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医師が語る 処方箋の裏側
ワルファリンに併用した漢方薬「五苓散」の目的
日経DI2013年8月号

2013/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年8月号 No.190

 左の処方箋をご覧になって、漢方薬の五苓散(ごれいさん)がなぜ処方されているか、ご理解いただけるだろうか。

 患者は52歳の女性で、脂質異常症と高血圧がある。ワーファリン(一般名ワルファリンカリウム)が処方されているのは、心原性脳塞栓症の予防ではなく下肢の静脈血栓症の治療目的である。また、同時に下肢の血栓性静脈炎も治療中だ。ビタミンEであるユベラ錠には炎症を抑える効果があり、適応症に静脈血栓症や血栓性静脈炎などの末梢循環障害がある。ヒルドイド(ヘパリン類似物質)にも抗炎症効果があり、適応症に血栓性静脈炎がある。こうした点から下肢静脈血栓症の存在が推測できるだろう。

 さて、そんな患者に五苓散が処方されている目的は何か。答えは「下肢のむくみの改善」だ。五苓散は漢方薬の中でも利尿作用に優れた処方で、適応症に浮腫がある。その事実を知っていれば、処方の目的は容易に想像がつくかもしれない。

 女性は下肢にむくみを生じることが多く、血栓性の静脈炎があればさらに出やすくなる。そこで私は、血栓や静脈瘤が原因と考えられる下肢のむくみを来した患者に、五苓散をよく処方する。1カ月に100例近く処方することもあり、5~6割の患者でむくみの改善効果が得られる。処方期間は半年から2年程度と長いが、興味深いことに、効いた患者の7~8割はその後むくみが生じず、五苓散を再開する必要がない。

 五苓散は総じて腎機能の低下した患者に処方することが多く、利尿薬ほど切れ味が鋭くないため使いやすい。このほか、むくみに加え脚が重くだるいと訴える患者には、利尿作用はやや弱いが血液うっ滞防止効果や抗炎症効果がある桂枝茯苓丸を、瘤や静脈炎の痛みが強い場合は、附子で痛みを抑えられる真武湯を処方することもある。

 なお、五苓散を処方する際はまず7日間で様子を見て、4週間後に念のため肝機能と腎機能の検査を行うようにしている。(談)

岩橋 英彦氏
Iwahashi Hidehiko
アビエスクリニック(福岡市博多区)医院長。1994年福岡大学医学部卒業。同大学心臓血管外科で心臓手術に携わり、2009年に開業。心臓血管外科での経験を循環器内科の診療に生かすとともに、漢方薬の特性を生かした処方にも意欲的に取り組む。

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