DI Onlineのロゴ画像

適応外処方のエビデンス
アミトリプチリンやスプラタストが間質性膀胱炎の症状を改善
日経DI2013年8月号

2013/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年8月号 No.190

疾患概念・病態

 間質性膀胱炎は、膀胱上皮と筋肉の間にある間質が慢性的に炎症を起こし、膀胱が萎縮する非感染性の慢性疾患である。中高年の女性に多い。

 特徴的な症状は、蓄尿時の膀胱痛(恥骨上痛)で、排尿すると和らぐことが多い。膀胱痛に随伴して、昼間および夜間の頻尿、尿意切迫感などが認められることもある。だが、膀胱痛を認めない例も約半数に上り、外陰部や尿道の痛みや不快感を訴える場合もある。7割では痛みの部位が2カ所以上ある。これらの症状は、唐辛子などの香辛料やカリウムを多く含む柑橘類、コーヒー、紅茶、炭酸飲料、アルコールなどの摂取で悪化する場合がある(参考文献1~3)。

 膀胱鏡検査では、膀胱粘膜に潰瘍や点状出血が見られる。膀胱粘膜下組織や筋層内には、肥満細胞が多数浸潤している。これは、好酸球の増加と比例し、円形細胞(炎症性細胞)の浸潤とは相関しないことから、間質性膀胱炎は細菌性の炎症ではなく、アレルギーが要因の一つと考えられている。

 肥満細胞が分泌するヒスタミン、ロイコトリエン、セロトニンなどの炎症性メディエーターは、膀胱知覚神経の過活動状態を引き起こして知覚過敏をもたらし、疼痛、頻尿、線維化、新生血管などを誘発する。また、膀胱粘膜の非特異的防御機構の破綻により、膀胱粘膜の透過性が亢進し、尿の成分が膀胱粘膜に染み込むため、少し尿がたまっただけで尿意を催したり、膀胱萎縮により蓄尿量が減少するため、1回排尿量が著明に減少する(参考文献1、2)。

 間質性膀胱炎の原因としては、アレルギーのほかに、自己免疫反応、神経性炎症、遺伝的素因などが挙げられているが、明確にはされていない(参考文献2、3)。

治療の現状

 現在、間質性膀胱炎に対して保険が適用される内服薬はない。

 精神的ストレスが症状の悪化につながることが知られており、アミトリプチリン塩酸塩(商品名トリプタノール他、表1)などの三環系抗うつ薬が適応外使用される。また、ヒスタミンなどのメディエーターが関与しているとの考えから、抗アレルギー薬のスプラタストトシル酸塩(アイピーディ他、表2)が適応外使用される(参考文献3、4)。

表1 間質性膀胱炎へのアミトリプチリン塩酸塩の処方箋例

表2 間質性膀胱炎へのスプラタストトシル酸塩の処方箋例

アミトリプチリンの有効性

 ジメチルスルフォキシド(日本未承認)の膀胱内注入を行ったが効果が得られなかった間質性膀胱炎の女性患者25例(平均42.3歳)に、アミトリプチリン25mg/日を就寝時に1週間にわたって経口投与し、2週目は50mg/日、3週目は75mg/日へと増量、以後は75mg/日で治療を継続した。平均16.4カ月(4~40カ月)追跡できた20例を評価対象とした。

 アミトリプチリンの投与前後で、膀胱痛(1:ほとんど疼痛なし~10:激痛)は6.1±0.926から3.3±0.889へ有意(P=0.035)に減少し、日中の排尿間隔の時間は62.750±8.315分から117±16.089分へ有意(P=0.005)に延長した。夜間排尿回数は、4.4±0.686回から3.3±0.681回へ有意ではない(P=0.235)が減少した。アミトリプチリン治療前に性交痛があった9例中8例で、治療中は痛みが消失した。尿意切迫感があった19例中11例で、治療中は改善した。5例は全く効果がなかった(参考文献5)。

 間質性膀胱炎患者50例をランダムに2群に分け、25例(男性3例、女性22例、平均50.5±14.4歳)にはアミトリプチリンを就寝時に4カ月間経口投与した。用量は、25mg/日から開始し、症状が改善しなければ、2週目50mg/日、3週目75mg/日、4週目100mg/日に増量した。別の25例(男性3例、女性22例、平均60.2±17.5歳)にはプラセボを4カ月間経口投与した。両群とも各1例が副作用のため脱落し、各群24例を評価対象とした。

