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CaseStudy
トミザワ薬局(本社:仙台市太白区)
日経DI2013年7月号

2013/07/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年7月号 No.189

 調剤薬局とみざわてん(仙台市太白区)をはじめ、宮城県内に20店舗を持つトミザワ薬局。同薬局の社内組織である薬歴委員会は、薬歴業務の一環として「サマリー」を試験的に導入した。

 サマリーとは、一人の患者の薬歴をまとめて読み返し、薬物療法上の問題点(プロブレム)を洗い出した上で、そのプロブレムに焦点を当てて経過を要約したもの(写真1の赤枠部分)。

写真1 トミザワ薬局の電子薬歴システムとサマリー作成時の5つのルール

赤枠で囲んだ部分がサマリー。薬歴を読み返してプロブレムを同定し、関連情報を抽出する。左側は2011年9月21日の処方内容の一部。

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 同薬局では、2006年から電子薬歴を使用し、POS(問題解決志向型システム)に基づくSOAP形式で薬歴を記載している。「長年にわたって来局している患者では、薬歴の量が膨大になり、処方鑑査や服薬指導の際、薬歴を読み込むのに時間が掛かってしまうことが問題だった」と、薬歴委員会のメンバーで調剤薬局とみざわてん管理薬剤師の武藤巧氏は話す。

 また、薬歴を指導に反映させようと心掛けていても、その時々の処方内容や患者の訴えに注意が向いてしまいがち。「どの薬剤師がいつ対応しても、患者の経過をきちんと踏まえて適切な指導を行えるようにと、サマリーを作成することにした」と、薬歴委員会メンバーでトミザワ薬局茂庭店(仙台市太白区)管理薬剤師の高橋政浩氏は説明する。

 病院勤務経験がある石山裕介氏(トミザワ薬局新田東店[仙台市宮城野区])は、「私が勤務していた病院では、医師や看護師が入院患者のサマリーを作成し、カンファレンスで明らかになった問題点を整理したり、治療方針の見直しを行っていた。これらを薬局でも応用しようと考えた」と言う。

 そこで薬歴委員会は、薬歴を活用したサマリーの作成方法を検討。議論を重ねた末、【1】プロブレムを1つに絞る、【2】時系列に要約する、【3】まとめをひと言で記載する、【4】薬歴のO情報として管理する、【5】サマリーの作成日時を申し送り事項に記録しておく─という5つのルールを設定した(写真1)。「最小限の労力で質の高いサマリーを作成できるよう、シンプルなルールにした」と高橋氏は説明する。

プロブレムを軸に情報を抽出
 前ページ写真1は、線維筋痛症のため経口ステロイドを使用している69歳男性Aさんの薬歴とサマリー(赤枠で囲んだ部分)だ。

 サマリー作成の最初のステップは、全ての薬歴を紙に印刷して読み返し、プロブレムを同定すること。Aさんへの処方は、直近の半年間に、ステロイドの用量や種類が何度も変更されていた。担当した武藤氏は、痛みの強さや全身性炎症の指標であるCRP(C反応性蛋白)の変化が、処方変更に連動していた点に着目。プロブレムが「ステロイドによる疼痛管理」であると考えた(【1】)。

 プロブレムを同定したら、再び薬歴を見直し、関連する情報をピックアップして時系列に並べていく(【2】)。Aさんには、初回来局時(09年10月28日)にプレドニゾロン12.5mg/日、レバミピド300mg/日、ゾルピデム酒石酸塩10mg/日が処方された。同日のS情報には、「体の痛み。整形から大学病院に行って、さらにX病院を紹介された。線維筋痛症ということで入院していた。今はだいぶ楽になった。もともと寝付きが悪いのでマイスリー(一般名ゾルピデム)を飲んでいる」と記されていた。

 それから約1年半にわたり、ステロイドの投与量は2.5mg/日まで漸減されたが、11年5月31日には痛みの増悪のため再び増量。同年7月27日のS情報には、「炎症反応など採血結果は芳しくなく、プレドニゾロン増量となりました。痛みもあります」と記されていた。さらに9月21日には、「症状は悪化しているわけではないが、CRPが下がらない」(S情報)として、プレドニゾロンよりも高い抗炎症効果を持つベタメタゾンが追加された。

