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特集:一包化調剤 お悩み相談室
調剤技術編:正確で効率的な分包はミスの認識と予製がカギ
日経DI2013年8月号

2013/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年8月号 No.190

Q.一包化を避けるべき薬は?

 一包化が指示された処方箋を受けたら、まず確認すべきなのは、一包化してよい薬剤かどうか、言い換えると、薬剤をPTPシートから出しても品質が大きく変化しないかどうかだ。

 一包化できない薬は、その旨が添付文書やインタビューフォームに記載されているが、現実には、添付文書上は“NG”でも、アドヒアランスの観点から、一包化せざるを得ない場合も出てくる。帝京大学薬学部教授で、株式会社ファーミックの富士見台調剤薬局(東京都国立市)専務取締役の下平秀夫氏は「湿度や温度など様々な条件で実験した個々のデータは、論文などで報告されている。こうした情報も参考に、柔軟に対応することが望ましい」と話す。

「一包化した薬剤の保管方法を、丁寧に説明しておくことが大切」と話す、富士見台調剤薬局の下平秀夫氏。

 そこで同氏らは、処方頻度が高く一包化で性質が問題となる薬剤について、文献を基に無包装状態での安定性を調査。湿度、温度、光に影響を受けやすいものをまとめた(表1)。これらを一包化する場合は、患者に注意書きを渡している(図1)。

表1 一包化で性質上問題となる薬剤と注意すべき環境要因

(都薬雑誌 2013;35:28-30.を一部改変)

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図1 患者に渡す「保管時の注意書き」

注意が必要な部分にチェックを付けて、薬剤交付時に渡している。

 光にさらされると変化する薬剤は遮光袋に入れ、吸湿性の高い薬剤は乾燥剤を入れたチャック付きのポリ袋に入れて交付する。温度に関しては、薬局では対応できないため、「涼しい場所に保存してください」などと、口頭で注意を促す。

 ただし、デパケン錠(一般名バルプロ酸ナトリウム)と表1のケントンカプセル(トコフェロールニコチン酸エステル)については、特に湿度の影響を受けやすいため、安定性試験のデータを処方医に疑義照会し、別の剤形や先発品に変更して対応している。

 表1に挙げた薬剤を一包化する場合は、「基本的に1カ月分が限度。90日処方などでの一包化は行わない」(下平氏)という考え方だ。

 なお、長期間の一包化に向かない薬剤については、2週間など短い期間で分包し交付する分割調剤を提案するのも1つの方法だ。しかし、調剤時に調剤量や調剤年月日などを処方箋に記載して、患者に処方箋を返し、交付した薬がなくなったらまた処方箋を持ってきてもらい調剤することになる。こうした煩雑さから、積極的に行わない薬局もあり、今後はこうした要件の見直しも必要といえるだろう。

ブン吉 ああ、あの苦い夏の日の出来事を思い出しましたよ。

はま子 どうしたの?

ブン吉 新人の頃、患者さんの家で残薬を整理していたら、一包化した分包紙の中で変色したり、どろどろになった薬がいっぱい出てきたんです。ショックでした。

はま子 患者さんが家でどんなふうに薬を保管しているか、なかなか分からないものね。交付する時は、保管法もアドバイスするといいわね。 

Q.調剤時間を短縮するには?

 一包化調剤は、分包機を使う分、手間や時間が掛かるのが常。状態が安定したDo処方の患者に多く行われることが多いため、前回の処方内容を基に予製しておくと、患者の待ち時間を短縮できるメリットがある。

 予製といっても、分包はせず、薬を取りそろえるところまでにしておくのがコツ。処方が変更されて、結果的に二度手間になることがあり得るからだ。

 服用時点別に分包する連続(AA)分包か、服用する順に分包する反復(AB)分包か、分包紙に何を印字するかなど、個々の患者別に対応が必要な事項については、スタッフで共有しておく。

 2年前に開局したてらさわ薬局(長野県茅野市)は、徐々に増えてきた一包化の調剤を効率的に行うため、患者別の対応などについて、電子薬歴のほかに専用の紙(薬剤管理簿)にも残している(Case1)。この管理簿には、分包の方法、PTPシートのままで渡す薬剤や後発品に変更する薬剤の情報とそれを始めた日付なども書き込んでいる。

 管理簿は患者別にクリアファイルに入れ、処方日数から予想される次の来局日を大きく書いておく。クリアファイルは来局予想日順に並べて調剤室の隅に置く。さらに、調剤室にあるカレンダーの予想日に患者の名前を書いておくと、一包化調剤で混雑しそうな日を予測できる。同薬局ではこうしたファイルを40~50人分管理している。

