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特集:
キット製剤での処方を薬剤師から提案
日経DI2013年7月号

2013/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年7月号 No.189

Aさん:85歳、男性。要介護5。妻と2人暮らし。外傷性急性硬膜下血腫による右麻痺、左痙性麻痺。胃瘻など。

 「夫がもうすぐ退院するので、またお願いしたい」。ある日、当薬局が5年前から訪問しているAさん(85歳、男性)の奥さんから連絡があった。

 Aさんは、外傷性急性硬膜下血腫による後遺症があり、胃瘻で栄養を摂取していた。しかし、胃の内容物が逆流して誤嚥性肺炎を繰り返すことから、いったん胃瘻を中止して、中心静脈栄養に変更することが決まった。

 当薬局には無菌調製の設備がないため、Aさんの在宅担当医は、中心静脈栄養に移行後は、当薬局がAさんを担当するのは難しいと思っていたようだ。しかし、しばらくして冒頭のように家族から、「病院の診療明細書をファクスで送るので対応してほしい」と電話があった。

 家族によると、内服薬は、引き続き胃瘻から服用するとのことで、輸液に注射薬を追加するといった無菌調製は必要ないことが確認できた。そこで、診療明細書の組成を見て、キット製剤で対応できるか調べてみた。

 Aさんには、高カロリー輸液として、基本液のハイカリックNC-L輸液(700mL)と総合アミノ酸製剤のアミパレン輸液(200mL袋)に加え、総合ビタミン剤のビタジェクト注と微量元素製剤のメドレニック注が投与されていた。

 輸液の基礎として、糖とアミノ酸は、非蛋白エネルギー/窒素(N)比で、150~200程度にすると最も効率よく吸収されると考えられている。

 Aさんは病院で、総カロリー480kcalのハイカリックNC-L輸液(700mL)に対し、総窒素含有量が3.13gのアミパレン輸液(200mL)が投与されていた。これは、非蛋白エネルギー/窒素(N)比で153.4(480÷3.13≒153.35)と、一般的な糖とアミノ酸の比率だ。

 さらに、病院での輸液には、ビタミン剤と微量元素も入っていたことを考慮し、ブドウ糖、電解質、アミノ酸、ビタミン、微量元素が含まれており、在宅現場で混合調製を無菌的に行えるキット製剤のエルネオパ輸液で対応できると考えた。

 Aさんが病院で投与されていたハイカリックNC-L輸液(700mL)の総カロリーは480kcal。これに近いカロリーのエルネオパ輸液の1号1000mL(総カロリー560kcal、非蛋白熱量480kcal、非蛋白エネルギー/窒素〔N〕比153)への処方変更をAさんの在宅担当医に提案したところ、スムーズに処方を変更してもらうことができた。こうして無菌調製なしでの対応が可能になり、当薬局で訪問を継続することになった。

 在宅医療を始めるのに、無菌調製ができないことがネックになるとの意見がある。しかし、輸液に関しては、腎機能低下や、薬が飲めず輸液経由での投薬が必要な場合などを除くと、キット製剤で対応できる患者が大半だ。

 無菌調製の設備がない薬局で、輸液の処方箋を受けた場合は、すぐに断らずに、自分の薬局で対応可能な処方が提案できないか検討してみるといいと思う。

Aさんの変更前の輸液と変更後の輸液

医療材料を手探りで準備

 無菌調製とともにネックになるのは、医療機器や医療材料の取り扱いだろう。家族からの情報によると、Aさんは自宅で中心静脈栄養を行うために、病院で完全皮下埋め込み式ポート・カテーテル(CVポート)を造設し、携帯型輸液ポンプ(写真2)を使って療養する予定とのことだった。

写真2 携帯型輸液ポンプ

商品名カフティポンプS、製造販売テルモ

 しかし、当薬局ではこれまで、携帯型輸液ポンプの患者を受け入れた経験がなかった。そのため、使い方はもちろんのこと、ポンプのレンタルや、ポート用の針やチューブの交換は誰がするのか、ポンプが壊れたときの対応はどうするのかなどが、一切分からなかった。

 そこで、Aさんが入院している病院の看護師に連絡を取ったところ、輸液ポンプの使い方の指導は、Aさんの妻が入院中に病院で習うことが分かった。また、輸液ポンプは在宅担当医がAさんに貸し出し、チューブやポート用の針は、医師や訪問看護師が週1回、訪問時に交換することも分かった。

 Aさんの在宅担当医と電話やファクスで何度か打ち合わせをし、医療材料は当店がそろえて輸液製剤と一緒にAさんに届けることになった。

 在宅担当医は私の問い合わせに対し協力的で、どんな医療材料が必要か分かるように、参考として輸液ポンプを使用している別の患者の資料をファクスで送ってくれた。

 こうして、輸液ポンプを使う患者には、輸液製剤の他に、(1)輸液バッグとポートをつなぐ管(チューブセット、写真3)、(2)チューブとポートを接続するための針、(3)血液の凝固によるポートの閉塞を防ぐために使用するヘパリンロック用シリンジ(必要に応じて)などを薬局から届けることになった。

写真3 輸液ポンプ用のチューブセット

商品名テルフュージョンポンプ用チューブセット(フィルター付き)、製造販売テルモ

 さらに、ポンプ用の医療材料を扱う卸に、発注から納品までの日数を確認。また、機械に不具合が出た場合に対応できるように、輸液ポンプのメーカーの担当者から説明を受けた。

 こうして準備万端で患者の退院を迎えることができた。現在は、退院後、間もないため週に1度訪問し、内服薬と輸液、針、チューブセット、必要に応じてヘパリンロック用シリンジを届けている。

 医療機器や医療材料などの扱いは、経験がないと敷居が高いと感じてしまう。私も当初は、薬局で何を準備すればいいのかが分からず不安だったが、病院の看護師や在宅担当医、医療機器メーカーなどに積極的に問い合わせることで、準備することができた。次に同じような患者が来たら、対応できるという自信もついた。(談)

サニー薬局
(東京都板橋区)

薬剤師数・・・常勤5人、パート1人
在宅担当薬剤師・・・3人
処方箋枚数・・・1000枚/月
うち在宅の処方箋枚数・・・600枚/月
在宅訪問薬剤管理指導料、居宅療養管理指導費の算定患者数・・・300人/月
主な訪問時間・・・日中
無菌調剤室の有無・・・なし

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