 なお、初回の薬歴からは、線維筋痛症のほか、不眠もプロブレムの一つであることがうかがえるが、「1つのサマリーにつき、1つのプロブレムに絞って経過を要約することが重要」と石山氏。複数のプロブレムに同時に焦点を当てると、関連情報が散漫になり、“要約”の意味を成さなくなるからだ。1人の患者に対して、プロブレムごとに複数のサマリーを作ることもある。

薬歴システムの改変は不要
 サマリーの仕上げには、薬剤師による現状の評価と今後のモニタリングのプランを一言で書き添える(【3】)。Aさんのサマリーを作成した武藤氏は、「しばらくプレドニゾロンでコントロールしていたが、CRPの数値が思わしくなくステロイド変更にて経過観察中。痛みの自覚は強くない様子」と総括した。

 作成したサマリーは、O情報として薬歴に記録(【4】)。さらに申し送り事項を記載する「確認事項」の欄に、サマリーの有無と作成日時を記す(【5】)。これにより、服薬指導の際、検索機能を使って素早くサマリーを呼び出せる。

 トミザワ薬局では、11年9月~12年9月に、薬歴委員会のメンバーが在籍する5店舗でサマリーを試験的に作成。処方が頻繁に変更されている症例や、患者の自覚症状や臨床検査値の推移が薬歴に記録されている症例など45例を対象とした。作成後、サマリーを分類したところ、最も多かったのは副作用に関するサマリー(10例)で、高血圧や脂質異常症、糖尿病、不整脈など慢性疾患に関するサマリーも多かった(写真2、写真3)。

写真2 スタチン系薬サマリーの例

HMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬)が処方されていた65歳女性のサマリー。スタチン系薬の種類がたびたび変更されたため、薬歴を読み返したところ、コレステロール値の悪化や副作用が見られたタイミングで処方変更が行われていた。サマリーを作成した石山氏は、「引き続き副作用を確認していく」と総括した。その後、1年にわたって経過観察を続けたが、副作用は認められなかった。そのため、2012年8月11日にサマリーが更新され、「処方変更なし、気になるSEもなく、体調安定している。引き続きSE確認していく」と書き加えられた。

写真3 夜尿症サマリーの例

半年という短い期間に頻繁に処方変更が行われた夜尿症の9歳男児のサマリー。小児患者の場合、サマリー作成は、経過を振り返るだけでなく、剤形や味などによる服薬コンプライアンスへの影響を見直す機会にもなる。

薬歴と服薬指導の質が向上
 サマリーを実際に作成してみて、明らかになったメリットは多い。

 一つは、薬歴をじっくり読み返す過程で、埋もれていたプロブレムを発見できること。それにより、「患者からの聞き取りや薬歴記載時に、前後のつながりをより一層意識するようになった」と同社教育研修部長の齋藤五郎氏は言う。

 患者に病識を持たせたり、一歩踏み込んだ服薬指導を行う上でも、サマリーが役立つ。例えば、こんな事例があった。

 ある喘息患者の薬歴を石山氏が読み返したところ、毎年冬の初めに喘息発作を起こしていることが分かった。そこで同氏は、患者が冬の初めに来局した際、「冬になると喘息がひどくなるようですね。今年もひどくなるようでしたら、受診してください」と指導した。患者は、「言われてみれば、確かにそうですね」と驚いた様子だった─。

 Do処方が続いている症例では、サマリーによって、単調になりがちな服薬指導にメリハリが付く。「『いつもと同じお薬ですね』と言うのと、『このお薬、もう5年も飲んでいるのですね』と言うのとでは、薬剤師に対して患者が抱く印象は大きく変わるようだ」と武藤氏。「継続して見てくれている」という信頼感から、患者の方から積極的に経過を話してくれるようになったケースもあるという。

 サマリーは、日常の薬歴業務の中で、個々の薬剤師が必要性を感じた時点で作成するもの。グループ全店舗での運用に向け、薬歴委員会は今後、各店舗を訪問して、メリットと作成方法を伝授していく考えだ。「ケアの質向上はもちろん、『また来たい』と患者に思ってもらえる薬局づくりにつなげていきたい」と齋藤氏は話している。(内海 真希)

トミザワ薬局の薬歴委員会のメンバー。左から順に、武藤巧氏、石山裕介氏、齋藤五郎氏、高橋政浩氏。このほか、小鶴新田店(仙台市宮城野区)の國定伸治氏、蒲生店(同)の奥山譲二氏を加えた6人から成る。サマリーの作成方法や得られたメリットについて、2012年10月の日本薬剤師会学術大会で発表した。
写真:向田幸二

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