DI Onlineのロゴ画像

特集:
服用時点を減らし重要な薬を確実に
日経DI2013年7月号

2013/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年7月号 No.189

Mさん:84歳、女性。独居。後天性血友病、深部静脈血栓症、変形性腰椎症、認知症。薬は自分で管理したい。

 Mさん(84歳、女性)は、後天性血友病や認知症などのため、N病院の3科を外来受診していた。血友病の治療のための経口ステロイドのプレドニン(プレドニゾロン)をはじめ、多種類の薬が処方されていたが(処方箋1)、正しく服薬できていなかったため、同院の地域医療連携室を通じて訪問服薬指導を依頼された。

 血液内科の医師は、経口ステロイドの副作用と思われる精神症状がMさんに出ていたことから、経口ステロイドを減量したいと考えていたようだが、認知機能が低下して独居であるMさんの服薬状況を把握できずにいた。薬剤師が関わることによって、服薬状況を把握した上で、処方量を決めたいと考えていたようだ。

 このようなケースでは、まず残薬を確認する必要がある。しかし、初めて訪問した日、Mさんからは「薬は、自分で管理できていますから」と一言。人の世話になるのは恥ずかしいと考えている様子で、薬には一切、触らせてくれなかった。「お薬の管理はどのようにされていますか」といった言葉を掛けながら、やっとの思いで見せてもらったところ、プリンの容器のようなカップ4つに、朝、昼、夕、寝る前の薬1回分ずつを入れ、残りは全てビニール袋に入れていた。N病院の受診間隔である1カ月分よりも多い量の薬が残っており、しかも現在は処方されていない薬まで交じっている。とても正確に服薬できているとは思えない状況だった。

 これは、一包化するなりの工夫が必要だと感じたが、Mさんは「私はきちんと飲めている」の一点張り。本人のプライドを傷つけないように、「薬を変更する必要があるが、前の薬があるとできないので、預からせてほしい」といった説明を何度も繰り返すことで、ようやく残薬を全て回収できた。

就寝前の薬は本人が管理

 確実に服薬してもらうには、服用時点を極力減らすことが大切だ。Mさんの処方は、当初、服用時点が1日4回で、加えて、週1回服用のビスホスホネートのフォサマック(アレンドロン酸ナトリウム)があった。このうち、昼食後の薬には、重要な薬が含まれていない。さらに、Mさんに生活スタイルを聞いたところ、夕食後と就寝前の時間がほとんど空いていないことが分かった。そこで、昼食後の薬を中止してもらい、夕食後の薬を就寝前に統一できるのではないかと考えた。

 さらに、他剤と同時に摂取できず、服薬方法が複雑なフォサマックは、エビスタ(ラロキシフェン塩酸塩)など他の骨粗鬆治療薬に変えた方が、コンプライアンスが向上すると考えた。

 病院の地域医療連携室から3科の処方医に連絡を取ってもらい、Mさんの状況を知らせ、こちらの提案を伝えたところ、医師たちはすんなり提案を受け入れてくれた。かくして、服用時点を、朝食後と就寝前の2回にすることができた(処方箋2)。

 特に重要で、必ず服用してもらいたい経口ステロイドは、朝食後の服用だ。Mさんは、火曜、金曜、土曜にデイサービス、木曜に訪問看護を利用していた。そこで、朝の薬はデイサービスに届けておき、火曜、金曜、土曜日はデイサービスで、水曜と日曜の薬は前日にデイサービスで本人に手渡してもらうように手配した。木曜日の薬だけは、訪問看護師に飲ませてもらうようにした。

 Mさんの「薬は自分で管理したい」という気持ちを大切にして、夜の薬は自分で管理してもらうようにした。ただし、1カ月分の薬のうち、1週間分ずつ渡して、お薬ボックスに自分でセットしてもらい、服薬状況が確認できるようにした。

 当初は、デイサービスでMさんが「朝の薬は家で飲んできた」と言い張る場面なども見られたようだが徐々に慣れてきて、朝の薬はデイサービスで、夜は自宅で飲むという習慣ができた。夜の薬は、飲み忘れることがあるが、今のところ特に問題になっていない。

 規則正しく飲めるようになり、プレドニゾロンの処方量が2カ月後には7mg/日から6mg/日に、さらに翌月には5mg/日と減量できている。

 薬は自分で管理したいと考える患者は少なからずおり、そうした患者は薬剤師の介入を嫌がることが少なくない。Mさんも、薬についてとやかく言う薬剤師のことを今も快く思っていない様子だ。そのためMさん宅の訪問は少なめにして、その代わりにデイサービスに薬を届けた時に、Mさんに会って話をして身体状況を確認したり、看護師に服薬状況やデイサービスでの様子などを確認するようにしている。1週間分の夜の薬を、デイサービスの看護師から渡してもらうこともある。

 患者と既に信頼関係ができている人と連携して、薬を正しく飲んでもらうようコーディネートするのも、薬剤師の大切な仕事だと思う。(談)

画像のタップで拡大表示

ペンギン薬局
(長崎県長崎市)

薬剤師数・・・2人
在宅担当薬剤師・・・1人
担当在宅患者数・・・20人程度
在宅処方箋の発行医療機関・・・8カ所
主な訪問時間・・・基本は開局時間内だが休日、夜間も対応
無菌調剤室の有無・・・なし

  • 1
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

この記事を読んでいる人におすすめ