DI Onlineのロゴ画像

Interview 
恵比寿ファーマシー 代表取締役 佐竹正子氏
日経DI2013年9月号

2013/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年9月号 No.191

 1981年に糖尿病専門医の処方箋を応需する恵比寿ファーマシー(東京都渋谷区)を開局し、療養指導の知識や技能を会得。日本くすりと糖尿病学会の第2回学術集会(11月23、24日開催)では、薬局薬剤師として会長を務める。「糖尿病患者は今後増えるので、全薬剤師が勉強すべき」と語る。(聞き手は本誌編集長、橋本宗明)

1957年生まれ。80年星薬科大学卒業。81年6月恵比寿ファーマシー(東京都渋谷区)を開局して、糖尿病患者への服薬指導や療養指導を積極的に行っている。2011年星薬科大学大学院社会人博士後期課程修了。現在、日本くすりと糖尿病学会副理事長、星薬科大学薬動学室客員講師。

─日本くすりと糖尿病学会の第2回学術集会の開催に当たっての抱負を聞かせてください。

佐竹 2012年1月に設立したばかりの学会ですが、昨年の第1回学術集会は700人近い参加者を集めて大盛会でした。第2回の会長を薬局薬剤師の代表という形で務めます。

 学術集会のテーマは「糖尿病薬物療法のさらなる進歩へ─ALL(オール)薬剤師からの発信」です。DPP4阻害薬も新しい薬ですが、これからSGLT2阻害薬のように全く新しい作用機序の新薬も出てきます。そうした薬物療法の進歩について、一番早く情報を得るべきなのが薬剤師です。そのためには基礎研究をしている薬剤師、病院薬剤師、薬局薬剤師が一丸となり、オール薬剤師で情報交換をしたいと考えました。

─学術集会の見どころは何ですか。

佐竹 シンポジウムが3つあって、1つは基礎の薬物動態、もう1つは薬局薬剤師向けの残薬管理の話題を取り上げます。もう1つは、妊娠期の女性の生活習慣に関する話題を、医師、基礎研究者、薬局薬剤師、病院薬剤師にそれぞれお話しいただきます。

 妊娠期の女性がダイエットなどで極度に痩せていると、その母親から生まれた子どもは中年期に糖尿病になりやすいといわれています。そこで、医師からは、基調講演として妊娠と糖尿病についてお話しいただきます。基礎の先生からは動物実験などのデータに関する話を、薬局薬剤師には予防医療的なことを含めて、病院薬剤師には妊婦における生活習慣の指導などについてお話しいただきます。オール薬剤師が、糖尿病を予防・治療するためには何をすればいいかが分かるシンポジウムにしたいと考えています。

 もう1つは「スリースター・ファーマシスト」という研修会を行います。スリースターというのはいわゆる三つ星のような優れた薬剤師を目指そうというものです。薬局薬剤師が糖尿病薬を処方された患者にどう介入すればいいか、何を指導すればよいか分からないとか、「低血糖がありますか」と聞いても「ありません」と言われてそこで終わってしまうといった話を聞くので、患者さんとのコミュニケーションの取り方を、限られた人数によるグループワークのような形で学ぶ機会にしたいと思っています。

─日本くすりと糖尿病学会の設立の経緯を教えてください。

佐竹 設立したばかりと申しましたが、前身となる薬剤師糖尿病地域医療研究会という組織を10年前に立ち上げて全国の薬剤師のネットワークを作り、「薬と糖尿病を考える会」として活動してきました。ちょうどその発足の頃に、日本糖尿病療養指導士の制度ができました。糖尿病療養指導士の受験資格は、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、理学療法士の5職種に与えられています。この中で、看護師は日本糖尿病教育・看護学会、管理栄養士は日本病態栄養学会という学会を持っていますが、薬剤師には糖尿病専門の学会がありませんでした。それで、薬剤師だけの研究会をまず作ることになったのです。

