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特集:第3章
薬局・薬剤師はどこに向かうのか
日経DI2013年6月号

2013/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年6月号 No.188

1、アインファーマシーズ 代表取締役社長 大谷 喜一氏
2、日本調剤 代表取締役社長 三津原 博氏
3、スギホールディングス 代表取締役会長 杉浦 広一氏
4、ウエルシアホールディングス 代表取締役会長 池野 隆光氏
5、シップヘルスケアホールディングス代表取締役社長 古川 國久氏
6、日本医師会 副会長 中川 俊男氏
7、全国訪問看護事業協会 常務理事 上野 桂子氏
8、日本薬剤師会 会長 児玉 孝氏
9、厚生労働省医薬食品局薬事企画官 中井 清人氏

写真:秋元 忍

今は門前薬局に注力し、その質を高めていく段階

─今後の経営環境を見越した長期的な戦略をどのようにお考えでしょうか。

 薬局を取り巻く環境は、今後10年で恐らくわれわれが予測も付かないスピードで変化していくと考えています。どんな変化にも企業として対応できるよう準備しておくことが大切です。一番大きく変わっていくのは在宅医療の分野だと思っていますので、そこに関与できなければ薬局は存続し得ないと思います。

─薬局の数は、もう飽和状態に近いとお考えでしょうか。

 まだ飽和しているとは考えていません。実際、薬局の数もわれわれの出店数も増えています。ただ、明らかに伸びは鈍化していて、個店ベースで収益力も下がっています。それに、来年の調剤報酬や薬価の改定では、大変厳しい局面が想定されます。既存店舗は競争も激しくなっていくでしょう。

─すると、既存薬局のM&Aを活発化させるお考えなのでしょうか。

 もともとわれわれはM&Aを数多く手掛けており、特に意識して活発化させるものではありません。市場が成熟するにつれて、1点に色々なものが集約されていくことは避けられません。家電量販店やスーパーマーケットなどの業界もそうなっています。薬局はまだ混沌とした業界ですが、落ち着いてくれば寡占化は当然だと思います。

─今後はどのようなタイプの薬局づくりに注力しますか。

 基本的に門前への出店を続けていきます。われわれは門前ではなくて「ベストロケーション」と呼んでいます。患者にとって利便性の高い所であり、薬局の公共性と企業の効率性を考える上で一番いい立地だと判断しています。その中で業務の質を高めることが、これから最も重要な課題だと思います。

 病院は新薬を処方しますので、薬剤師の知識も常にブラッシュアップが必要です。質の高い薬剤師が育成されますし、門前タイプの出店にフォーカスすることが重要と考えています。

─面分業の店舗展開は考えていませんか。

 面分業の薬局を作ると、立ち上がりまでに相当な時間を要し、またスタッフや在庫など当社のフォーマットを変更しなければならないため、難しい部分があります。実は過去に面分業の店舗も作ったことがありますが、全部失敗しています。今はもう薬局がたくさんあり、患者がそれぞれ使い分けていますので、門前と面という考え方自体がなくなりつつあるのではないでしょうか。

 食品や生活用品なども扱う方針はありません。大手のドラッグストアなどとは、スケールが違い過ぎて、価格面で太刀打ちできません。コンビニやネット通販なども利便性が高いので、その分野はわれわれがやらなくても十分です。やはり調剤の質を磨いて、役割を果たしていくべきだと思います。

─在宅医療に関して、御社はどのように関与されていますか。

 弊社は昨年、在宅医療部を作って、10人ほどのチームで全国の店舗を教育しています。訪問回数も増えており、今年3月を例に取れば、居宅療養管理指導料を49店舗で1639回算定しました。配達だけなら119店舗で1万6635件の実績があります。薬剤師が足りないので業務のコントロールが難しいですが、さらに注力していきます。

写真:秋元 忍

薬局の大規模化・寡占化は避けられません

─今後の事業環境の変化をどう感じておられますか。

 薬局は当然、これから淘汰が進むでしょう。何年先かは分からないけれど、3万軒台にまで減っていくんじゃないかな。この業界はもっと寡占化が進んだ方がいい。今の薬局の大半を占める、いわゆるパパママ薬局では、本来国が要求するレベルの業務内容と量をこなせませんから。薬局店舗は大規模化・高機能化が進み、設備投資が今まで以上に必要になる。経営力のない小さな薬局は潰れていくと思います。