 管理薬剤師の寺澤雅治氏は、「来局予想日に合わせて、薬剤を取りそろえておけるので、効率がいい」と話す。

 1日約200人の患者が来局し、うち30人の一包化調剤を行う富士見台調剤薬局でも、過去の処方箋のコピーを元に薬をあらかじめ取りそろえるとともに、薬剤師が分包紙の印字方法や処方の変更などもそのコピーに書き込んでいる。取りそろえた薬は、患者名の50音順に保管している。

 同薬局では、このように薬をそろえておく患者が多く、その種類や錠数も多い。そのため、予製用に確保した薬剤は台帳に記している。

 高齢の患者が多い医療機関の門前や、施設向けの調剤を応需することが多い薬局では、自動錠剤分包機とレセコンが連動したシステムを導入するという選択肢もある。東京都健康長寿医療センター(東京都板橋区)の門前にある竹内薬局では、1日約100枚の処方箋を応需し、その1~2割を一包化している。しかも、その多くが70日や98日といった長期処方だ。

 同薬局では今年6月に、レセコンに連動した最新の自動錠剤分包機2台を導入した。分包機にセットしている薬剤は、処方頻度が高い70品目。管理薬剤師の高見優子氏は「分速で60包できる装置なので、1日3回の服用で98日分の調剤時間が20分以上短くなった」と話す。

 こうしたシステムを導入する薬局は限られるが、調剤の効率化を目指すところでは今後普及するかもしれない。

ブン吉 うちの薬局は基本的にAA分包。AB分包の患者さんは2人でしたっけ?

はま子 もっといるわよ! そういえば、最近、分包紙に「私の名前は入れないで」と言われることが多いのよ。情報共有しておきましょう。

Q.どんなミスが起こりやすい?

 アインファーマシーズ(札幌市東区)研修部顧問で、『100の事例に学ぶ調剤過誤防止』(日経BP)の著者である林紘司氏は、薬局で起こるヒューマンエラーの背後要因を、(1)システム、(2)コミュニケーション、(3)思い込み、(4)焦り、(5)確認漏れ、(6)知識不足、(7)薬剤管理─の7つに分類している。手間のかかる一包化調剤は、患者を待たせたくないという気持ちから、焦りや確認漏れが起こりやすく、ミスを誘発しやすい(表2、3)。

表2 一包化調剤で起こしやすいミス(林氏による)

表3 一包化調剤で起こった調剤過誤の例(林氏による)

●これまで一包化されていたフロセミド錠20mgが、用量を随時調節するため、今回から別分包にすることになった。だが分包を忘れ、フロセミドが交付漏れになった。一包化予製品にフロセミドが含まれていると思い込んでいた。

●患者の予製品を開封し、自動分包機のカセットに戻した際に、誤ってオイグルコン錠(一般名グリベンクラミド)をガスモチン錠(モサプリドクエン酸塩)のカセットに戻してしまった。そのため次の一包化調剤で、ガスモチン錠がオイグルコン錠に入れ替わった。

●リスパダール錠1mg(リスペリドン)の分割半錠が含まれていない分包1 包を見逃した。分包作成時に、分包紙の端が破れたためシーラーでふさいだが、半錠が抜け落ちたことに気づかなかった。

 特に、急いで分包機に薬剤を投入する際には注意が必要だ。例えば、PTPシートから分包機に薬を直接入れる際、小さな錠剤が飛び出して分包機の外に出たり、シートの断片がマスに混入したりすることがある。静電気が発生しやすい冬場は特に気を付けたい。

 てらさわ薬局の寺澤雅治氏は、「錠剤やカプセルの数が多いと、投入し終わった後にマスの中の錠数を確認しようと思っても見えにくい。そこで、1種類入れたらマスの中を確認し、下の蓋を開けて中に落としてから、次の薬剤を投入している」と話す。

 一包化の調剤で混雑する時間帯は分包機に前の患者の薬剤が残っていないかどうかも注意が必要だ。分割した錠剤では、かけらが混入する恐れがある。混入を防ぐため、風祭薬局(神奈川県小田原市)では、分割した錠剤は調理用のざるに入れて、かけらを払ってから分包機に投入している(写真1)。

写真1 錠剤を分割する際に使うざる(風祭薬局)

