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DIクイズ4(A)
DIクイズ4:(A)インスリンがトレシーバに変更された理由
日経DI2013年7月号

2013/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年7月号 No.189

出題と解答 : 川原 弘明
(株式会社コム・メディカル[新潟県三条市])

A1

(3)低血糖を繰り返すと、昏睡などの中枢性低血糖症状が急に表れやすくなる。
(4)低血糖は認知症発症の危険因子の一つである。

A1

(2)夜間低血糖を起こしにくい。

 インスリン療法を行う上で、低血糖の回避は重要な課題である。低血糖は患者の生活の質(QOL)を低下させるだけでなく、心血管疾患や認知症のリスク因子であることを示す報告もある(参考文献1、2)。

 血糖値が低くなると、まず交感神経が活性化され、グルカゴンやアドレナリンといったインスリン拮抗ホルモンの分泌が亢進する。これにより糖新生が促され、血糖値が上昇する方向に向かう。それと同時に、発汗や動悸、振戦、空腹感などの交感神経症状が生じる。

 血糖値の低下が進むと、不機嫌さ、眠気、めまいなどの精神症状が表れる。さらに低下すれば意識消失や昏睡、痙攣といった重篤な中枢神経症状が出現する。低血糖症状を呈する血糖値は個人によって様々だが、一般に50~60mg/dL以下で交感神経症状が、30mg/dL未満で中枢神経症状が表れるといわれる。

 低血糖を繰り返すと、交感神経症状発現の閾値が低下してしまい、自覚症状が出ないまま中枢神経症状を呈することがある(無自覚低血糖)。無自覚低血糖の改善には低血糖発作を防ぐしかなく、低血糖を3週間起こさずにいるとアドレナリン反応性が改善するとの報告がある。

 また、夜間睡眠時に患者が気づかないまま低血糖に陥っていることもある(夜間低血糖)。夜間低血糖が疑われる症状には、起床時の頭痛、多量の寝汗、睡眠の質の低下などがあるが、判別には持続血糖モニター(CGM)などが必要である。Dさんは症状から夜間低血糖が疑われ、検査入院で発作が確認されたのだろう。

 インスリンデグルデク(商品名トレシーバ)への処方変更には、夜間低血糖を防ぐ意図がうかがえる。デグルデクは、インスリングラルギン(ランタス)、インスリンデテミル(レベミル)と同様に、1日1回の投与で基礎インスリンを補充する。作用持続時間は42時間を超え、グラルギンやデテミルより長時間効くとされる。

 グラルギンと比較した場合のデグルデクの大きな特徴は、夜間低血糖を起こしにくいことである。1型糖尿病患者および2型糖尿病患者を対象とした第3相臨床試験で、グラルギンに比べて夜間低血糖発作回数が有意に減少したと報告されている(参考文献3、4)。一方、空腹時血糖値およびHbA1cに有意差は見られなかった。

 夜間低血糖が少ない理由としては、デグルデクはグラルギンと比べて効き目がフラットで、長時間効くためと考えられている(参考文献4)。臨床試験では、デグルデクの個体内変動係数(CV)がグラルギンの約4分の1で、日によって効き目に違いが出にくいことが示されている。

 このほか、デグルデクはインスリンを打つ時間がバラバラになっても、定時に打つのと効き目が変わらないこと(非劣性)が、臨床試験で確認されている。このため、インスリンを打つのを忘れても、気づいた時点で打つことができ、次の注射まで8時間以上空ければよい。

 デグルデクの注射に用いるトレシーバフレックスタッチは、これまでのインスリン注射器とは異なり、シリンジポンプ部にバネが内蔵されていて、少しの力でボタンを押すだけで薬液が射出する仕組みになっている。このため、針を刺す前に誤ってボタンを押さないよう注意が必要である。薬剤が完全に体内に入るよう、ボタンを押してから6秒以上針を刺したままにする点は従来と同じである。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 先生はDさんの症状を、夜間低血糖のせいだとおっしゃっていませんでしたか。夜間低血糖は、起きた時に寝汗や頭痛などの症状が表れやすいのが特徴です。今回出されたトレシーバは、ランタスよりも夜間低血糖を起こしにくいというデータがありますので、処方が変更になったのでしょう。

 トレシーバの注射器はバネ式で、ランタスとは違い注入ボタンを軽く押すだけで薬剤が出ます。注射前に誤って押さないよう気を付けてください。注射してボタンを押したら、6秒以上そのままにしてくださいね。注射の打ち忘れに気づいたらすぐに打っていいですが、次の注射は8時間以上空けてください。

参考文献
1)Diabetes Care.2010;33:1389-94.
2)JAMA.2009;301:1565-72.
3)Lancet.2012;379:1489-97.
4)Lancet.2012;379:1498-507.

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