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ヒヤリハット事例に学ぶ
子どもが家族の薬を誤飲、誤使用
日経DI2013年8月号

2013/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年8月号 No.190

 小児が関わる医薬品のトラブルで最も多いのが、家族などに処方された薬剤を、子どもが誤飲あるいは誤使用することである。子どもには、錠剤やカプセル剤、軟膏はお菓子に見え、吸入薬や貼付薬、点眼薬はおもちゃになる。

 実際、東京都生活文化局が2010年に、0~6歳の子どもを持つ保護者2000人を対象に行った「ヒヤリ・ハット体験調査」では、誤飲をして医療機関を受診した品目のうち、医薬品は23件と、たばこ(46件)に次いで多かった。

 今回は、筆者らがインターネット上で運営している薬剤師情報交換システム「アイフィス」の会員から寄せられた事例の中から、家族などに処方された薬剤を子どもが誤飲あるいは誤使用したトラブル事例を紹介する。

 なお、筆者らが収集した服薬指導におけるヒヤリハット・ミス事例などは、無料で閲覧が可能である。入会申し込みは、NPO法人医薬品ライフタイムマネジメントセンターのウェブサイト「アイフィス(薬剤師)」コーナーから(http://www.iphiss.jp/i-phiss/i-phiss.html)。

*薬歴によると、患者は気管支喘息と診断されている。

■何が起こったか

 患者が使用しているフルタイドディスカス(一般名フルチカゾンプロピオン酸エステル)を子どもが勝手に触り、レバーを押すなどして遊んだ。

■どのような経緯で起こったか

 患者には5歳の男の子がいる。子どもは母親がフルタイドディスカスを使用している時、カチカチと音をさせているのを興味深く眺めていた。

 ある日、患者が留守中に、男の子は同薬をタンスの引き出しから取り出してレバーをいじって遊んだ。その後、母親に怒られると思い、同薬を引き出しに戻した。

 夕方になり、患者が同薬を使用しようとしたところ、残量を示すカウンターが「0(ゼロ)」になっており、部屋の床に薬剤の粉が飛び散っていることに気づいた。


薬は子どもの前で服用しない

 フルタイドディスカスは、カタツムリのような形をしている上、使用時にカチカチと音がするため、幼い子どもが興味を持ちやすい。今回のケースでは、患者(母親)は子どもに、これは薬であること、薬に手を触れてはいけないことを十分言い聞かせていなかった。

 このケースでは、子ども自身が薬により有害事象を引き起こす危険性はもちろん、患者が薬剤を使用できなくなり病状を悪化させる恐れもあった。薬剤師は患者の家庭に幼い子どもがいるかどうかをチェックし、子どもがいる家庭では、薬の保管場所や使用時の注意点について指導すべきである。

 今回のケースでは、薬剤師は次のように説明すればよかった。「ご家族に小さなお子様はおられますか。今回処方されましたフルタイドディスカスは、ユニークな形をしているので、子どもがいたずらをして事故になりそうになった事例が報告されています。ですので、お薬はお子様の手の届かないところに保管して、できるだけお子様の見ていない場所で使用してください」。

■何が起こったか

 母親のモーラステープ(一般名ケトプロフェン2%)を、子ども(6歳)が自分の足首に貼った。

■どのような経緯で起こったか

 家族で市民プールに遊びに行った翌日、子どもの左足首がくっきりと四角く真っ赤になっていた。母親は子どもを皮膚科に受診させ、医師と一緒に原因を考えたところ、赤くなった部分が、自分が使っているモーラステープと同じ大きさであることに気づいた。

 子どもに尋ねると、モーラステープを左足首へ貼付して遊んだが、すぐに剥がしたと話した。医師は、子どもをケトプロフェンによる光線過敏症と診断した。


子どもと暮らす患者には保管場所も説明

 母親は、子どもの手の届く所にモーラステープを保管していた。子どもが見ている前で貼付することもあったが、遊び道具になるとは思わなかった。また、母親は貼付薬で光線過敏症が起こることも知らなかった。

 小さな子どもと同居している患者には、薬の保管場所についてもしっかりと説明しておく必要がある。特に外用薬は、貼る・塗る・吸うなど、子どもの関心を引きやすいので、本ケースのような事例が起きないよう、保護者や同居人に注意を促すようにしたい。

 今回のケースでは、薬剤師は次のように説明すればよかった。「モーラステープは、剥がした後であっても、日光に当たるとかぶれることがあります。テープを剥がした後、4週間ぐらいは注意が必要です。○○さんのお宅には、小さなお子さんがいらっしゃるのですね。飲み薬はもちろんですが、貼り薬も子どもが触りたがることが多いので、子どもの目に付かない所、手の届かない所に保存してください」。