 もちろん、しっかり組織化して、人や設備に投資しているところは、立派な個人薬局として残るでしょうが、人材確保や後継者の問題があるので、そう簡単にはいかないでしょう。

 もっとも、医薬分業が進む余地はまだあります。端的に言えば、分業が進まない最後の大きなハードルは薬価差益です。薬価がさらに下がったり後発品がもっと普及したら、差益も減るので、もっと多くの医療機関が薬を手放します。弊社としては、あと500軒くらい増やす余地があるとみています。

─御社の出店攻勢にも変化が出てきたといえるのでしょうか。

 病院門前ではない、「面対応薬局」の出店を加速しています。昨年新規に出店した59店舗のうち36店舗が面対応薬局で、かれこれ100店舗くらいになりました。本来は、薬局としてこういう形が一番理想的ですが、今はまだ経営が難しく、赤字店舗が3分の1ほどある。こういう店舗は、薬剤の種類と在庫も多くなるし、在宅に行かなければならないし、夜間営業も求められます。

 ただ、われわれは米やラーメンを売ったりはしませんよ。あくまでヘルスケアの範囲をカバーするのが役目だし、自分の不得手なことはやらない。

─御社は特に、後発品への注力を前面に出されている。

 ええ、子会社に後発品メーカーがありますから。弊社薬局の73%が、最もハードルの高い後発医薬品調剤体制加算3(19点)を算定しています。扱う後発品約500品目は子会社から供給でき、患者ニーズの98%が賄えます。

 今後は、政府も効率的な社会保障体制の構築を強固に進めるでしょう。つまり、後発品の徹底的な推進が、薬局に課せられた最大の使命なんです。1兆5000億円の調剤技術料を取っておいて後発品が進まないのはけしからんですよ。やらない薬局はマーケットから退場すべきです。在庫を抱えるのが負担だなんて理由にならない。後発品への加算も、数量ベースで22%というような低いレベルでも取れる点数は、公費の無駄遣いだから終了していい。

─「薬局はもうけ過ぎ」と批判される中で、三津原社長の6.5億円の報酬がやり玉に挙がることが多いですね。

 資本主義である以上、利益は社会の評価であるという哲学が私の中にあり、そうした批判は別に気にしません。私は創業以来33年、土日も正月もほとんど働いてきました。弊社薬局の店舗は500軒近くありますが、報酬をそれで割ると大した金額ではないでしょう。

 結局、この業界は医療費の取り合いになっているから、どこかを悪者にすると自分たちが得するといった悪い習慣は、以前からあるんですよ。もうかっている医療機関だってたくさんあります。

 まあ、今期は業績が悪かったから、私の報酬も少し下がると思いますよ。

写真:森田 直希

個人宅の在宅医療に照準
いかにサービスに磨きをかけるか

─スギ薬局を、「地域医療対応型ドラッグストア」と位置付けておられますね。

 2000年に株式上場するとき、「調剤併設ドラッグストア」を標榜しました。でもその頃から地域医療に目を向け、社内で在宅医療の勉強会を粛々と始めていたのです。いよいよ世の中が地域医療に注目し始め、社内に対応できる薬剤師が育ってきたので、5年ほど前に「地域医療対応型ドラッグストア」という看板を掲げました。満を持してといっても過言ではありません。

 大病院の門前薬局は、ものすごく効率がいい。うちも実験的に4店舗経営しています。門前だけにしろと株主に随分言われました。でも私は、あえてやりませんでした。25年後に社会がどうなっているか、ドラッグストアとしてどうあるべきかを考えたら、われわれは地域医療対応型です。

 そこで薬剤師は、2つの大きな使命を果たさなければなりません。1つは在宅医療、もう1つは予防医療です。調剤ができるのは当たり前ですが、薬剤師として生涯を懸けるのならば、これからは在宅に行かないと。調剤だけでは患者様の信頼は獲得できませんから。加えて、健康寿命を延ばすこと、つまり予防医療への貢献は、ますます求められるでしょう。予防医療の部分にはフィーは付きませんが、そこは利益を追求しなくてよいと思っています。結果として、地域の信頼を得られればいい。

