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CaseStudy
株式会社ピノキオファルマ(宇都宮市)
日経DI2013年10月号

2013/10/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年10月号 No.192

写真:菊池 斉

 「過剰な在庫を防いで、スタッフの手間が掛からず、コストも抑えた在庫管理のシステムを目指した」。こう話すのは、ピノキオファルマ(宇都宮市)代表取締役の田中直哉氏。

「費用をかけずに短時間で、誰でも発注できるシステム作りを目指した」と話すピノキオファルマの田中直哉氏。

 同氏が自作したのは、2つのシステム。過去数カ月に交付した薬剤数や現在の在庫数から発注点(在庫がその数を下回った場合に発注の目安となるライン)を自動算出して発注数を割り出す「発注システム」と、他店舗の在庫数を確認でき譲渡し合える「在庫管理システム」だ。

 いずれも導入費用を多くはかけず、マイクロソフトのデータベースソフトであるAccessなどを使って作成した。維持費もほとんどかからない。前者の発注システムは2011年11月から運用を開始し、在庫管理システムは10年前に試作し改良を重ねて、2年半ほど前に現在の形になった。

 これらのシステムはピノキオファルマの2店舗と、加盟するフランチャイズ本部が直営するピノキオ薬局の全38店舗でも導入している。

既存の発注法に欠点あり
 一般に、医薬品の発注管理は、薬局が交付した薬剤の数量から自動的に発注数を決める方法と、空き箱が出たら発注する“空き箱発注”など人手を介して行う方法とがあるが、後者では当然手間がかかる。

 一方、自動的に決めるシステムはタイミングを考えなくて済むため手間は省けるが、発注点の設定を誤ると、過剰な在庫や欠品につながる恐れがある。

 そこで田中氏は、こうした欠点がなく「各店舗がコストをかけずに、誰でも管理できる」というコンセプトで発注システムを作成した(表1)。在庫数が発注点に近づくと、交付頻度が高い薬剤は自動的に発注リストに上がり、頻度が低いものは発注の可否をスタッフが確認しながら決めるという、言うなれば“半自動”の発注システムだ。

表1 医薬品の発注システムに求められる6つのポイント(田中氏による)

発注システム使用率別に分類して発注作業にメリハリ
 発注システムの仕組みの大きな特徴は、過去数カ月分の交付日数から、交付頻度(使用率=交付日数/営業日数)別に6段階(◎、○、●、△、▲、×)に分けている点(図1)。

 各薬剤に発注点と、発注すべき数量を算出する補正値(120%など)をあらかじめ決めておく。これらから自動発注すべき商品と数量が決定される。

 具体的な操作としては、まず、レセコンから使用した数量や在庫数を取り込むと、一覧が示される(A)。

 次に発注試算を行う。「計算日付」は発注点を決める際に基にしている期間で、多くの薬局は4カ月だが、備蓄品目数が多く、長期処方も多い大学病院の門前薬局では、6カ月間にしている。

 このほか、試算に必要な情報を入力すると、発注試算表が出る(B)。この表では、発注点の補正値(120%など)を下回っている場合に黄色く表示され、発注欄にチェックが入る。補正値を設定しない時には100%を下回っている場合に黄色く表示され、月初では200%、在庫を絞りたい月末は80%などと、店舗ごとに設定できる。

 悩ましいのは△や▲印といった交付頻度のあまり高くない薬剤の場合。注意しないと、過剰在庫や欠品になる恐れがある。ただし、こうした薬剤は処方される患者が限られていることが多いので、使用履歴(患者名や処方日数など)をすぐに見られるようにしており、来局予定日から発注するかを決めている。

 ピノキオファルマのカロン薬局(宇都宮市、備蓄医薬品数580品目で処方箋枚数1000枚/月)では、発注の作業時間は5分程度。田中氏は「使用率別に分けることで、手間を掛けるところと掛けないところにメリハリを付けられる」と話す。

 こうして発注すべき薬剤と数量を決めてリストを印刷し、バーコードで読み込ませて卸に情報を送る。

図1 発注システムの流れ

「在庫取込」(1)を押すと、在庫薬剤名、数量が表示される(2)。次に発注試算の条件を入力。(3)の「計算日付」は発注点を決める際に基にする期間。「使用数計算」に期間を入力すると、その期間に使った薬剤をリストアップできる。発注を毎日行う店舗では通常、当日から当日で設定(その日の使用数を算出)。「予定数計算」は使用数計算の期間の患者が全てDo処方だったとして月末までの期間を入力。最後に「発注試算」を押す(4)。

