DI Onlineのロゴ画像

DIクイズ2(A)
DIクイズ2:(A) 心房細動の薬が異なる夫婦
日経DI2013年7月号

2013/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年7月号 No.189

出題と解答 :笹川 大介
(はらだ薬局[鹿児島県薩摩川内市])

A1

ダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(商品名プラザキサ)は、肝障害患者への投与に関して制限がないのに対し、リバーロキサバン(イグザレルト)は、中等度以上の肝障害のある患者には禁忌であるため。

 心房細動は、不規則な電気興奮により心房が細かく震えて、まとまった収縮ができなくなる疾患である。長く続くと、心房内に血栓が生じ、脳梗塞が起こりやすくなる。同症による脳梗塞の発症予防には、長らくワルファリンカリウム(商品名ワーファリン他)が用いられてきたが、近年、直接トロンビン阻害薬のダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(プラザキサ)と、血液凝固第Xa因子阻害薬のリバーロキサバン(イグザレルト)およびアピキサバン(エリキュース)が加わった。

 これらの新規抗凝固薬は全て、患者の腎機能に応じた用量調節が必要である。一方、肝障害のある患者への投与に関しては、薬剤によって対応が異なる。

 お薬手帳によると、Hさんには消化器内科からウルソデオキシコール酸(ウルソ他)、ラクツロース製剤(ラクツロース・シロップ他)、肝不全用経口栄養剤のアミノレバンENなどが処方されており、Hさんは肝疾患を有していると推察される。

 肝障害患者へのダビガトランの使用は、添付文書上、禁忌や慎重投与ではない。国外のデータによると、中等度の肝障害患者にダビガトラン(エテキシラートとして150mg)を単回投与したときの総ダビガトランの血中濃度曲線下面積(AUC)は、健康被験者と同程度だった。

 一方、リバーロキサバンは、中等度以上の肝障害(Child-Pugh分類BまたはCに相当)のある患者への投与は禁忌である。これは、国外臨床薬理試験において、中等度肝障害を有する肝硬変患者(Child-Pugh B)で血漿中リバーロキサバン濃度が有意に上昇し(AUCで2倍以上)、出血リスクが増大する可能性が示唆されたためである。

 Child-Pugh分類は、脳症や腹水の有無など5項目の点数を合計し、肝障害の程度を評価する方法である(表)。薬局では、これらの項目の点数化は容易ではない。しかし、処方内容から肝障害の程度をおおよそ推測することは可能である。

表 Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類

5項目の点数を合計し、5~6点はA、7~9点はB、10~15 点はCと分類する。

 Hさんの場合、利尿薬のスピロノラクトン(アルダクトンA)が処方されていることから腹水の存在が疑われるほか、アミノレバンENの適応が「肝性脳症を伴う慢性肝不全患者の栄養状態の改善」であることから、Hさんが中等度以上の肝障害を有している可能性は十分ある。これらを踏まえて、処方医はリバーロキサバンへの変更を断念したと考えられる。

 なお、アピキサバンに関しては、肝障害患者への投与は禁忌ではないが、重度の肝障害がある患者に対しては使用経験がないため、慎重投与となっている。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 お薬手帳を拝見しました。Hさんは、肝臓のご病気で別の病院にも通院しているのですね。確かに奥様の心房細動のお薬は1日1回で飲みやすいと思いますが、Hさんのように肝臓の病気がある場合、強く効き過ぎて出血しやすくなる恐れがあるため、服用できません。そのため先生は、肝臓の病気があっても服用できるこちらのカプセル剤を、Hさんに処方しているのだと思います。飲みにくいかもしれませんが、脳梗塞を防ぐためにきちんと服用してください。

 Hさんも奥様も、もし血尿が出たり、歯茎から出血してなかなか止まらない場合は、すぐに先生にご連絡ください。また、肝臓のお薬も含め、飲み忘れや飲み間違いにお困りでしたら、私ども薬剤師にご相談ください。

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