─在宅医療はどのような戦略で取り組まれていますか。

 現在は数として施設が多い。ただ15年先を考えたら、絶対に個人宅。今、ここのサービスを、いかに磨くかです。

 個人宅は効率が悪いというのは、遠くに行かなきゃいけないからですよ。だったら密に作ればいい。どこに行ってもスギ薬局があるというふうにすることです。私は6000~7000戸、だいたい人口2万人に対して1店舗配置しようと考えています。それも繁華街ではなく、住宅地に。郊外に大型店舗を出すことは考えていません。200坪ぐらいの店舗で、調剤、OTC薬、化粧品で売り上げの6割、利益の9割を目指す、これが基本です。

 特に高齢者人口が増加している首都圏、中部圏、関西圏での店舗展開を加速するために、当社もM&Aについて検討しなければなりません。理念が合う企業があればと願っています。

─ネット販売も含めて、将来の薬局はどうなると考えておられますか。

 これからは間違いなくネットの時代ですから、ネット販売に対しては危機感はあります。ただ、どんなにネットが全盛になっても、ネット販売に適した物と適さない物がある。薬と化粧品はカウンセリングのニーズがあります。徒歩5分のお店に信頼できる人がいれば、対面で買うでしょう。ネット販売の影響で厳しくなるのは、安さを売りに広域から集客している業態でしょうね。

 OTC薬販売と地域医療は24時間対応が求められます。ですから、今後は10店舗に1店舗は24時間対応にしていきます。その店舗を核にして周囲に出店し、ドミナント戦略を展開するつもりです。そうして地域のニーズに合わせて在宅医療をやる、訪問看護をやる、必要があれば米国のようにインストアクリニックもやる。これからは、そういう時代になりますよ。

写真:秋元 忍

薬剤師にも強い使命感が求められる時代が来る

─2025年に向けて、どのような戦略を描いていらっしゃいますか。

 今、考えているものが将来にも通用するのかは、正直、よく分かりません。ただし、高齢化が進んでいくことだけは間違いないので、扱うサービス、商品はおのずと変わっていくでしょう。私たちは医療提供者の一員ですから、調剤をやらないということはあり得ません。ただ調剤だけでなく、在宅もやるし、その先にある介護にも目を向けていきます。介護と連携する機能を、全店舗に持たせていきたいと考えています。

 少子高齢化が進み人口が減少していく地方では、生活に必要なサービスを提供する店がどんどんなくなっていくでしょう。店がなくなると、そこに住んでいる人の行き場が減ってしまう。買い物をしたり、人に会ったりする場所がなくなるのは大問題ですよ。だから、そういった地域にわれわれが店舗を作り、そこに薬剤師を配置していきます。

 長期的に見れば、調剤報酬は必ず下がるでしょう。その中で採算に乗せていくためには、どうしても物販が必要です。量ではなく質を提供する物販。私どもの平均的な店舗の物販構成比は、食品が3割弱、化粧品が2割、残りがOTC薬と日用雑貨です。ただ、これからは出店する地域によって、品ぞろえは柔軟に変えていこうと思っています。家電製品や衣類、生鮮食料品を扱ってもいい。要は、その地域で何が必要とされているのか、です。

─出店戦略や店舗形態が変化していく中で、御社が薬剤師に求めるものも変わりますか。

 「田舎には行きたくない」という薬剤師ではダメです。医師はどんな僻地だって行きますよ。それは、自分がこの地域の医療を支えるという使命感があるからです。薬剤師にも、そういう強い思いがなければ、医師と対等に仕事ができるわけがない。薬剤師にも強い使命感が求められる時代が来ると思います。

 使命感の強い薬剤師が、地域から信頼され、薬剤師の地位を向上させるんです。だから私たちは、使命感の強い薬剤師を育成し、必要とされる地域に出していく会社にならなければいけないと思っています。

 10年後、20年後は、調剤の仕事のほとんどは機械化されるでしょう。でも、きちんと飲めているのかを確認して、どうしたら飲めるのかを考えるのは機械ではできません。例えば、認知症の患者さんが来店して、「薬の数が違う」とクレームしてきたとします。そのとき「そんなことはありません」と対立するのではなくて、患者さんを受け入れた上で適切に対拠して薬を飲んでもらうような、人をケアできる薬剤師でなければなりません。その患者さんがどういう人なのかを見抜く力が必要とされるようになります。