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過去4カ月の営業日数(85日)のうち、その薬剤を交付したことがある日(回数)から、使用率(%)を計算して表示。使用率は6段階で分け、◎は90%以上、○は70%以上、●は40%以上、△は25%以上、▲は7.0%以上、それ未満は×としている。
黄色く表示されるのは、在庫率(5)があらかじめ設定した発注点の補正値(ここでは120%)を下回る場合であり、発注のリストに加えられる。○も同様。●と△、▲は、発注点の130%を下回る場合にリストに入るよう設定した。×は使用率が低いため、黄色く表示されない設定にした。使用率の低い▲や×は「詳細」を押して(6)、交付した患者名や来局予定日を確認して、最終的に発注を決める。

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在庫管理システム他店舗の在庫も一目瞭然伝票を書く手間もなし
 発注システムと合わせて活用しているのが、ピノキオファルマが加盟するフランチャイズのピノキオ薬局グループの全40店舗を結んだ在庫管理システムだ(図2)。

 このシステムは、各薬剤について店舗別の在庫数と毎月の使用数を6カ月分閲覧できるようにしているのが特徴。レセコンのメーカーが異なっていても、共通のフォーマットに取り込める。このデータが、在庫のない薬剤を他の店舗から持ってきたり、交付頻度の低い薬剤を他店に譲渡する参考となる。

 他店に薬を譲渡する場合、薬剤のバーコードを読み取らせると、在庫している薬局が一覧で表示される(C)。

 次に各店舗の使用実績と在庫数を確認。その中で、自店の近隣であったり、使用量が多いといった条件から譲渡する店舗を選び、譲渡したい数と有効期限、ロット番号を入力するだけでよい。

 なお、譲渡の内容が自動的に納品書や受領証、医薬品譲渡記録証といった伝票に印字されるのも特徴だ(E)。「伝票を書く手間が省けるように、劇物などの規制区分も自動的に記載するよう工夫した」と田中氏は話す。

 ピノキオファルマとピノキオ薬局では、毎年3月と9月に棚卸しを行っている。棚卸しの月は、社内のルールで店舗間の譲渡は行わないようにしているため、それまでに各店舗は使用率が低いものをピックアップして、譲渡するか、自店でストックしておくかを検討する。

図2 他店舗に医薬品を譲渡する在庫管理システムの流れ

自店で交付実績が低い薬剤のJANコードを入力すると(1)、在庫している店舗別に半年間の使用量や在庫数が表示される(2)。自店から近隣で使用量の多い店舗の行に「移動数」「ロット番号」「有効期限」「JANコード」を入力する(3)。

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Cの作業を繰り返すと、一覧表が作成される。あらかじめ登録しておいた薬剤の区分も表示される(4)。

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納品・請求書と控え、受領書、医薬品譲渡記録証が自動的に作成される。手書きで追記する必要がない。

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デッドストックはほぼゼロに
 こうした2つのシステムの効果は徐々に表れている。

 欠品率は全店平均で、発注システムの導入前の0.70%から0.47%に減少した。

 カロン薬局は開局して8年になるが、発注システムの導入前後で欠品率は0.69%から0.49%に減少し、ここ3カ月間の平均欠品率は0.034%と低く抑えられている。その一方で1カ月の在庫回転率は170%前後を維持。累積廃棄医薬品金額は1万円以内で、期限切れ廃棄はほぼゼロだ。

 田中氏が開発したシステムを利用する立場にある、ピノキオ薬局学術教育マネージャーの近藤澄子氏は「以前は、ある薬剤がデッドストックになっている店舗がある一方、別の店舗がその薬剤の発注を繰り返すことがあり、うまく融通し合えないものかと思っていた。このシステムのおかげでこうした問題は起こらなくなった」と話す。

「備蓄医薬品数が増える中で、ピノキオ薬局のグループ全体でデッドストックは格段に減らせている」と話すピノキオ薬局の近藤澄子氏。

 作業も煩雑でないため、事務スタッフが発注を任されている店舗もある。

 田中氏は、「システムを開発した一番の狙いは、現場の薬剤師が発注に追われないで、調剤や服薬指導、薬歴記載など本来の業務に専念できるようになること。今後もこうした現場に役立つシステムを作成していきたい」と話している。(河野紀子)

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