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特集:第1章
薬剤師の活路はここにあり 在宅とOTC薬で地域医療に貢献
日経DI2013年6月号

2013/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年6月号 No.188

 将来に向けて薬剤師が取り組むべき課題として、多くの関係者が挙げるのが、在宅医療とOTC薬の販売。現状で採算が取れないとしても、地域における存在感を高めるためにも、早急に取り組まなくてはならない。

 薬局の未来像を考えた場合、念頭に置いておかなければならないのは、「社会保障と税の一体改革」で描かれた医療提供体制の仕組みだろう。12年2月に閣議決定された「社会保障・税一体改革大綱」は、2025年に向けた社会保障のあるべき姿を描いている。その中で都道府県や市町村などが構築すべきものとされている仕組みが、地域包括ケアシステムである。

 地域包括ケアシステムは、医療や介護の事業者などが連携しながら高齢者の生活を支援していく体制だが、この中で高齢者に何らかの課題が生じた時に、医療者、介護者その他多数の職種が参加して、困っている患者のケア方針を議論する場が設けられる。それが地域ケア会議(図4)だ。

図4 地域ケア会議のイメージ

(厚生労働省資料を基に編集部で作成)

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 「地域ケア会議において、役割を与えられる薬局でなければ、今後薬局としての存在意義がなくなっていく」と語るのは、日本薬剤師会理事の木村隆次氏。「薬局のこれからの役割は地域住民の健康増進と介護予防の2つ。ここへ参画することが生き残るための条件だ」と語る。

 地域包括ケアシステムの中で薬局が担う業務として、在宅医療は外せない。このため、今のうちに在宅医療の実績を重ね、役割を担うための準備を進めなければならないだろう。

 もっとも、在宅医療はそう簡単に獲得できる“市場”ではないことを考慮しておくべきだ。

 薬剤師が患者宅を訪問する場合、医療保険の「在宅患者訪問薬剤管理指導料」か介護保険の「居宅療養管理指導料」を算定できるが、実態は介護保険で算定されているケースが多い。そして現行の介護保険では、要介護度に応じて患者が受けられるサービスの総枠に制限がある。

 患者の担当ケアマネジャーは、ヘルパーによる介護や看護師による訪問看護などもその枠の中で配分しなければならない。仮に、薬剤師が一度訪問して服薬困難などの問題が解決されれば、その後はヘルパーや看護師の訪問が優先され、薬剤師が呼ばれない可能性があるわけだ。

 特に慢性疾患では、いわゆる前回の処方内容と同じ「Do処方」が多い。その場合、現状のように月1~2回の算定ができなくなることも十分に考えられる。ある厚労省関係者は、「薬剤師の介入の成果を多職種で評価する仕組みも必要だ」と指摘する。

 在宅医療は当面、収益源ではなく、地域で信頼されるための「必要条件」の一つと捉えておくべきだろう。

OTC薬で軽医療を担う

 地域医療の中で薬剤師が果たす役割としては、患者の健康相談への対応や、予防医療への参画も重要となる。その具体的な方法の一つとして、OTC薬を通じた患者のセルフメディケーションのサポートが挙げられる。

 医療費削減の観点から、厚労省は軽度な疾患の医療にかかる費用を、患者の負担で賄う方法を模索している。実際、2012年度診療報酬改定では、単なる栄養補給目的でのビタミン剤投与が保険の対象外とされた。

 また、中医協では以前から患者の受診時定額負担が取り沙汰されるなど、軽医療の“保険外し”は大きなテーマとなっている。中医協委員の白川修二氏は、「軽度の医療はOTC薬で済ますべきだ。これからは、一定の条件をクリアした医療用医薬品を保険から外せるようにし、スイッチOTC薬をどんどん増やしていかなければならない」と語る。

 例えば、OTC薬の販売体制が調剤報酬における基準調剤加算の算定要件に入れるといったアイデアも、今回取材した中で複数の関係者が挙げていた。現状では大きな動きが見られていないが、今後OTC薬が推進されることは間違いないだろう。

 OTC薬を扱わなければ経営が立ち行かなくなるような状況に、すぐにはならないかもしれない。しかし、面分業タイプの薬局では、患者から地域の健康相談窓口に選ばれるための条件として、また調剤報酬での加算算定を狙い、OTC薬に注力する動きが加速するとも考えられる。

 今後、薬剤師が担うべき役割として、在宅医療やOTC薬の推進を例に挙げたが、これらは言うまでもなく、その一部に過ぎない。今後、医療保険制度や介護保険制度などが変わるに伴い、さらに多様化するニーズに対応していく動きが、これからの薬局や薬剤師に求められている。

「地域ケア会議」に参加しなければ終わりだ
日本薬剤師会理事 木村 隆次氏

 これからの薬局が地域でどのような役割を担うかを考えたとき、鍵になるのが「地域ケア会議」(図4)だ。地域ケア会議は、医療者、介護者その他多数の職種が参加して、困っている患者のケア方針を議論する場。この会議で役割を任されないような薬局は生き残れなくなると思う。