─薬剤師の未来について、どう考えておられますか。

 これからは“薬剤師”が必要なんじゃない、“優秀な薬剤師”が必要なんです。地域に溶け込んで、自立して仕事ができる人。「薬剤師なのに、こんなこともできる」って、とても大切だと思うんですね。

 私は、薬剤師の未来が暗いとは思いません。むしろ、今よりいい方向に行くと思っていますよ。今の薬剤師の仕事は永遠に続くのではなく、違った形に変わっていく。その形は、本来の薬剤師の仕事なんです。やることはいっぱいある。薬剤師が、夢のある仕事を手掛けていく時代が来ると思いますね。

写真:山本 尚侍

スクラップしないM&A
これからの薬局はケアセンターの役割を

─薬局のM&Aを積極的に行っていますね。

 弊社には医療機関の移転・建て替えやコンサルティング、医療設備・機器・材料の販売、有料老人ホームの運営など、39のグループ会社があり、医療機関など事業者向けのBtoBが柱になっています。薬局事業は全国規模で6社、約80軒を運営しており、その多くはM&Aで加わった会社が新規出店した店舗です。

 実は創業当初、薬局事業は行っておらず、顧客の医療機関から頼まれたのをきっかけに始めました。そのうち、薬局の質をもっと高めたい、そのためには地域に密着した質の高い薬局と組もうということでM&Aに目を向けました。

 弊社のM&Aの方針はまず、傘下に入る会社の文化と歴史を尊重すること。これまで、ホールディングス全体でM&Aをしながら、65社になりましたが、どの会社も全て存続させています。これは誇るべきところです。買収される薬局は恐怖やストレスを感じるかもしれませんが、良い文化は残します。地域になじんだ会社の名前や店舗の名前を変えることも強制しません。

 また、「スクラップはしない」がモットーです。不採算店の閉店をM&Aの条件にしたりはしません。また、買収した店舗と既存店舗が競合しないように、薬局の立地に注意を払っています。

 そして、働く薬剤師さんが主体性を持ち、薬剤師ならではの力を発揮してもらえる環境を整えるようにします。

写真左から、シップヘルスケアホールディングス取締役の沖本浩一氏、古川國久氏、グリーンファーマシー株式会社代表取締役社長の古川健一郎氏。

─具体的には。

 弊社は医療機器の取り扱いも専門です。大型の店舗に薬剤払出機を、癌専門病院の門前なら無菌調剤のためのクリーンベンチを導入するなど、設備面でバックアップします。もちろん、安全に使うためのスキルもグループ内の研修で身に付けられるようにします。

 不採算の店舗では、在宅に力を入れたり、グループ会社が周辺に医療モールや有料老人ホームを作って、そこから処方箋を応需する形にするなど、スクラップしない方法を考えます。

 薬剤師が不足する店には、薬剤師を会社間で派遣し合うことも可能です。

─10年後、御社が目指す方向は。

 これまでの工夫を継続し、新規出店とM&Aが進めば、10年後の薬局店舗数は300軒まで伸びると思います。

 事業の主軸は調剤で、在宅医療にはより積極的に取り組みます。もちろん、患者さんからOTC薬の相談を受けたら、しっかり応対できる薬剤師に働いてもらいたいと思いますが、弊社の事業はBtoBが主体ですから、薬局をドラッグストア化することは考えていません。

 これからの薬局は、地域を包括するケアセンターの役割を担うことが求められます。そのために、弊社がこれまで培ってきた、医療機関や介護施設との連携のノウハウを生かし、社員教育にも力を入れていきたいと思います。

写真:小林 淳

薬剤師は本来やるべきことをしっかりと

─診療報酬改定を控えて、薬局に対する風当たりが強まっています。

 調剤医療費が伸び過ぎています。「伸びているのは薬剤料だ」と言われますが、技術料もかなり伸びています。だから次期診療報酬改定では、見直す必要もあるだろうと思っています。

─医薬分業を推進するために、政府が経済誘導した面があると思います。

 医薬分業は患者さんにとって、いいことではありません。わざわざ薬局に行く必要がある上、医療機関で薬をもらうよりも自己負担額が増えるのですよ。

 分業によって薬局の薬剤師による薬の説明や服薬指導が行われるようになったという声もありますが、それは十分に説明しない医療機関の問題で、そこを改善すべきです。病院の薬局でも薬剤師は説明しています。

