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特集:第1章
調剤報酬改定の行方 キーワードは「後発品・包括・在宅」
日経DI2013年6月号

2013/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年6月号 No.188

 調剤報酬の点数設計は、薬局のあり方を大きく左右する。調剤報酬改定の長期トレンドとして、後発品の使用や在宅医療など、国が推進する施策に積極的に取り組む薬局がこれまで以上に評価されそうだ。

 調剤報酬改定で中長期的に予想される方向性は、(1)後発品のさらなる使用促進、(2)包括化、(3)“調剤中心”の点数から在宅への重点配分─である。

 後発品の使用促進をめぐり、2007年以降、「13年3月末までに数量ベースで使用率を30%」という政府目標が掲げられていた。しかし、11年9月時点で22.8%にとどまっていたため、政府は新たな目標を13年4月5日に発表。それによると、18年3月末までに後発品の置き換え率60%以上を目指すこととされている。

 この置き換え率とは、後発品が存在する薬剤のうち、実際に後発品が使われた割合を数量ベースで算出したもの。置き換え率60%は、旧指標の数量ベース使用率では34.3%に相当し(図3)、あと5年で使用率を約1.5倍にする必要がある。

図3 後発品の使用率と政府目標

(厚生労働省資料を基に編集部で作成)

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 過去の改定では、使用促進策として、処方箋様式の変更、後発医薬品調剤体制加算の導入、薬剤情報提供文書による後発品の在庫状況や価格の通知の要件化などが行われた。一般名処方に対する加算も設けられた。

 後発品の使用促進でこれ以上、薬局向けに新しい点数が設定されることは考えにくく、今後も、後発医薬品調剤体制加算の引き上げで対応することになるだろう。同加算は、現在22%以上で5点、30%以上で15点、35%以上で19点の3段階になっている。それを改め、2段階または一本化し、目標達成のためにより高い調剤率を評価する方向になるだろう。

 ここ数回の改定の結果検証調査では、後発医薬品調剤体制加算を算定していない薬局は約半数あり、二極化している。

 過去の中央社会保険医療協議会(中医協)では、支払側委員から「後発品調剤率が既に(平均)22.4%なら、『20%以上』の点数を廃止してはどうか」といった主旨の発言が出ており、旧指標で20%台の点数は廃止される可能性が高い。そして、例えば置き換え率55%以上と60%以上など、現状よりも高い点数設定にした後、65%以上で一本化するといった可能性もある。

 中医協で医師委員から、薬局に対する厳しい発言が出ている今、「目標に向かって取り組まない薬局は見捨てる」改定が行われてもおかしくない。

 薬局にとっては、新しい政府目標に向かってしっかりと使用率を上げ、「薬局は政府目標の達成に貢献している」とアピールすることが重要だろう。

各種加算は包括の可能性大

 調剤報酬全体の傾向では、薬学管理料や調剤技術料の加算は、今後包括化されていくとみられる。これは、診療報酬全体の流れとして、患者に分かりやすい報酬体系が求められていることや、かつてはインセンティブを目的として新設された点数が全体で算定回数が多くなり、薬剤師の業務として定着し、当初の役割を終えたと判断されるようになるからだ。

 直近の例を挙げれば、お薬手帳の普及につながった薬剤情報提供料は12年改定で廃止され、薬剤服用歴管理指導料に一本化された。今後は、ハイリスク薬の服薬指導や薬歴への記録を評価した特定薬剤管理指導加算や乳幼児服薬指導加算なども薬剤服用歴管理指導料に包括することで、整理統合されるだろう。

 一般に調剤報酬を議論する際、「いったん包括化されると、点数が引き下げられやすくなる」と包括化に反対する声が出がちだが、限られた財源の中で受け入れざるを得ないだろう。