 間質性膀胱炎の症状スコア・問題スコアの合計(O’Leary-Sant IC symptom and problem index[主要な疼痛および排尿症状を評価する8つの項目からなる自己管理インデックス]、0:なし~36:重度)の平均は、プラセボ群では試験前後で27.6から24.1へ減少したのに対し、アミトリプチリン群では26.9から18.5へ有意(P=0.005)に減少した。

 疼痛および尿意切迫感の程度(ビジュアル・アナログ・スケールで評価、0:なし~100:強い)は、プラセボ群ではほぼ変化しなかったのに対し、アミトリプチリン群では有意(それぞれP<0.001)に減少した。

 4カ月後の有効率(著効+有効の割合)は、プラセボ群4%に対してアミトリプチリン群は63%で、アミトリプチリン群で有意(P<0.001)に高かった(参考文献6)。

スプラタストの有効性

 間質性膀胱炎の女性患者14例(平均43.7歳)に、スプラタスト300mg/日を経口投与し12カ月間治療した。

 1回排尿量は、治療前87.5±12.5mLから4カ月後178±13.6mL、12カ月後215±21.5mLへと有意に増加した。1回排尿量、尿意切迫感、排尿頻度、夜間頻尿、膀胱痛から評価した有効性は、著効、中等度有効の順に、4カ月後10例、1例、12カ月後10例、2例だった。12カ月後の有効率(著効+中等度有効の割合)は85.7%であった。副作用として、2例に発疹が認められたが、治療に影響することなく10日以内に消失した(参考文献7)。

作用機序

 間質性膀胱炎の症状悪化には精神的ストレスが関係していることが知られており、アミトリプチリンの抗不安作用が有用と考えられている。アミトリプチリンはまた、セロトニンやノルアドレナリンの再取り込みを抑制することで、中枢神経の痛み刺激伝達を抑制(下行性疼痛抑制系の賦活)し、鎮痛作用を発揮する。このほか、ナトリウムチャネル遮断作用やカルシウムチャネル遮断作用などもあり、末梢レベルでも神経傷害性疼痛を抑制することが明らかにされており、膀胱痛の改善が期待できる3)。膀胱筋の萎縮を緩和する作用もあるので、頻尿や尿意切迫感の改善が期待できる(参考文献4)。

 スプラタストは、免疫グロブリン(Ig)E抗体の産生や好酸球の浸潤を抑制することにより、間質性膀胱炎の炎症を抑え、症状を改善すると考えられている(参考文献7)。

適応外使用を見抜くポイント

 アミトリプチリンは寝る前の服用が多く、一見すると、夜間頻尿やストレスによる睡眠障害を改善する目的で処方されたように見える。一方、スプラタストは、気管支喘息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎が適応である。いずれも、間質性膀胱炎に使用していることを見抜くのは困難である。

 しかし、膀胱痛の緩和のために鎮痛薬、膀胱筋を柔軟にするために鎮痙薬や抗コリン薬、アレルギー症状に対して抗ヒスタミン薬が併用されることがあるので、その場合には見抜くポイントになる。ただ、鎮痛薬は膀胱内の潰瘍を悪化させる可能性が指摘されているので、併用は少ないと思われる。

 いずれにせよ、患者へのインタビューを通して判別することが重要である。

参考文献
1)泌尿器ケア 2012;17:46.
2)日排尿会誌 2011;22:317-21.
3)医学と薬学 2009;62:601-7.
4)間質性膀胱炎患者の会「ともの樹」ウェブサイト
5)J Urol.1989;141:846-8.
6)J Urol.2004;172:533-6.
7)J Urol.2000;164:1917-20.

講師 藤原 豊博
AIメディカル・ラボ、薬剤師
2000年から「月刊薬事」(じほう)で適応外処方に関する連載を開始。同連載をまとめた3分冊の『疾患・医薬品から引ける適応外使用論文検索ガイド』(じほう)が刊行されている。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