 それから、糖尿病療養指導士の受験資格には、「同一施設に指導医がいること」という規定があり、病院薬剤師は受験できますが、現在、薬局薬剤師は受験できません。医師が同じ施設にいない場合に、薬剤師の糖尿病に対する療養指導のスキルの質をどうやって担保していくかという問題があるからです。そこで、薬局薬剤師のスキルを高めて受験資格が与えられるようにしようということも学会設立の目的の一つになっています。

─そもそも、佐竹さんが糖尿病患者の療養指導に関わるようになったのはどうしてですか。

佐竹 薬剤師になったのは33年前で、1年間は循環器科の処方箋を受けている薬局に勤務し、インスリン自己注射が保険適用になった1981年6月にこの薬局をオープンしました。糖尿病の専門医が院外処方箋を出したいということで、縁あって開局したのです。糖尿病の勉強をし始めたのはそれからですが、最初は色々な処方箋を調剤するので精一杯でした。その後、少しずつ慣れて研究会などに参加するようになり、ネットワークを広げていきました。当時は研究会に行っても、看護師や栄養士向けのブースはあるのに、薬剤師のブースはないような時代でしたが。

─薬局薬剤師の中でも専門性が分かれると思います。糖尿病は誰もが勉強をすべきなのでしょうか。

佐竹 きっと全員勉強した方がいいでしょうね。これから糖尿病患者は絶対増えてきますから。それに、セルフメディケーションが推進されると、薬剤師は生活習慣の改善を指導していかなければならなくなります。生活習慣が一番影響しやすい糖尿病は、ぜひ勉強しておいた方がいいと思います。

 薬局薬剤師が療養指導のスキルを身に付けると、地域全体の糖尿病の医療水準を高めることにもつながります。それに、薬局薬剤師は医療の流れの中で、最後に会う医療関係者でもあります。その薬局薬剤師が指導力を持ってきちんと対応できると、医療機関では説明されなかったことがあっても再確認できます。

─セルフメディケーションに関しては、薬局で血糖値を測定して受診勧奨する取り組みも始まっています。

佐竹 現時点では薬剤師ではなく、患者さんに測定してもらっているわけですが、今の薬学生はフィジカルアセスメントも学んでいます。薬局で簡単な検査をして、受診勧告などのアドバイスができるようになるかもしれません。薬局でのセルフメディケーションの位置付けもいずれは変化するでしょう。

 私が開局する前はインスリン療法は自費で、デバイスもポンプ式の注射器だけでしたが、今は様々なペン型注射器があります。経口薬もSU薬ぐらいだったのが、今は6系統あり、これからもまだまだ増えていきます。薬局薬剤師が勉強すべきことはたくさんあります。

 これからは薬剤師が在宅での糖尿病の療養指導に関わることも重要になってきます。今、在宅医療の現場で問題になっているのは、インスリンが必要なために施設や在宅で受け入れてもらえないことです。それまではインスリン製剤でコントロールできていたのに、入所するために経口薬に替えさせられることもあります。そのような場合でも、薬剤師が施設や在宅を訪問して指導すればインスリン療法を継続できるかもしれません。ところが病院の看護師は、薬剤師が在宅に関われることを知らなかったりします。そういう認識が進んでいないのは薬剤師のアピールが不足しているせいだと思います。

インタビューを終えて

 今や国民の5人に1人が「可能性あり」とされる糖尿病。その数の多さを思えば、地域住民の生活習慣改善や患者の療養指導に薬局薬剤師が取り組む意義はよりはっきりとしてきます。一方、「薬局薬剤師が療養指導のスキルを身に付ければ、地域全体の糖尿病の医療水準を高めることにつながる」という佐竹氏の指摘は、地域における医療提供施設という薬局の在り方に通じるものです。これからの薬局と薬剤師が取り組むべきテーマが1つ、明確になったように思いました。(橋本)

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