*薬歴によると、患者は糖尿病と診断されており、(1)~(3)が定期処方されている。
*今回の診察で(4)キプレス(一般名モンテルカストナトリウム)が初めて処方された。

■何が起こったか

 薬局に、「子どもがキプレス(一般名モンテルカストナトリウム)を誤って飲んだかもしれない」との電話が掛かってきた。担当した薬剤師は、「喉につかえていなければ、それほど心配ないでしょう」と対応した。

 しかし、子どもが本当にキプレスを飲んだのかは不明で、キプレスの他に処方されていた糖尿病治療薬を誤飲した可能性にまでは考えが至らなかった。

■どのような経緯で起こったか

 ある日、患者の家族(患者の娘と思われる)から電話があった。苗字は確認できたが、フルネームは把握しなかった。患者家族は、「そちらで処方されたキプレスというお薬を、子ども(患者の孫、2歳の男児)が誤って服用したかもしれない」と話した。子どもが薬を服用してから15分ほど経過しているが、子どもに異変はないとのことだった。

 担当した薬剤師は、キプレスは小児科でも用いられる薬剤であり、2歳の男児に10 mg錠は過量ではあるが、重篤な有害事象は起こりにくいと判断。18時を過ぎていたため、平日夜間診療所を受診するよう勧めて、電話を切った。

 翌日、苗字を頼りに薬歴から患者の処方を確認したところ、患者にキプレスが処方されていたのは1カ月前であり、手元にキプレスが残っていない可能性が考えられた。さらに、患者には定期的にアマリール(グリメピリド)が処方されていることが判明。薬剤師は、子どもがアマリールを誤飲したのではないかと心配になった。

 そこで薬剤師が患者宅に電話を掛けて確認したところ、患者の家族は、「子どもが薬を誤って飲んだのは、私の勘違いだったのかもしれない」と話した。


電話相談では、患者氏名と処方薬を確認

 電話を受けた薬剤師は、家族の話をそのまま信用して、何の薬を誤飲したのかを確認しなかった。キプレスではなく、アマリールを誤飲していた場合は、重篤な転帰をもたらす可能性があった。

 キプレス錠10 mgとアマリール3 mg錠は、PTPシートの外観は異なるが、錠剤のサイズは似ている。キプレス錠10 mgは、直径8.0 mm、厚さ4.1mmで、色は明るい灰黄色のフィルムコーティング錠である。一方、アマリール3 mg錠は、直径8.0 mm、厚さ2.6 mmで、色は微黄白色、裸錠(割線入り)である。

 本ケースのような誤飲に関する電話相談では、まず患者氏名と処方薬の確認を行う。小児の場合、容体が急変する可能性があるが、冷静に対応しなければならない。

 具体的には、以下の情報を確認し、救急通報や受診を勧めるか、もしくは経過を観察するよう勧める。患者に受診を勧める場合は、手持ちの薬を持参するよう伝える。

1)何を飲み込んだか?(誤飲物の特定は確かか、他に誤飲したと考えられるものはないか、PTPシートごと誤飲したのかなど)
2)喉に詰まっていないか?
3)現時点での体調は?

 今回のケースでは、電話で相談を受けた際に、薬剤師は次のように対応すればよかった。

 「お子さんが、おばあさまの薬を飲んでしまわれたのですね。おばあさまの薬を調べますので、お名前をフルネームでお願いします」

 「お待たせしました。キプレスは5日分だけ処方された薬ですので、もうなくなっているのではないでしょうか。他に、糖尿病のお薬が出ていますが、お子さんがこちらを飲まれた可能性はございませんか。それから、お子さんの今の状態はいかがでしょうか」


この他にも、次のような事例が報告されている。

・7歳の子どもがフリスク(ミント風味のシュガーレス清涼菓子)と間違えて、母親が服用しているデパス錠(エチゾラム)を飲んだかもしれないと心配した母親が来局した。

・母親から、2歳の女児が一般用医薬品(OTC薬)のかぜ薬を飲んだかもしれないと薬局に電話があった。母親が棚に置いたかぜ薬のビンが空になっているのに気づいた。

・35歳女性は、気管支喘息で吸入薬のセレベント25ロタディスク(サルメテロールキシナホ酸塩)を使用していた。子ども(3歳)は、母親が吸入する様子を見てセレベントに触りたがったが、母親は禁じていた。ある時、母親がいない間に、子どもが引き出しからセレベントを取り出し、口にくわえて吸った。このことは、吸入器の吸い口にチョコレートが付いていたことで判明した。

(東京大学大学院教授 薬学系研究科
医薬品情報学講座・澤田康文)

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