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DIクイズ5(A)
DIクイズ5:(A)高血圧の妊婦が心配する下剤
日経DI2013年7月号

2013/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年7月号 No.189

出題と解答 : 今泉 真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)

A1

(2)20週以降

A1

(2)服用してもよい。

 今回Kさんに処方されたニフェジピン徐放錠(商品名アダラートCR他)は、高血圧や狭心症の治療に広く用いられているカルシウム拮抗薬である。ニフェジピンは以前、動物実験により催奇形性および胎児毒性が報告されているとして、妊娠している女性や妊娠の可能性がある女性には禁忌とされていた。

 ところが2011年6月の使用上の注意の改訂により、禁忌の項の妊婦への投与が、「妊娠20週未満の妊婦」に変更された。強い降圧作用を持つことから、治療上の有益性が危険性を上回った場合に限定されるものの、妊娠による高血圧に対しニフェジピンを使用することが可能になった。

 また同時期の添付文書改訂で、相互作用の「併用注意」の項に、新たに硫酸マグネシウム水和物の注射剤が加えられた。硫酸マグネシウムは便秘や胆石の治療にも用いられるが、注射剤は低マグネシウム血症におけるマグネシウムの補給などに用いる。また、硫酸マグネシウム水和物とブドウ糖を含有する注射剤(マグセント他)は、切迫早産における子宮収縮の抑制や、子癇(意識を喪失し全身の痙攣を繰り返す、妊娠高血圧症候群のうち最も重症な症状の一つ)の治療に使用する。

 さて、ニフェジピンは子宮平滑筋の収縮抑制作用があるため、適応外ではあるが切迫早産の治療でも使用されている。「以前、流産をしたときにアダラートを出された」というKさんの記憶は正しいと推察される。

 硫酸マグネシウムとニフェジピンはどちらも、カルシウムチャネルの遮断作用を持つ。ニフェジピンは遅い内向きカルシウム電流を抑制し、細胞外カルシウムが細胞膜を通過して細胞内に流入するのを阻害する。マグネシウムも同じ機序でカルシウムチャネルを阻害するとされる。

 マグネシウムはさらに、アデニル酸シクラーゼを活性化し、環状アデノシン一リン酸(サイクリックAMP:cAMP)を増加させて細胞内カルシウムを減少させる。さらに細胞内マグネシウムは筋小胞体によるカルシウム取り込みを促進させるため、筋収縮に利用されるカルシウムが減少する。このような機序で、マグネシウムは神経筋伝達遮断薬の作用を増強することが報告されている。

 切迫早産の治療においては、ニフェジピンと硫酸マグネシウム水和物の注射剤を併用する場合もある。医師がニフェジピンについて「マグネシウムと組み合わせが悪い」と話したというのは、恐らく、両薬の併用で降圧作用や神経筋伝達遮断作用が増強するため、併用には細心の注意が必要であることを言ったものと思われる。

 ところで、Kさんが心配している下剤のマグミットは、酸化マグネシウム製剤である。酸化マグネシウムは硫酸マグネシウムとは異なり、注射剤として子宮収縮抑制に使用されることはなく、ニフェジピンとの相互作用も明記されていない。そのためニフェジピンとの併用に問題はないと考えられるが、妊婦が下剤を用いるのは慎重にすべきで、使い過ぎないよう指導した方がよいだろう。

こんな服薬指導を

イラスト:山田 歩

 このアダラートCRというお薬は、成分をゆっくりと放出して血圧を下げる薬です。妊娠中の高血圧に悩む方は多いのですが、このお薬はKさんの妊娠が安定期に入ったので処方されています。これと同じ成分の薬は、確かに早産の予防にも使われることがあります。また、硫酸マグネシウムという注射の薬も子宮の収縮を抑えるために使われ、この2つの薬を一緒に使用するときは、注意を要します。

 今飲んでおられるマグミットという下剤には、確かにマグネシウムが含まれています。でもこちらは酸化マグネシウムという薬で、早産予防の硫酸マグネシウムとは全く違うものです。アダラートとの飲み合わせも、特に問題ありません。でも、妊娠中は下剤の使用は慎重にして、飲み過ぎないようにしてください。

参考文献
1)Br J Obstet Gynaecol. 1994;101:262-3.
*本クイズは、書籍『日経DIクイズ14』からの再掲載です。

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