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特集:処方箋の裏側 かぜ編
〔実践編〕高齢者:呼吸器疾患の合併例に抗菌薬を積極的に投与
日経DI2013年10月号

2013/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年10月号 No.192

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)があり、当院を月1回定期受診している田中実さん(仮名、81歳)。長年にわたる喫煙とそれに伴う炎症によりCOPDを発症し、呼吸機能がかなり低下している。慢性的な咳や痰があり、いつも痰がからんだ咳をしている。

 3年前に、呼吸困難を来して救急外来を受診したことがきっかけで、重症のCOPDであることが判明。現在は、気管支拡張薬のチオトロピウム臭化物水和物(商品名スピリーバ)に加え、抗炎症作用があるフルチカゾンプロピオン酸エステル・サルメテロールキシナホ酸塩(アドエア)の常用という強めの治療で、何とか増悪を防いでいる。

 この日もいつものように外来を受診したが、かぜを引いたという。診察すると、呼吸音が悪化しており、放置するとCOPDが増悪することが予想された。

 COPDの患者は、肺炎などの呼吸器感染症を起こしやすく、また感染によりCOPDが増悪することが多い。すると、痰の量や膿性度が増加し、喘鳴(ぜんめい)が強くなって呼吸困難を起こす。その結果、酸素吸入が必要になり、救急車で搬送されて入院という事態になることも珍しくない。田中さんの場合も、注意してフォローする必要があった。

 そこで、私は、PL配合顆粒に加え、COPDの増悪に備えて抗菌薬を投与することにした。

 私は基本的には、かぜに抗菌薬は出さないが、田中さんのように呼吸器疾患がある虚弱な高齢者や、重症喘息で経口ステロイドを常用して免疫が落ちている患者、在宅酸素療法をするほど呼吸機能が悪い患者、頻繁に肺炎を起こす高齢者などには、かぜであっても積極的に抗菌薬を使用する。

 COPDの増悪の原因となる主な細菌には、肺炎球菌とインフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスの3菌種がある。このうち、インフルエンザ菌とモラクセラは、βラクタム系薬を分解する酵素(βラクタマーゼ)を産生するため、ペニシリン系やセフェム系の抗菌薬が効きにくいことがある。そこで、田中さんには、これら3菌種をカバーし、気道への有効成分の移行性がよいレボフロキサシン水和物(クラビット)を高用量で処方した。

 1カ月後、田中さんは普段と変わらない様子で外来を受診した。かぜについて尋ねると、4~5日は咳や痰が続いたが、COPDの増悪や、肺炎は起こさず治ったとのこと。最悪の事態は避けられたと、ほっと胸をなで下ろした。

 教科書的には、かぜに抗菌薬は不要といわれるが、薬剤師の皆さんには、こうした考えでの抗菌薬の処方があることも知っておいてほしい。(談)

清野・川畑診療室[東京都港区]
院長
川畑 雅照氏
1992年鹿児島大学医学部卒業。虎の門病院呼吸器科医員、同院分院呼吸器科部長を経て、2013年から現職。

写真:山下 裕之

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