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DIクイズ5(A)
DIクイズ5:(A)フィブラート系薬が追加された糖尿病患者
日経DI2013年6月号

2013/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年6月号 No.188

出題と解答 : 堀淵 浩二
(クオール株式会社[東京都港区]西日本薬局事業本部)

A1

(2) ペルオキシゾーム増殖活性化受容体(PPAR)γ

 インスリン抵抗性とは、肝臓や筋肉、脂肪細胞などにおけるインスリン感受性が低下し、インスリンが効きにくくなった状態を指す。インスリン抵抗性が存在すると、食事による血糖上昇を感知して膵β細胞からインスリンが分泌されても、筋肉や肝臓が血中のブドウ糖を取り込みにくくなるため血糖値が下がらず、糖尿病の発症や進展につながる。

 またインスリン抵抗性は、肥満(特に内臓肥満)、高血圧、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール血症などとも関連が深い。肥満やこれらの病態が合併した状態はメタボリックシンドロームと定義されており、インスリン抵抗性などを背景に糖・脂質代謝異常が複合的に進行し、動脈硬化性疾患の発症に至ると考えられている。

 近年、BIP(Bezafibrate Infarction Prevention)試験のサブ解析から、脂質異常症治療薬でフィブラート系薬に分類されるベザフィブラート(商品名ベザトール、ベザリップ他)により、冠動脈疾患(心筋梗塞の既往または安定狭心症との診断)の患者におけるインスリン抵抗性の進展が有意に抑制されることが明らかになった。

 このサブ解析では、BIP試験に参加した冠動脈疾患の患者3122例中、データの欠落例などを除いた2504例を対象に、ベザフィブラート400mg/日投与群およびプラセボ投与群のインスリン抵抗性を2年間追跡している。

 その結果、プラセボ投与群ではインスリン抵抗性の経時的な上昇が認められたが、ベザフィブラート投与群ではインスリン抵抗性の上昇が抑制され、両群間には有意差が認められた。

 この研究は、インスリン抵抗性に関してベザフィブラートの長期効果を調べた最初の大規模臨床試験であり、同薬が糖尿病や、メタボリックシンドロームの一因であるインスリン抵抗性の進展を抑制することが示唆された。

 フィブラート系薬は、核内受容体の一つであるペルオキシゾーム増殖活性化受容体(PPAR)αに作用し、主に脂質代謝に関わる遺伝子の発現をコントロールすることで、脂質代謝を改善する。また、ベザフィブラートは他のフィブラート系薬と異なり、インスリン抵抗性に関与するとされているPPARγにも働く。このことから、PPARγの活性化を介してインスリン抵抗性を直接改善すると考えられている。

 インスリンには、脂肪組織の血管内皮細胞表面に存在するリポ蛋白リパーゼ(LPL)の活性化を介して、血中トリグリセリドの脂肪細胞内への取り込みを促進する作用がある。糖尿病やインスリン抵抗性があるとインスリンの作用不足によりLPL活性が低下し、高トリグリセリド血症を呈する一方、インスリン抵抗性を改善すると、このような代謝異常は是正される。

 これらの知見を総合すると、ベザフィブラートの処方意図は、インスリン抵抗性の原因となる高トリグリセリド血症への介入に加えて、インスリン抵抗性の改善により、インスリンが持っているLPLを介したトリグリセリド代謝の正常化も狙ったと推測される。

こんな服薬指導を

イラスト:山田 歩

 今回新たに処方されたベザトールというお薬は、糖尿病のお薬ではありませんが、先生がおっしゃるようにインスリンの効きを良くする作用があります。ベザトールはコレステロールや中性脂肪を下げるお薬で、とりわけ中性脂肪を下げる作用が強いのです。

 中性脂肪が多くなると、インスリン抵抗性といって、なかなかインスリンが効きにくい状態にもなってしまうことが知られています。それで先生は今回、このお薬で中性脂肪を下げながら、糖尿病のお薬の効き目を良くするという、一石二鳥の効果を狙って処方したと考えられます。

参考文献
1)Arch Intern Med. 2006;166:737-41.

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