(1)プラミペキソール塩酸塩水和物(商品名ビ・シフロール、ミラペックス) 1mg ロチゴチンは、ドパミンD1~D5受容体とセロトニン5-HT1A受容体に対してアゴニスト活性を有する非麦角系ドパミンアゴニストである。ロチゴチンは消化管や肝初回通過効果による代謝の影響を受けやすい一方、脂溶性の高さと皮膚からの吸収効率が良いことから、経口薬ではなく、貼付薬として開発された。また、パーキンソン病の治療では、神経変性による嚥下障害など服薬コンプライアンスを妨げる要因が多く存在するため、貼付薬が望まれていた背景がある。 パーキンソン病と、中等度から高度の特発性レストレスレッグス症候群(下肢静止不能症候群)の適応で(ただし後者はパッチ2.25mgと4.5mgのみ)、わが国では貼付剤が2013年2月にニュープロという名称で発売された。 臨床試験で1回貼付後、ほぼ24時間血中濃度が有効域を維持することが分かっている。また、運動改善効果と薬の効果が減少し日常生活動作が困難になる、いわゆるオフ時間を短縮する。今回、Nさんの娘さんが「お薬が切れる間際の不調」を示唆していることもあり、医師はこれまで服用していた内服薬からロチゴチンに変更したと考えられる。 なお、表1のドパミンアゴニスト内服薬からの切り替え表によれば、ロチゴチン9mgとプラミペキソール塩酸塩水和物(商品名ビ・シフロール、ミラペックス)1mg、ロピニロール塩酸塩(レキップ)4mg、カベルゴリン(カバサール他)1.5mg、ペルゴリドメシル酸塩(ペルマックス他)1mgがほぼ同等の効果である。なお、ロチゴチンの添付文書には「通常、成人にはロチゴチンとして1日1回4.5mg/日から始め、以後経過を観察しながら1週間ごとに1日量として4.5mgずつ増量し維持量を定める」とあるが、ドパミンアゴニストの服用歴がある患者には漸増の必要はなく、換算表を参考に内服薬と同等のロチゴチン貼付薬に切り替えてよい。 貼付部位は肩や上腕(二の腕、肩と腕の間)、腹部(肋骨の下)、大腿部、臀部、側腹部(肋骨から腰部)の正常な皮膚が適する。皮膚刺激を避けるため、貼付場所は毎回変えるよう指導しなければならない。また、接着面を完全に密着させるために、皮膚に貼り付けた後、20~30秒手のひらで上から押さえるのが望ましい。 なお、ロチゴチンは貼付薬であるが、臨床試験では副作用として突発性睡眠や傾眠が報告されている。本剤を使用中は車の運転など、危険を伴う機器操作や作業をしないよう指導する。 イラスト:加賀 たえこ 今回から貼り薬が出たのは、Nさんがお薬が切れる間際に不調が出るためだと考えられます。貼り薬には、前回までの飲み薬と同じ働きをする成分が入っていますが、貼っている間ずっとお薬の効き目が続きますので、これまでのような不調が出にくくなるといわれています。 貼り薬は腕やおなか、太ももなど毎日場所を変えて貼ってください。お薬を密着させるため、皮膚にお薬を貼った後、手のひらで20~30秒押さえるとよいでしょう。飲み薬と同様に、急な眠気が起こるかもしれません。車の運転などはしないでください。 参考文献
出題と解答 : 今泉 真知子
(秋葉病院[さいたま市南区]薬剤科)
こんな服薬指導を
1)『パーキンソン病治療ガイドライン2011』(日本神経学会)
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