─国がセルフメディケーションを推進する中で、薬剤師はかかりつけ薬局の役割を担うべきという声もあります。

 セルフメディケーションは、「自分で薬を飲んで治しなさい」ということではないのです。自分の健康に責任を持って、運動をする、食事に注意する、禁煙をする、そして最後に薬です。薬の前には医療機関を受診しなければなりません。それを履き違えて、生活習慣病治療薬をOTC薬にしようなどと言っているのは間違いです。

─チーム医療において、薬剤師の職能を拡大すべきとの声もあります。

 それは患者さんが望んでいることなのでしょうか。薬剤師の方は、研修をして、こういう症状のときはどうだとか、こういうときは受診勧奨しようとかやっていますが、それは診断と治療方針の決定だから、薬剤師の業務ではないはずです。「一生懸命勉強してやっているから大丈夫」と言うけれど、やること自体が間違っています。

 その一方で、OTC薬の第1類販売時に書面を使って説明しているのは5割程度だというでしょう。薬剤師は本来やるべき仕事をしていないのです。患者さんにとって何がいいかをしっかりと考えて行動してもらいたいと思います。

写真:秋元 忍

在宅ではもっと存在をアピールしてもらいたい

─訪問看護の立場から薬局、薬剤師に何を期待しますか。

 当協会では09年から12年まで、厚生労働省が行った訪問看護支援事業に参加し、医師会、薬剤師会と協力して医療材料等供給支援事業を行った幾つかの都道府県にヒアリングしました。ヒアリングの結果、医師の処方箋に基づいて薬局から医薬品や衛生材料を患者宅に配送してもらったのですが、これは非常にうまくいきました。

 今後、在宅医療の中では注射薬や中心静脈栄養(IVH)などが多く使われるので、無菌調剤室を備えた薬局へのニーズが増えるはずです。また今後、在宅で癌患者の看取りを行うケースが増えていくことを想定すると、24時間対応で麻薬などを供給してもらえるといいと思います。

 一方、在宅では看護師や介護職員が薬剤管理や配薬などにかなり時間を使っていますが、その業務を薬剤師に分担してもらえれば看護師などの業務を効率化できます。残薬管理や、複数の医療機関から出ている薬の重複の有無、OTC薬との併用禁忌や相互作用などの確認も、薬剤師に期待するところです。特にOTC薬については薬剤師の働きに大いに期待します。

─薬剤師の在宅に対する取り組み方をどうご覧になっていますか。

 在宅ではお宅に上がって話を聞くわけですが、その際に重要なのは、いかにして患者やその家族に信頼されるかです。現場で見ていると、薬剤師には人間関係をつくるのが得意ではない人が多いように思います。中には非常に上手な方もおられますが。

 医師や看護師、介護スタッフとの連携という点でも、薬剤師は積極性に欠けている気がします。このため、ケアマネジャーが会議を開く際にも、薬剤師に声を掛けていないことが少なくありません。介護保険の場合、ケアプランに盛り込まれなければ在宅に関われないわけですから、ケアマネジャーに顔を覚えてもらい、チームケアの一員であるということをもっと積極的にアピールした方がいいと思います。

写真:秋元 忍

調剤だけが薬局だと思っていないか

─診療報酬改定を控えて、医薬分業に批判的な声が噴き出しています。

 日本薬剤師会に入り、26歳の時に米国と欧州の医薬分業の実態を見に行ってカルチャーショックを受けました。当時、日本の分業率はゼロで薬剤師は薬物療法に全く関与できておらず、大量の薬が処方され、その名前は患者さんに分からないようにするのが普通でした。これは変えなければならないと思い、医師や消費者に説明して回りました。そういう思いでやってきた立場からすると、現状は大変残念です。

 医薬分業を進めたことは間違っていないし、それが医療の情報公開につながったのは間違いありません。インフォームドコンセントの普及も後発医薬品の推進も、医薬分業が後押しした面がある。医薬分業は医療制度の1つで、制度そのものに問題があるわけではありません。その制度下における薬局、特に保険調剤を扱う薬局のあり方に大きな課題があるということだと思います。