 この制度の中で薬剤師が担う役割は、主に在宅療養患者の暮らしを見つめながら、医療と介護と連携して必要なサービスを提供していくこと。残薬の調整や飲みやすい剤形への変更などはもちろん、患者の様子から薬の副作用を発見したり、疾患の予防活動も重要となる。

 この会議において、薬剤師によるサービスが必要だと判断されたとき、各薬局に役割を振り分ける作業は、主に地区薬剤師会が担うことになるだろう。薬剤師が関与する目的は患者のQOL向上にあるわけだから、いわゆるパパママ薬局でも、大手チェーンでも、やる気や実力がある薬剤師なら重用される。逆に効率優先でろくに役割を果たせないような薬剤師なら、地域ケア会議で見直しが入り、外されていく。本当に地域に貢献できるか否かが問われるわけだ。

 もちろん、全部の薬局に在宅や夜間対応を求めるものではない。ただ、できることをシェアして協力する姿勢は必要だ。私の地元の青森では既に、地区薬剤師会が地域ケア会議への参加を見越して、生活機能や認知機能のチェックリストを会員薬剤師に配布し、患者アセスメントを始めている。(談)

在宅ができる薬剤師は医師に頼られる
全国薬剤師・在宅療養支援連絡会(J-HOP)副会長
つばめファーマシー(宮崎市)代表取締役 荻田 均司氏

 経験豊富な医師でも、在宅で生じる全ての疾患に適切に対して、適切な薬剤の種類や剤形を選択できるわけではない。それらを提案できる薬剤師は、医師から感謝され、信頼を得ることができる。

 しかし、在宅医療に注力する薬剤師はまだまだ少ない。調剤に特化した方が経営的に効率がいいのも理由の一つだが、最もよく聞くのが「訪問の依頼がないから」だという。これは非常に残念なことであるのと同時に、薬剤師の意識改革の必要性を痛感させる。

 そういう人には、「あなたは薬局で何をしているのか」と問いたい。これまで外来通院で薬局窓口に来ていた患者が来なくなったら、その人は通院困難になったのかもしれない。患者の話に耳を傾ければ、その兆候やニーズが把握できるはずだ。仮に医師やケアマネジャーから依頼がなくても、自分の大切な患者なら、まずは訪問して様子を見てはどうか。そこから患者との信頼関係が築かれていく。(談)

女性薬剤師こそ在宅医療に向いている
日本薬剤師連盟常任総務、ねもと薬局グループ(茨城県)代表 根本 ひろ美氏

 私は20年以上前から在宅医療に関わっているが、在宅医療の現場にこそ女性薬剤師の活躍の場がたくさんあると訴えたい。女性は家事や衛生面など生活上の問題点を敏感に察知できる。訪問看護師を見ていて分かるように、在宅患者と強い信頼関係を築くのも得意。調剤以外に薬剤師の存在感を見せられる、絶好の機会と捉えてほしい。

 女性はどうしても、出産や子育てで休職せざるを得ない時期がある。しかしそれは逆にチャンスにもなる。子育てと高齢者のケアには共通する部分が多く、母としての経験が生きてくる。在宅への訪問は勤務時間が1件ずつ区切られるので、パートタイム勤務者にも仕事がしやすい。休職中には、ケアマネジャーの勉強をして資格を取るのもいい。

 女性薬剤師としての働き方を考えるなら、在宅医療は外せない。(談)

OTC薬販売で患者に選ばれる薬局に
上田薬剤師会会長、イイジマ薬局(長野県上田市)代表取締役社長 飯島 康典氏

 薬局は調剤だけでなく、OTC薬や衛生材料、健康食品や雑貨まで、患者の健康維持に関する物品は全て扱うべきだ。

 昔はどの薬局も皆そうだった。具合が悪くなった患者に対し、OTC薬で対処するか、病院に行くかの相談を受け付けていた。それを、日本薬剤師会や政府が、分業を推進するあまり調剤偏重にしてしまい、処方薬以外を扱わなくしてしまった。つまり今の薬局は、OTC薬を「忘れてしまった」のだ。

 当店はチェーンでも何でもない個人薬局だが、OTC薬は1200品目扱っており、売上は年間千数百万円で利益が出ている。これは、OTC薬専用の相談窓口を作って、患者の話を聞きながら適切なOTC薬をコンサルティングしていることが評価されている証だ。当店の隣には大手ドラッグストアがあるが、大手の安売りに負けていない理由は、こうした情報の付加価値が高いからこそだ。

 また、OTC薬を販売するメリットは、患者から地域の健康相談窓口として認識され、信頼されて処方箋を任されるようになること。OTC薬でもうからなくても、複合的な効果があればいいし、何よりも患者の役に立って感謝されることに喜びがある。OTC薬の相談を受けると、調剤窓口での相談内容と、また違った話が聞ける。患者が困ったときに頼りになることが、地域で選ばれる薬局になるための条件だ。

 ただし、頼りにされるためには、OTC薬の知識だけでなく、どこどこの医師が何に詳しい、評判がいいといった地域の医療情報まで把握しておく必要がある。 (談)

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