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Report:薬剤師塾
薬剤師の行動が未来を築く
日経DI2013年7月号

2013/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年7月号 No.189

愛を持って患者に接し不安や疑問に対処せよ/ 笹嶋 勝氏
日本メディカルシステム 笹嶋 勝氏
患者の幸せのため、愛を持って最善を尽くすことが薬剤師の使命です。

 DIオンラインで『クスリの鉄則』を執筆してきた日本メディカルシステム(東京都中央区)DI・安全管理担当の笹嶋勝氏は、「日経DIクイズの活用術」と題して講演した。

 笹嶋氏は、昭和大学病院薬剤部に勤務中の1998年に、日経DI創刊準備号のクイズの執筆に携わった経緯を紹介。「当時は医薬分業が緒に就いたばかりで、病院での標準的な処方を知ってもらうことをコンセプトにしていた」と振り返った。

 2002年ごろから現在にかけては、適応外処方を含むまれな処方も題材にしてきた。「今後は、癌化学療法をはじめ院内と院外の両方で治療が行われる症例や、薬剤選択や臨床検査値が関わる症例を題材にしていきたい」と話すとともに、「先輩が積み重ねてきた経験こそ、後輩にとって一番の教材」と、卒後教育の重要性を訴えた。

 「薬はきちんと使わなければ、幾らエビデンスがあっても効果を発揮しない」と笹嶋氏。薬剤師に求められるのは処方解析だけでなく、愛を持って患者に接することで、背景にある不安感や薬物療法上の問題点などを見いだすことだと強調した。

デカルトに習うユニークな薬物動態学/ 菅野 彊氏
どんぐり工房 菅野 彊氏
失敗を恐れずチャレンジしてください!

 どんぐり工房(盛岡市)代表の菅野彊氏は、「デカルトが薬物動態学を教えたらどうなるか?」というタイトルで講演した。

 ルネ・デカルトは「我思う、ゆえに我あり」という言葉で有名な17世紀のフランスの哲学者。菅野氏は、デカルトの著書『方法序説』に示されている4つの規則(明証・分析・総合・枚挙)に沿って、薬物動態学の考え方を明快に解説した。

 同氏は、これらの4つの規則を薬剤師の業務の流れにも当てはめ、処方箋を受け取ったら、疑いを持って見つめ(明証)、詳細に鑑査し(分析)、患者背景や他科処方などを考慮して服薬指導し(総合)、投薬後のモニタリングとフォロー(枚挙)まで行うことが求められると説いた。

薬学的知識を身に付け存在価値を高めよう/ 杉山 正康氏
杉山薬局 杉山 正康氏
深い知識を身に付け、薬剤師にしかできないことを実践してください。

 「存在価値のある薬剤師を目指して」というテーマで講演したのは、杉山薬局(福岡県嘉麻市)代表取締役の杉山正康氏。

 同氏は、13年間の研究者生活を経て、薬局薬剤師に転身した際の心境について、「あまりにそっけない患者の態度や、指示通りに薬を渡すことだけを望む医師の姿勢に、『薬剤師はただの事務的な存在でしかないのか』とがくぜんとした」と振り返った。

 その上で、薬剤師の評価が低い背景として、薬学的知識と服薬指導能力の不足を指摘。「卒後教育の教科書を作らなければ」という強い思いが、『薬の相互作用としくみ 全面改訂版』や『服薬指導のツボ 虎の巻』(いずれも弊社刊)を執筆するモチベーションになったと語った。

 杉山氏は、「患者や医師に対し、『万一、薬によって問題が起きた場合は、私が全ての責任を取る』と言い切れるほどの高い学術レベルを維持するために、若手から指導者まで、互いに切磋琢磨して勉学に励んでほしい」とエールを送った。

リスクを適切に評価し重大なエラーを防ぐ/ 古川 裕之氏
山口大学病院 古川 裕之氏
色々な所に出掛け、外の世界にたくさん触れるといいですよ。

 山口大学医学部附属病院薬剤部長の古川裕之氏は、「言い訳無用のメディケーションエラー」と題し、これからの医療安全について、報道事例を交えながら講演した。

 古川氏は、「仕事をする上でエラーは付き物」とし、重大なエラーを起こさないためのリスク評価と危機意識の共有、エラー発生後の適切な対応により、被害を最小限に抑える努力が重要と強調した。

 また、「最近、抗癌剤の投与後の経過観察を怠ったことによる医療過誤事件の報告が多い印象」と語り、副作用やアナフィラキシーといった、予測可能な健康被害を回避するためには、初期症状を患者自身に知っておいてもらうことも大切だと説明。「患者の体内に薬が入ってから消失するまでの継続した監視が、われわれ薬剤師の仕事」と締めくくった。

在宅医療に限らない地域における役割とは/ 川添 哲嗣氏
くろしお薬局 川添 哲嗣氏
よく遊び、よく学び、よく働きましょう!