─薬局は経済的に恵まれ過ぎという指摘もあります。

 診療報酬は本来、1軒1軒の医療機関、医療提供施設が地域医療に貢献できるように設定されていて、個々にはフィーが多過ぎるとは思いません。

 しかし薬局は薬剤師だけでなくても、株式会社でも開設者となれます。その場合、数百の店舗を経営でき、経営効率も良くなります。われわれは過去に、薬局法人が基本で株式会社を開設者に認めるのはやめてくれと訴えてきましたが、それが通らないうちに株式会社が増え、上場会社まで出てきました。日本は国民が安心して医療にかかれるよう税金を投入しているのに、それを自由経済だ、株式上場だといわれても少し違和感を覚えます。だからといって今さらなくせるものではありませんが。

─今年4月に「薬剤師の将来ビジョン」で薬局の将来像を示しました。

 あのビジョンは、「本来の薬局って何ですか」と、薬剤師に対して改めて問い直したものです。「調剤だけが薬局と思っていませんか」と。

 薬局は地域医療を担う存在の1つです。病院薬剤師は病院の中のチーム医療を担い、薬局薬剤師は地域のチーム医療を担う。その器が薬局です。

 もっと言うと、健康を自分で守るセルフメディケーションという概念があって、その支援拠点が薬局だと思います。病院よりも幅広く、地域の医療、健康、福祉の全体を担当するものです。そこでは、調剤は当然、OTC薬もサプリメントも化粧品も扱うことになります。

 地域で薬剤師が役立つことは他にもたくさんあります。在宅もそうだし、学校薬剤師も大事です。ところがこれまで、処方箋調剤だけに考えが及び過ぎたのでしょうね。このままでは地域や国民から薬剤師は見放されます。

─今から方向転換ができますか。

 人の意識を変えるのは大変です。でもこれはやらなければならない。その点で期待しているのが6年制卒業生です。学生実習で現場を経験しているので、薬剤師としてのモチベーションが4年制卒業生と少し違う気がします。

─6年制が出てきたこのタイミングで、薬剤師の職能の議論もすべきでは。

 厚生労働省のチーム医療推進会議での議論は看護師さんの話を中心にほぼまとまりつつありますが、あれで終わりにせず、薬剤師の職能についても論じるようお願いしているところです。

写真:秋元 忍

国民が味方になってくれる薬局、薬剤師であれ

─分業バッシングをはじめとして、薬局や薬剤師に対し逆風が吹いています。

 国の財政難を考えれば、医療の効率化は避けられません。薬局、薬剤師の仕事に対して、現状色々批判があることも事実です。現在の薬局のあり方が、国民にとって十分に納得感があるものではないということでしょう。

 今こそ、薬剤師は何ができるのかをきちんと主張しないと、将来は厳しい。薬剤師は調剤室の中だけにいるのではなく、患者から顔が見える立ち位置で、どのように貢献しているかをアピールしなければなりません。

 患者目線、国民目線で何が求められているのか、そのニーズに合った薬剤師の職能であることが必要です。ニーズはその時代で変わり得るものですが、現時点では、OTC薬と在宅医療ではないでしょうか。期待に応えられれば、国民が味方になってくれるはずです。

─在宅はどのように始めたらよいか分からない、採算に合わないという声は少なくありません。

 かつて病院の薬剤師が病棟に出るとき、何をすればいいのか分からないという状況でした。そこに答えが用意されていたわけでなく、自分たちがどうしたいのかを考え、何ができるのかを示してきて、今の仕事があるのだと思います。在宅も同じです。やりながら問題を解決していくしかない。実態がなければ、評価も得られません。

 やってくれと言われるのを待つのではなく、少なくとも普段から地区薬剤師会、地域の医療機関と顔の見える関係を築いておく必要があるでしょう。

 OTC薬を積極的に扱っている薬剤師に聞くと、適切に提供したときに患者にすごく喜ばれて、やりがいを感じると言います。また、在宅に取り組む薬剤師の多くは、目が輝いています。患者のため、世の中のために貢献できているという充実感があるからでしょう。

 今後は、薬剤師が介入してどうなったか、科学的に証明することが求められます。そうした研究を行った結果、薬局に所属する薬剤師が学位を取得できるようになればいいと思います。

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