「在宅の質に加算」の流れ

 国の施策や識者のコメントにもあるように、ますます在宅医療を重視した点数の設定が行われる可能性は高い。

 在宅医療の普及のスピードによるところは大きいが、まず在宅業務を行う薬局数を増やすことが優先され、次の段階から質を高めていくイメージだろう。

 具体的に考えられるのは、在宅患者調剤加算(処方箋受け付け1回に付き15点)の引き上げや、在宅での業務に対する加算の新設だ。

 例えば、医師以外の訪問看護師や介護職と連携している実態をきちんと記録した場合の加算を新設して、業務の質を担保することが考えられる。つまり、患者の家に薬を配達するだけで在宅の点数を算定できるようにはしないということだ。

 また、独居や高齢者のみの世帯は、ますます増えるとみられる。戸建てに住むこうした高齢患者を訪問するのは、集合住宅に行くよりも“効率が悪い”といえるが、一方で地域に密着した薬局がこうした在宅を担うように、さらにインセンティブを設ける可能性もある。具体的には、現在の在宅患者訪問薬剤管理指導料のうち、複数の患者がいるような集合住宅向けの点数(350点、同一建物居住者の場合)を引き下げて、同一建物居住者以外の点数(500点)を引き上げるなどの措置だ。

 独居や高齢者だけの世帯では、特に生活環境や家庭環境なども把握したり、他職種との連携が求められることから、算定要件として、よりきめ細かい内容が盛り込まれることもあり得る。

 また、在宅の中でも特に癌や認知症など、専門的な知識が必要な場合の服薬管理も、薬剤師が関与するメリットを現場がアピールすれば、調剤報酬で評価する流れになるかもしれない。

 在宅業務への手厚い評価が行われる一方で、既存の調剤基本料などは大きく引き下げられるだろう。

 というのも、薬剤師による在宅業務が普及していない、普及させられない理由として、薬剤師不足を挙げる声は少なくない。だが、それは、今まで通り外来の処方箋を応需することを前提にしている。つまり、今は「在宅をやらなくても、持ち込まれた処方箋の調剤をしていれば経営は十分やっていける」というわけだ。

 こうした状況では、在宅はいつまでも普及しないことから、今後は、調剤基本料の引き下げなどで、ある程度の誘導が行われる可能性は高いだろう。

薬局が関わる利点をデータで示してほしい
中央社会保険医療協議会委員、健康保険組合連合会専務理事 白川修二氏

 医療費が増大している。薬局の方々には危機感を持って、“無駄な部分”は削減していただきたい。

 これまでの調剤報酬改定では後発品の使用を進めるための施策が行われてきた。だが、後発医薬品調剤体制加算などインセンティブを設けると、改定直後に後発品使用率が一時的に上がるが、その後は伸び悩む。薬局には「改定で点数が付いたから使う」のではなく、持続的に医療費削減に取り組む姿勢を求めたい。

 中央社会保険医療協議会(中医協)では、診療側の医師委員の一部から、「後発品の使用促進をはじめとした、薬局に対するインセンティブはもうそろそろ(なくても)いいんじゃないか」と、厳しい意見が出るようになっている。

 もともと医薬分業が進められてきた背景には、薬局に患者の服薬管理を担ってもらい、結果として総医療費が下がることへの期待があった。もちろん、医療の高度化や高齢化による医療費の自然増はやむを得ない部分もあるが、医薬分業を進めるために投入した財源を上回るほどのメリットが見えてこないことに、私を含め不満を感じる人は少なくないだろう。

 例えば、薬剤服用歴管理指導料で評価されているお薬手帳による服薬管理や残薬整理。2012年の調剤報酬改定で評価されたところだが、保険者の立場としては、「薬剤師が関与して、こんなメリットがあった」と、中医協でデータを示してほしい。財源が厳しくなる中、薬剤師にはそれを説明する義務があると思う。

 また、高齢者や精神疾患の患者に対する服薬管理にも力を入れてほしい。薬の相互作用のチェックはもちろん、高齢者では薬の飲み方、介護に携わる人との連携など、きめ細かい対応が求められる。

 精神疾患の患者は、複数の医療機関から同様の薬を処方してもらっている人が少なくない。その中には必ずしも必要とはいえない薬があるはず。患者の安全と医療費を抑える観点からも、今後は医療機関との連携はもちろん、薬局同士の連携もより求められるようになるだろう。(談)

写真:中山 博敬

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