DI Onlineのロゴ画像

適応外処方のエビデンス
フルバスタチンがC型肝炎ウイルスの増殖を抑制
日経DI2013年9月号

2013/09/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年9月号 No.191

疾患概念・病態

 C型慢性肝炎は、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染により、肝組織に炎症反応が引き起こされる疾患である。

 HCVに感染すると、約30%は一時的な感染のみで治癒するが、残りの約70%は自覚症状がないままHCV感染が持続し、慢性肝炎に移行するといわれている。HCV感染による炎症が続くと、肝臓は線維化し、肝硬変や肝細胞癌に進展する(参考文献1)。

治療の現状

 C型慢性肝炎治療の本質はHCVの排除であり、抗ウイルス作用を持つインターフェロン(IFN)が用いられる。

 従来のIFN単独療法では、持続ウイルス陰性化(SVR)率は約10%であった。その後、ポリエチレングリコール(PEG)をIFNαに化学結合させて分子量を大きくし、吸収と代謝を緩徐にして血中濃度を維持するようデザインされたPEG-INFα製剤が開発され、抗ウイルス薬のリバビリン(商品名レベトール、コペガス他)と併用されることになり、ジェノタイプ1b型・高ウイルス量の難治性C型慢性肝炎のSVR率は約50%へと向上した。

 だが、依然として約半数のC型慢性肝炎患者ではウイルスを排除できず、肝硬変、肝癌への危険にさられている(参考文献2、3)。特に、50~60歳以上の高齢女性ではSVR率が低く、より効果が高い新たな治療法が待たれている(参考文献3、4)。

 2003年、スタチン系薬であるロバスタチン(国内未承認)がHCV-RNAの複製を阻害すると報告された(参考文献5)。これが契機となり、後述するように国内で使用されているスタチン系薬の中でHCV増殖抑制効果が最も強いフルバスタチンナトリウム(FLV、商品名ローコール他)が、C型慢性肝炎のSVR率を改善できるとの期待から適応外使用されている(表1)。

表1 C型慢性肝炎治療へのフルバスタチンの処方例

フルバスタチンの抗HCV作用

 スタチン系薬によるコレステロール合成の調節は、合成経路のうち、HMG-CoA還元酵素によりHMG-CoAからメバロン酸が合成される段階で行われる。スタチン系薬は、HMG-CoA還元酵素を抑制することによりコレステロール低下作用を示す。

 スタチン系薬はまた、ゲラニルゲラニルピロリン酸の合成も抑制する(図1)。ゲラニルゲラニルピロリン酸により修飾される蛋白質は、HCVの増殖にも重要であることが明らかになっており(参考文献2)、ゲラニルゲラニルピロリン酸の合成が阻害されれば、HCVの増殖も抑制されると考えられている。

 国内で使用されているスタチン系薬のアトルバスタチンカルシウム水和物(ATV、リピトール他)、シンバスタチン(SMV、リポバス他)、プラバスタチンナトリウム(PRV、メバロチン他)、ピタバスタチンカルシウム(PTV、リバロ)、さらにFLVについて、抗HCV活性を検討したところ、ATV、SMV、PTV、FLVはロバスタチンよりも強い抗HCV効果を示したが、PRVには効果が認められなかった。抗HCV活性をEC50(50%有効濃度、単位μM)で比較すると、PTV(0.45)>FLV(0.90)>ATV(1.39)>SMV(1.57)であった。

 抗HCV活性を示したスタチン系薬とIFNαを併用すると、IFNα単独に比べて、抗HCV活性が相乗的に増強された(参考文献3、6)。さらに、スタチン系薬を投与した時の血中濃度(μM)がEC50の何%[Cmax×EC50(%)]に到達するかを検討した。FLVは血中でEC50の67%に到達するのに対し、他のスタチン系薬は低値であった。FLVは唯一、培養細胞で有効な抗HCV活性を示す濃度をヒトの血中でも実現できるスタチン系薬であることが示唆された。

 なお、スタチン系薬は肝臓に集積しやすいことが知られており、実際の肝臓でのスタチン系薬の濃度は、血中濃度よりも高いと考えられている(参考文献2)。

図1 コレステロールの合成経路

(肝胆膵 2008;57:1035-41.より引用)

フルバスタチンの有効性

 ジェノタイプ1b型・高ウイルス量のC型慢性肝炎患者で、PEG-IFNα-2bとリバビリンに加え、FLV20mg/日を併用した21例(男性11例、女性10例、年齢32~63歳、中央値56歳)と、FLVを併用せずPEG-IFNα-2bとリバビリンで治療を行った21例(年齢、性別、血小板数でマッチさせて抽出)とを比較した。治療開始後12週目、24週目、48週目の累積HCV-RNA陰性化率は、併用群が52.4%、85.7%、92.9%に対して非併用群では28.6%、57.7%、74.6%であり、併用群で有意(P=0.0253)に高かった。

 FLVを併用した21例のうち、48週で治療を終了した症例は、中止した2例を含む15例であった。この15例のSVR率は、全体では66.7%(10/15)、男性77.8%(7/9)、女性50.0%(3/6)であった。50歳以上の女性に限っても40%(2/5)で著効が得られた。中止した2例のうち1例は皮疹のため、もう1例はHCV-RNA陰性化が得られず本人の希望で中止となった。

 開始時の総コレステロール値は134~273mg/dL(中央値167mg/dL)であったが、FLV投与中の総コレステロール値は79~150mg/dL(中央値119mg/dL)で、平均して34.5mg/dLの低下を認めた。明らかな副作用はなかった(参考文献7)。

 ジェノタイプ1b型・高ウイルス量のC型慢性肝炎患者23例に、PEG-IFNα-2aとリバビリン併用療法を行う1週間前からFLVを投与した。初回治療群におけるHCV-RNA陰性化率は、開始後4週目、12週目で併用群55.6%(5/9)、87.5%(7/8)、非併用群10%(1/10)、50.0%(5/10)で、FLVの併用効果が認められた。一方、PEG-IFNα-2aとリバビリン併用の無効・再燃例における再治療では、8例中6例にFLVを併用し、前治療無効の3例はRNA陰性化が得られなかったが、前治療再燃の3例で陰性化が得られ、24週での効果判定が可能であった1例にSVRが得られた(参考文献8)。

適応外使用を見抜くポイント

 フルバスタチンがC型慢性肝炎の治療に使用されていることを見抜くのは難しい。肝疾患の薬と併用されている場合も、脂肪肝のコレステロール沈着の治療や予防と捉えることができるからである。しかし、患者がIFNによる治療を受けている場合やリバビリンが処方されている場合には、フルバスタチンがC型慢性肝炎の治療に使用されていると予想することができる。

参考文献
1)http://www.kanen.ncgm.go.jp/forcomedi_hcv.html
2)肝胆膵 2008;57:1035-41.
3)三田栄治他編『必ず役立つ! 肝炎診療バイブル』(メディカ出版、2009)
4)肝胆膵 2008;57:1043-5.
5)Proc Natl Acad Sci USA.2003;100:15865-70.
6)Hepatology.2006;44:117-25.
7)肝臓 2008;49:22-4.
8)肝臓 2010;51:A536.

講師 藤原 豊博
AIメディカル・ラボ、薬剤師
2000年から「月刊薬事」(じほう)で適応外処方に関する連載を開始。同連載をまとめた3分冊の『疾患・医薬品から引ける適応外使用論文検索ガイド』(じほう)が刊行されている。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