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特集:
麻痺の状態を考慮し飲みやすい方法を工夫
日経DI2013年7月号

2013/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年7月号 No.189

Tさん:73歳、男性。独居。脳梗塞による右片麻痺、高次脳機能障害。高血圧、逆流性食道炎、前立腺肥大症など。

 Tさん(73歳、男性)は数年前に脳梗塞を発症し、後遺症の右片麻痺や嚥下障害、高次脳機能障害があった。外出はほとんどせず、家の中でつえを使って生活していた。高次脳機能障害の影響もあって非常に気難しく、それまで訪問していた薬局が訪問を中止したため、在宅医から当薬局に訪問服薬指導の依頼があった。

睡眠薬だけはきっちり服用

 Tさんには、降圧薬や制吐薬、プロトンポンプ阻害薬、胃粘膜保護薬、排尿障害治療薬などが処方されていた。さらに、高次脳機能障害の症状を緩和するために、抗不安薬や睡眠薬なども処方されていた。

 Tさんの服薬指導での主な問題は、(1)薬に興味がない、(2)片麻痺により動作に制限がある─の2点だった。

 訪問開始時に、「睡眠薬と抗不安薬しか服用しておらず、治療に必要な薬が飲めていない」と医師やケアマネジャーから相談されていた。

 なぜ睡眠薬は服用できるのか。Tさんが服用しているのは睡眠導入薬のレンドルミン(一般名ブロチゾラム)だった。同薬は就寝前に服用し、服用するとすぐに眠くなるため、Tさんにとって目的や効果が明確。つまり、「いつ」「何の」薬を飲むのか分かるので、きちんと服用できるのではないかと私は考えた。

 その他の薬については、どうなのか。訪問時にTさんの様子を見ていると、興味がないというより、「何の薬がどこにあるのか分からない」のではないかという気がしてきた。

 というのは、Tさんは、睡眠薬と抗不安薬以外の薬は、プラスチック製のケースの引き出しに、服用時点ごとにまとめて入れていたが、引き出しの中は雑然としていたからだ。

 さらに、右片麻痺があるTさんが引き出しを片手で引くと、プラスチックのケース自体が動いて薬が取り出しにくそうだった。これも服用を妨げる原因の一つと考えられた。

 いつ、何の薬を飲むのかを分かりやすく、なおかつTさんが手に取りやすくするためにはどうすればいいか。

 当薬局では、在宅患者にはお薬カレンダーを使うことが多いが、Tさんは右手が使えず、左手でつえを使って室内を移動しているため、壁に貼ったカレンダーから薬を取ることはできない。そこで、テーブルに置いて使用し、「いつ飲むか」「何の薬か」で区分けして、飲むべき薬が一目で分かるお薬箱を作製した(写真1)。

写真1 Tさんのために作製したお薬箱(提供:森氏)

テーブルに置いて使用する。「いつ飲むか」「何の薬か」で区分けして、飲むべき薬が一目で分かるように工夫した。なお、既に指示通りに服用できていた睡眠薬と抗不安薬は、これまで通りの場所に置いた。

 Tさんはこのお薬箱を普段はソファ脇のテーブルに置き、服薬時はソファに座って動く左手で箱を太腿の上に置いて薬包を取り出し、口と手で包みを破って服用するようになった。

 お薬箱を導入後、Tさんの服薬状況は飛躍的に向上。訪問を重ねるうちに、「この薬が前立腺の薬か」「飲み忘れたが、どうしたらいいか」などの質問も受けるようになった。

 Tさんのケースで、私がやったことは非常にシンプルだ。しかし、患者が薬を飲むようになったことで、医師やケアマネジャーから薬剤師の存在意義を認めてもらい、サービス担当者会議に呼ばれたり、新たに患者の訪問依頼を受けたりするようになった。(談)

かもめ薬局平塚店
(神奈川県平塚市)

薬剤師数・・・常勤4人
主な在宅担当薬剤師・・・1人
処方箋枚数・・・1700枚/月
うち在宅の処方箋枚数・・・370枚/月
在宅訪問薬剤管理指導料、居宅療養管理指導費の算定患者数・・・100人/月
主な訪問時間・・・在宅担当薬剤師が日中に訪問
無菌調剤室の有無・・・なし

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