 くろしお薬局(高知市)代表取締役副社長の川添哲嗣氏は、「在宅医療より地域医療、フィジカルアセスメントよりヘルスアセスメント」と題して講演した。

 川添氏は、メーカー勤務、病院薬剤師を経て、1998年に薬局薬剤師に至るまでの経緯と当時の心境を述べた。次第に在宅医療にも目覚め、「医師や看護師、介護支援専門員らと連携するうちに、地域は一つの大きな病棟だと思うようになった」と語った。

 一方で、川添氏は、「在宅医療は地域医療の中の一つの要素にすぎない」とし、健康に関わる身体的、精神的、社会的因子へのトータルアセスメントが必要だと話した。

 最後に川添氏は、いらはら診療所(千葉県松戸市)在宅医療部長の和田忠志氏の言葉を引用しながら、「訪問薬剤管理指導は、長期にわたって築き上げられた『かかりつけ薬剤師』としての活動の延長線上にあるもの」と説明。薬局薬剤師も、地域の中で他職種と互いに連携しながら、中心にある患者の人生を支えていくことが大切と訴えた。

薬学的知識をフル活用し投薬後もフォローを/ 狭間 研至氏
ファルメディコ 狭間 研至氏
自信と自負を持って、教科書のない道を歩んでほしい。

 DIオンラインで『Road to 薬剤師3.0』を連載中のファルメディコ(大阪市北区)代表取締役の狭間研至氏は、「次世代の薬剤師に求められるZ軸」というテーマで講演した。

 狭間氏は、「近年、調剤業務の機械化やインターネットの普及、少子高齢化、医薬分業の成熟などにより、薬局や薬学教育の現場には、薬剤師の職能や薬局経営の行方に対して不安感が広がっている」と指摘。一般用医薬品(OTC薬)や生活雑貨を中心に扱っていた従来の薬局を第1世代とすれば、いわゆる「調剤薬局」は第2世代であり、現在は、超高齢社会における地域医療に対応する第3世代への過渡期であると説明した。

 同氏は、薬剤師業務のPDCAサイクルとして、処方鑑査(Plan)、調剤・服薬指導(Do)、前回処方の妥当性評価(Check)、次回処方への提案・介入(Act)を挙げ、過去の記録に加え、未来の予測という軸を持つことを提案。「薬物動態学や薬理学、製剤学といった薬剤師ならではの専門知識をフルに活用し、個々の患者に合ったファーマシューティカルケアを提供していくことが求められる」と結んだ。

薬剤師はOTC薬によるセルフケアのリーダーに/ 泉澤 恵氏
日本大学薬学部 泉澤 恵氏
ジェネラリストであると同時に、核となる専門性も身に付けてください。

 日本大学薬学部専任講師の泉澤恵氏は、「OTC医薬品とどう向き合う」というタイトルで、薬剤師に求められる役割やスキルについて講演した。

 泉澤氏はまず、OTC薬を取り巻く社会情勢として、予防医療の拡大、スイッチOTC薬の増加、インターネット販売、セルフチェックを介した薬剤師のトリアージ機能の確立、医師との共同医療(collaborative care)などをキーワードに挙げた。

 続いて泉澤氏は、脂質異常症治療薬を例に、日本と英国のスイッチOTC薬の位置付けや添付文書の内容などを対比しながら、医師との共同医療の実践や適正使用のために求められる考え方を整理した。

 また、医療者と患者の副作用リスクの捉え方(リスクコミュニケーション)に関する研究成果についても紹介。「薬剤師は薬物治療のパートナーとして、個々の患者の特性を見極めた上で服薬指導や生活習慣の改善を指導していくことが必要」と締めくくった。

* * * * *

 

 第2部のトークセッションでは、会場から寄せられた質問に対し、各講師が自身の経験談を交えながら回答した。

 「指導してくれる上司や先輩が周りにいない場合、勉強に対するモチベーションをどのように保っていけばよいか」という質問に対して、杉山氏は、「数人の仲間を集めて、何らかの課題を設定することで、勉強する環境をつくってみてはどうか」とアドバイス。狭間氏は、「自分のスキルアップのために転職するという話をよく耳にするが、あくまで患者さんを助けたいという目的があって、その手段として知識や技能の向上に努めてほしい」と話した。

 OTC薬に対する薬剤師の取り組みが評価されにくい現状について、泉澤氏は、「多くの患者が、OTC薬の銘柄を自分で選んで購入しているのが現状。このような“指名買い”の患者に対しては、『なぜこの薬をお求めになるのですか』と尋ねるなど、一歩踏み込んだフォローを試み、治療の目的をはっきりさせることが必要では」と提案した。

 最後に、それぞれの講師が、若手薬剤師へのメッセージを述べた。古川氏は、「外の世界にたくさん触れてほしい。他人とのレベルや役割の違いを自覚することで、自分のすべきことが見えてくるはず」とエールを送った。

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