DI Onlineのロゴ画像

DIクイズ3(A)
DIクイズ3:(A)子どもへの抗菌薬による副作用の機序は
日経DI2013年9月号

2013/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年9月号 No.191

出題と解答 今泉 真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤部)

A1

(4)低カルニチン血症ーセフカペンピボキシル塩酸塩水和物
(商品名フロモックス他)

 Fくんの主訴である喉の痛みの大半は、咽頭部にウイルスや細菌が感染し、炎症を起こすことで生じる。小児の場合、A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)による感染症が多くを占め、発熱や発疹を伴う。

 細菌検査によって溶連菌感染症と確定できた場合、治療では抗菌薬の投与が行われる。抗菌薬はペニシリン系やセフェム系が処方されることが多い。

 ところで、今回医師がFくんの母親に抗菌薬の服用後、ふらつきが出たり、痙攣を起こしたことがないか尋ねたのは、ピボキシル基を持つ抗菌薬の投与による低カルニチン血症と低血糖を起こしたことがないかを確認する目的だと考えられる。この副作用は2012年4月に医薬品医療機器総合機構(PMDA)が、小児(特に乳幼児)への投与に関して医療者に向けて注意を促しているもので、同年1月31日までに38例の低カルニチン血症と低血糖の副作用が報告されている。

 ピボキシル基をもつ抗菌薬は投与後、体内での代謝によって活性成分とピバリン酸に加水分解され、ピバリン酸はカルニチン抱合を受けてピバロイルカルニチンとして尿中へ排泄される。そのため、ピボキシル基を持つ薬剤の服用中はカルニチンの排泄が亢進し、血清中のカルニチンが減少することが分かっている。体内のカルニチンが過度に消費されると、低カルニチン血症を起こす。

 カルニチンは長鎖脂肪酸をβ酸化(脂肪酸の分解)する上で、ミトコンドリア内に輸送するために必要な物質である。空腹時(飢餓状態)では脂肪酸のβ酸化によって必要なエネルギーを確保し、糖新生(糖以外の物質からグルコースを合成すること)を行う。よって、カルニチンが欠乏した状態では脂肪酸のβ酸化が行われなくなり、糖新生が阻害され低血糖を来す。

 PMDAの報告によると、ピボキシル基を持つ抗菌薬の投与後に低カルニチン血症と低血糖を引き起こした年齢は10歳以下に集中し、2歳未満が25人と最も多い。この原因として、乳幼児では体内の筋肉量およびカルニチン量が少なく、体調によってはカルニチン摂取量が十分でないことが指摘されている。

 副作用症例における投与期間は14日以上が大半を占めるが、投与開始翌日に低カルニチン血症を伴う低血糖を起こした例もある。ピボキシル基を持つ抗菌薬が処方されている患児には特に、摂食状況や下痢・嘔吐の有無などを確認するとともに、服薬中は低血糖による意識レベルの低下や痙攣などに注意するよう指導する。

 ちなみに、ピボキシル基を持つ抗菌薬には、セフカペンピボキシル塩酸塩水和物(商品名フロモックス他)、セフジトレンピボキシル(メイアクト他)、セフテラムピボキシル(トミロン他)、テビペネムピボキシル(オラペネム)、ピブメシリナム塩酸塩(メリシン)がある。これらを単剤で長期服用する場合はもちろん、ピボキシル基を持つ抗菌薬を幾つか切り替えて使用した場合も、継続して投与したことと同様であるので注意したい。

 なお、PMDAによると、20代の妊婦が妊娠27週から39週にかけてセフカペンピボキシルを1日300mg(原薬量)服用し、出産後、出生児と母体共に低カルニチン血症が認められたケースも報告されている。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 Fくんは溶連菌感染症と言われたのですね。今日は溶連菌を殺す働きがある抗生剤と痰を出しやすくするお薬、解熱剤が出ています。ご心配されているように、抗生剤の中には体内に存在するエネルギー源を体の外に放出してしまい、その結果、ふらつきや痙攣などを起こすものがあります。今日からお飲みになるパセトシンという抗生剤には、そのような副作用は報告されていませんので、どうぞご安心ください。

 溶連菌感染症の治療では、しっかりとお薬を飲み切ることが重要です。何か心配なことがありましたら、私たち薬剤師や医師にご相談ください。

参考文献
1)日本小児科学会雑誌 2012;116:804-6.
2)「PMDAからの医薬品適正使用のお願い」(2012年4月、No.8)
3)日本周産期・新生児医学会雑誌 2012;48:429.

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