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ネット販売原則解禁の次はネット調剤、ネット薬局が登場?
日経DI2013年8月号

2013/08/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年8月号 No.190

 安倍晋三総理が掲げる成長戦略の下で、一般用医薬品(OTC薬)のネット販売に原則解禁の方針が示された。これにより、医薬品のネット販売を巡る議論は新たなステージへと移るだろう。対面販売ありきからネット販売ありきへ。そしてネット販売推進派はこう考えているはずだ。OTC薬のネット販売で何も問題が起きなければ、医療用医薬品のネット販売、つまりネット調剤だって可能なはずだと。

 確かにネット調剤は、海外の幾つかの国で既に解禁され、実際に行われている。日本で検討されている処方箋の電子化が実現すれば、ネット上に開設された薬局、いわばネット薬局に患者が電子化された処方箋を送信し、調剤された薬を自宅に配達してもらうことが技術的に可能となる。肝心の服薬指導も、テレビ電話などのデジタル技術を駆使すれば対応できるはずだ。法改正などが必要になるかもしれないが、ネット調剤はすぐに実現するところまで来ているように思える。

 しかし、薬局薬剤師の立場としては、ネット調剤というのは悩みどころである。なぜなら、薬剤師としてネット上でどのように仕事をすべきか、改めて考えなければならないからだ。極端な話、これまで培ってきたノウハウを全て見直す必要があるかもしれない。

 薬局に来局する患者とネット上の患者とで、薬剤師に対する期待が同じとは限らない。特に服薬指導は直接に対面しない分、これまでとは別物になる可能性がある。

 患者はネットで服薬指導を受ける際、恐らく自分に比較的余裕がある時間帯を希望するはずだ。普段は時間がなくて聞けないようなことを、じっくり相談してみたいと思うかもしれない。ひょっとするとネットでの服薬指導は、内容的にも時間的にも、これまで以上のものを求められるのではないか。

 また、患者が薬剤師から服薬指導を受けずに薬を使うことも想定して、薬袋の書き方や説明文書も、これまで以上のものを考案する必要があるかもしれない。われわれに、そこまでの対応ができるだろうか。

 ネット調剤にはメリットもある。特に体調が悪くて外出するのがつらい患者や、薬局での待ち時間を少しでも短縮したいと考えている患者には朗報だろう。プライバシーを気にする患者も、自宅で薬を受け取れるようになれば、余計な気兼ねがなくなり、助かるはずだ。

 ただ、ある程度の線引きも必要だろう。いい加減なネット薬局が乱立するようではいけない。ネット調剤を解禁するなら、ネット薬局においても患者が十分なサービスを受けられることが保障されていなければならないと思う。初めから結論ありきのようだったOTC薬のネット販売のようにならぬよう、どうかきっちりとした議論をしてもらいたいものである。

 ネット調剤が海外の幾つかの国で既に行われていると書いたが、ではそのような国でネット薬局がリアルな薬局を脅かす存在になっているかというと、そうでもないらしい。やはり、ネットで投薬を受けることに不安を感じる患者や、薬剤師との対面のコミュニケーションを求める患者が少なからずいるのだろう。

 結局のところ、ネットだろうとリアルだろうと、現場のわれわれの仕事は決まっている。OTC薬、医療用医薬品を問わず、その販売に責任を持つということである。仮にネット調剤が解禁されても、患者との信頼関係を大切にし、店舗で直接会ってみたいと思われる薬剤師を目指そうではないか。(みち)

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