意が必要な薬剤には、鉄剤と高リン血症・高カリウム血症治療薬がある。患者や家族に便秘になる可能性をあらかじめ説明し、排便状況の聞き取りを意識的に行って、便秘症状が出てきた際は早めに酸化マグネシウムやセンノシドなどを開始するよう医師に提案する。

 便秘を引き起こす原因薬別に、ケアプランを表3にまとめた。剤形や用法を含め、いかに適切な緩下薬を選択するかが薬剤師の腕の見せどころとなる。その際のポイントの一つが「錠剤の緩下薬」を提案することである。

 粉薬や漢方エキス剤など、1回服用量の多い薬が処方されても、膨満感のため飲めない患者は少なくない。飲めないことには効果が得られないので、漢方薬や粉薬を好んで処方する医師に対しては、「効く・効かない」ではなく「飲める・飲めない」という観点で提案するとコンセンサスを得やすい。

 また、用法を頓用とすると不適切な自己調節により排泄コントロールがつかないことがあるため、定時服用として、効き具合は用量で調節するとよい。

表3 便秘を引き起こす主な薬剤とケアプラン

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セルフチェックテストの回答 A1…(2)(3)、A2…(6)、A3…(9)

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