錠剤の分割時に出やすい小さな粉は、分包機を汚染する原因になるので、分割後はざるに入れて粉を払っている。直径15cmが使いやすい。

 自動錠剤分包機を使っている薬局では、薬剤名を機械に登録したり、薬剤をカセットに充填するとき、特に注意が必要だ。

 コリン作動薬のウブレチド(ジスチグミン臭化物)と緩下剤のマグミット(酸化マグネシウム)を同じ登録コードにしてしまったために、ウブレチドの過剰投与で患者が死亡するという調剤過誤事件は記憶に新しい。竹内薬局では、カセットへの充填時、薬剤名と規格を必ず2人以上で確認し、「いつ、誰が、何を、どのくらい」補充したかを記録し、ミスを防いでいる。

 意外かもしれないが、一包化する薬剤に気を取られて、一包化対象外の薬剤を交付しそびれるといったミスも起こっているので、確認が必要だ。

はま子 そうそう、私も若い頃、一包化に気を取られて、下剤を渡し忘れたことがあったのよ。

ブン吉 はま子先輩でもそんなミスがあったんですね。

はま子 その1回だけだけどね。

ブン吉 ボクはカセット式の自動錠剤分包機のある店に勤務したことがないので、カセットのセットは不安です。何度も確認しちゃいます。

はま子 “慣れ”が怖いのよね。ベテランの人ほど注意が必要よ。

Q.再分包の注意点は?

 一包化した薬剤のうち1剤だけが服用中止になったり、後から他の薬局で処方された薬剤も一緒に分包してほしいと患者から依頼されることがある。このような場合、分包紙をいったん開けて、再分包する必要がある。

 1剤だけを取り除くのであれば、分包紙の上部を小さく開けて、該当する薬剤を押し出し、ヒートシーラーなどで再度封をするケースが多いようだ。

 より慎重に行うのであれば、いったん分包紙から薬剤を全部出し、刻印などを確認しながら薬剤別に清潔な容器に入れ、分包機に入れ直すこともある。しかしこれでは、時間も手間も掛かる。

 風祭薬局は、パーキンソン病など神経難病の診療を専門とする国立病院機構箱根病院の患者が多く来局するため、処方された薬剤の用量調整や整理のために再分包する機会が多い。

 こうした場合、同薬局では、分包紙の中から1剤ずつ、注意しながら直接マスに再投入していくことが多いという。ただし、作業を急ぐと、薬が誤って隣のマスや分包機の後ろに入ってしまうことがある。

 そこで、同薬局の吉川武寿氏は、薬剤がマス目に入るのを補助する「再分包用ホッパー」を自作し、活用している(Case2)。「効率的に安心して作業できる」とのことだ。

ホッパーの型紙は『DIオンライン』からダウンロードできます。

Q.鑑査にも工夫はある?

 一包化における鑑査の手順については、薬局で統一したルールを作っている場合もあれば、個々の薬剤師に任せている場合もある。

 複数の薬局や病院での勤務経験を持つ病院薬剤師の富野浩充氏は、一番端の分包紙の錠数と刻印、さらに割線の特徴をチェックし、それを目安に隣の分包紙を次々に確認している。「処方箋の薬剤名の横に、刻印の内容を手書きして、1つずつ確認しながら鑑査していた薬剤師に出会ったこともある。それぞれの流儀でよいと思うが、少なくともどの薬を調剤したのか、調剤担当者が鑑査者にPTPシートの殻を渡して、確認してもらうことが重要だろう」と富野氏は話す。

 風祭薬局の吉川氏は、シートの殻を薬剤交付時にカウンターまで持っていき、患者の目の前で一緒に確認するようにしている。

 分包された薬剤の形、色、大きさ、刻印を全て確認するため、自作の鑑査装置を使っている薬局もある(Case3)。作成したのは、カロン薬局(宇都宮市)の経営者でピノキオファルマ代表取締役の田中直哉氏。

 装置は分包紙が表裏両面からディスプレーに拡大されて映し出される仕組みで、マウスを使いディスプレー上にチェックを付けることもできる。スタッフからは「見えにくい刻印もはっきり分かる」と好評で、県内にある系列の薬局4軒にも導入している。

 自動鑑査システムを導入する施設も出てきている(Case4)。今のところは全国で20施設ほどだが、一包化調剤の頻度がより高まれば、導入する薬局もさらに増えてくるだろう。

ブン吉 風祭薬局の再分包用のホッパーも、カロン薬局の鑑査装置も、自作ですか! よくできてるなあ。

はま子 感心するのはいいけど、ブン吉くんもこのくらいやらないと。

ブン吉 ボク、手元が不器用なのです……。患者さんとお話しするのは好きなんですが。

はま子 一包化の患者さんには、正しく服用していただくよう、フォローが特に大事なのよ。大丈夫?

ブン吉 そりゃあもう、大丈夫! ……かなあ。

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