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特集:
症状の進行に合わせて麻薬を注射薬に変更
日経DI2013年7月号

2013/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年7月号 No.189

Nさん:65歳、男性。独居。要介護5。大腸癌。肝臓と肺に転移。人工肛門造設。

 Nさん(65歳、男性)は、大腸癌で、肝臓と肺に転移がある患者だ。昨年冬に、近隣の在宅緩和ケア専門診療所併設の訪問看護ステーションから連絡を受けて、訪問を開始した。

 訪問開始時は腹部に激しい痛みを訴えていたが、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)のロキソニン(ロキソプロフェンナトリウム水和物)60mg/日と、フェンタニル経皮吸収型製剤のデュロテップMTパッチ12.6mg/3日により、痛みがない状態が維持できていた。

 しかし、今年4月に入り状態が悪化。4月上旬に、胸水がたまり呼吸苦が出現。症状を緩和するために、オキシコンチン(オキシコドン塩酸塩水和物)120mg/日を追加した。さらに5月中旬にはオキシコンチンが160mg/日に、デュロテップMTパッチが16.8mg/3日に増量された。

 この時点で、訪問看護ステーションからファクスがあり、Nさんは呼吸苦により内服が難しくなってきているので、医師はもうすぐ注射薬に切り替えるだろうとの情報を得た。

写真4 当薬局でそろえている各種麻薬製剤

写真:秋元 忍

経口モルヒネ換算で計算

 注射薬や医療材料の在庫を確認して待っていると、まもなく診療所の医師から薬局に電話があり、モルヒネ塩酸塩の注射薬を使用する場合の用量設定について相談を受けた。

 そこでまず、Nさんが使用しているデュロテップMTパッチ16.8mg/3日とオキシコンチン160mg/日は、経口モルヒネでどれくらいの量に相当するのかを、各種麻薬の換算表を参考に計算した。すると、デュロテップMTパッチ16.8mg/3日は経口モルヒネ240mg/日に、オキシコンチン160mg/日も経口モルヒネ240mg/日に相当することが分かった。Nさんは合わせて480mg/日の経口モルヒネ相当の麻薬を使っていたと考えることができた。

 次に、これを注射薬で投与する場合の投与量を計算した。

 一般に、モルヒネ塩酸塩の経口薬を皮下注射に変更する場合には、2分の1から3分の1程度の量で同等の効果が得られるとされている。そこでまずは過量投与とならないように480×1/3=160mg/日と少なめの量を医師に提案した。

 こうして5月末には、持続皮下注用のバルーン式のインフューザーポンプを用いてモルヒネ塩酸塩の注射薬の投与を開始した。Nさんの場合は、投与量が160mg/日になるように、流量0.5mL/時のポンプを選び、4%モルヒネ塩酸塩注射液200mg(5mL)を4管(合計20mL)に、生理食塩水40mLを混ぜて充填した。現在は、これを薬局で無菌調製して定期的に届け、看護師が訪問した際に交換している。

 癌患者が自宅で最期を迎えたいと望んでも、経口薬や貼付薬で疼痛緩和ができなくなったら再入院と考える医療者は多い。しかし、患者の思いを実現させるためには、注射薬の提供などができる専門性の高い薬局が増えることも重要と感じている。(談)

フロンティア薬局浅草橋店
(東京都台東区)

薬剤師数・・・常勤6人、パート1人
主な在宅担当薬剤師・・・5人
処方箋枚数・・・480枚/月
うち在宅の処方箋枚数・・・340枚/月
在宅訪問薬剤管理指導料、居宅療養管理指導費の算定患者数・・・200人/月
主な訪問時間・・・開局時間中いつでも
無菌調剤室の有無・・・あり
麻薬の備蓄品目数・・・47品目

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