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Report:1回量処方
処方箋“1回量”併記が浸透中
日経DI2013年7月号

2013/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年7月号 No.189

 筑波大学附属病院では昨年12月から、内服薬処方箋の記載を新ルールに対応する方式に変更した。新ルールとは、薬剤の分量として「1回量」を1日量に併記するとともに、用法を日本医療情報学会が定めた「標準用法マスター」に準拠させるというもの。2010年1月に厚生労働省の検討会で定められた表記方法だ。

 同病院医療情報部長の大原信氏は、「オーダリングシステムの更新に伴い、新ルールの仕様に変更した。以前から記載を標準化したいと考えていたが、システムの仕様更新時にメーカーが新ルールに対応可能となっていたため、切り替えることができた」と語る。

 筑波大学附属病院のように、処方箋の新ルールに対応する医療機関が、ここ1~2年で増えつつある。オーダリングシステムメーカーなどでつくる保健医療福祉情報システム工業会(JAHIS)の相互運用性委員会委員長を務める下邨雅一氏は、「11年秋くらいから新ルールに切り替える病院が出始めた」と語る。順調にいけば、今後3年ほどの間に、新ルールに切り替える病院が全体の4割程度になる可能性もある。

メーカーが対応を開始
 新ルールが決められた経緯を簡単に説明しよう。処方箋の記載方法は従来、医療機関によってバラバラで、それに起因する医療事故やインシデントの発生が指摘されていた。例えば、「1日3回」を示す表記として「分3」や「×3」などが混在しており、「3錠 ×3」と記載されたために誤って3倍量の薬剤が交付されるミスなどが生じていた。

 このため、厚労省や関係機関は02年から、1回量の記載を含めた処方箋記載の標準化に向けて動き始めた(表1)。09年5月に厚労省は「内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会」を開催し、1回量の併記だけでなく用法用語の統一を盛り込んだ報告書を10年1月にまとめた。その報告書を受け、業界団体や学会が記載の標準化を進めるためのルール作りを開始。11年秋あたりから、大手のオーダリングシステムメーカーが新ルールに対応し始めたというわけだ。

表1 処方箋の記載方法変更の経緯と将来展望

*1 内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会
*2 保健医療福祉情報システム工業会

 新ルールによる処方箋の記載方法の変更点をまとめたのが表2だ。最も大きく変わるのは、前述のように薬剤の分量として1回量と1日量を併記すること。1回量だけにせず、従来と同様に1日量も記載することで、情報伝達ミスが起きないよう配慮されている。

表2 内服薬処方箋記載の新ルール
(『内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報告書』より編集部まとめ

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 用法も統一される。日本病院薬剤師会などが作成した「標準用法用語集(第1版)」を基に作られた、標準用法マスターが使用される。具体的には、「毎食後」が「朝昼夕食後」、「食間」は「食事2時間後」など、より正確な表記になる。ただ、こちらは1回量併記と比べてシステムのプログラムが複雑になるほか、用法記載を変えることに消極的な医療機関もあり、対応を後回しにするケースもあるようだ。

 このほか、不均等分割投与や休薬期間があるなど複雑な処方は、使用時点を日本語で明確に記載する。「薬名」には一般名または薬価基準に記載された医薬品名を記載し、散剤や液剤の分量は「製剤量」記載が基本となる。

薬局での混乱は起きず
 富士通(東京都港区)の医療システム事業部長でもある下邨氏は、「当社が対応して約1年半の間に、顧客病院の1割強が1回量併記に対応したシステムに変えた」と語る。

 病院のシステム更新は通常約5年ごとだが、仮にこのスピードでいけば、残り3年半の間に約3割近くが、1回量併記に対応する計算になる。つまり16年末には4割程度の病院が、1回量併記に対応することもあり得る。

 一方、診療所では対応がほとんど進んでいない。診療所向けにレセプトソフト「オルカ」を提供している日本医師会総合政策研究機構(日医総研)の担当者は、「処方箋の記載を変える前に、医療事務員の教育が必要だ」とのスタンスを取る。これに対して医療事務員向けの教材を販売するエヌアイメディカルオフィス(東京都中央区)代表取締役社長の伊藤典子氏は、「14年の診療報酬改定後に出す教材から、新ルールに対応させる予定」と語っている。こうした環境が整っていけば、診療所向けのシステムもメーカーなどが対応を加速し、普及も進むだろう。

 薬局では今後しばらくの間、新ルールに対応した処方箋と従来の処方箋が混在することになる。筑波大学附属病院の近隣にある今川薬局つくば天久保店(茨城県つくば市)は、同病院からの処方箋が全体の1割ほどを占める。同薬局管理薬剤師の藤枝正輝氏は「1回量併記の処方箋が混在しているが、今まで通り1日量が記載されているので、現場で特に混乱は起きていない」と語る。

 新ルールの処方箋が今後主流になっていくとみられることから、本誌も7月号から、記事に掲載する処方箋の表記を新ルールに切り替えた。本稿と合わせて参考にしてほしい。

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