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DIクイズ1(A)
DIクイズ1:(A) ピロリ検査をすぐに行わない理由
日経DI2013年6月号

2013/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年6月号 No.188

出題と解答 :飯嶋 久志
(千葉県薬剤師会薬事情報センター)

A1

(2)プロトンポンプ阻害薬(PPI)が投与されていると、検査が偽陰性になる恐れがあるため。

 ヘリコバクター・ピロリ(H. pylori)の除菌は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)が関与していない胃・十二指腸潰瘍の再発抑制や、胃癌の発症予防に有効とされている。従来、除菌治療の保険適用は胃・十二指腸潰瘍や胃MALTリンパ腫などに限られていたが、2013年2月、ピロリ感染胃炎に対する除菌治療も保険適用となった。

 除菌治療を行う際はまず、ピロリ感染を確認しなければならない。日本ヘリコバクター学会の『Helicobacter pylori感染の診断と治療のガイドライン2009改訂版』では、ピロリ菌の感染診断のための検査法として、(a)迅速ウレアーゼ試験、(b)鏡検法、(c)培養法、(d)抗体測定、(e)尿素呼気試験(UBT)、(f)糞便中抗原測定─を挙げている。(a)~(c)は内視鏡による生検を必要とするのに対し、(d)~(f)は生検が不要である。各検査法の特徴を踏まえ、複数の検査法を組み合わせることで、診断の精度が高まる。中でもUBTは、13Cで標識された尿素を用いてピロリ菌のウレアーゼ活性を検出する検査法であり、簡便で、感度・特異度ともに高いため、よく用いられる。

 さて、今回のケースでは、胃潰瘍のあるYさんに対し、処方医がピロリ感染を疑い、除菌治療を考慮している。処方医が「吐いた息を調べる簡単な検査」と話していることから、感染診断の方法として、UBTを予定していることがうかがえる。

 ただし、PPIや一部の防御因子増強薬など、ピロリ菌の静菌作用を持つ薬剤を服用している患者に感染診断を行うと、偽陰性を示すことがある。特に、YさんのようにPPIを服用中の患者では、UBTで偽陰性を示しやすい。国内外の研究では、試験方法に差異はあるものの、6.3~61%と高い偽陰性化率が報告されている(参考文献2)。この要因として、PPI自体が弱いながら抗菌作用を持つことや、胃内pHを上昇させてピロリ菌のウレアーゼ活性を低下させることなどが考えられる。

 そのため、ガイドラインでは、ピロリ菌の静菌作用を持つ薬剤を服用中の患者に感染診断を行う際は、どの検査法においても、それらの薬剤を少なくとも2週間は中止するよう推奨している。今回、Yさんの処方医がラベプラゾールナトリウム(商品名パリエット他)をファモチジン(ガスター他)に変更して2週間分処方したのは、胃潰瘍の治療を継続しながら、UBTでの偽陰性を回避するためだと考えられる。

 なお、H2受容体拮抗薬にピロリ菌の抗菌作用は認められないことが報告されている。ただし、一部の症例ではUBTで偽陰性を呈する可能性があり、その原因は胃内pHの上昇であると推察されている。

 ピロリ菌の感染が確認された場合には、1次除菌法として、PPI+アモキシシリン(AMPC)+クラリスロマイシン(CAM)を1週間投与する3剤併用療法が第一選択とされている。治療終了から4週間以上間隔を空けた後、再度感染診断を行い、除菌の成否を判定する。除菌不成功の最大の要因はCAM耐性菌であることから、2次除菌法としてはCAMをメトロニダゾール(MNZ)に変えたレジメンが推奨されている。

こんな服薬指導を

イラスト:加賀 たえこ

 先生からお聞きになった「吐いた息を調べる検査」は、ピロリ菌が胃の中にいるかどうかを調べる検査のことだと思います。専用のお薬を飲んだ後、袋に息を吹き込んで、それを機械で分析します。

 ただ、Yさんがこれまで服用されていたパリエットには、ピロリ菌の活動を抑える作用があり、服用中に検査を行うと、ピロリ菌に感染していても検出できないことがあります。検査の前にはパリエットを2週間以上中止することになっているので、先生は胃潰瘍に効果があり、検査に影響しにくいガスターに変更されたのでしょう。

 Yさんは、今日はお昼休みに受診されたのでしょうか。次回もこの時間帯に受診するのでしたら、朝食は取らずに受診してください。検査で陽性だった場合は、3種類のお薬を1週間服用する除菌治療を行うことになると思います。

参考文献
1)日本ヘリコバクター学会『H.pylori 感染の診断と治療のガイドライン2009 改訂版』
2)Helicobacter Research.2004;8:31-5.

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