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医師が語る 処方箋の裏側
少量の経口ステロイドで、全身の筋肉痛が劇的に改善
日経DI2013年6月号

2013/06/10
江澤 智絵

日経ドラッグインフォメーション 2013年6月号 No.188

 全身の筋肉が痛くて動けないと訴えて、当院を受診した宮本和子さん(仮名、77歳)。痛みは起床時に特にひどいという。

 症状が朝に顕著なのは、リウマチ性疾患の特徴である。宮本さんは関節ではなく、筋肉の痛みを訴えていたが、念のために指の関節の腫れや圧痛といった関節リウマチの特徴がないことを確認した上で、血液検査を行った。その日は痛み止めとして、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の内服薬と貼付薬を処方した。

 5日後に出た検査結果では、関節リウマチの検査は全て陰性。一方で、赤血球沈降速度(ESR)が亢進していた。血液検査でESRだけが顕著に上昇するのは、リウマチ性多発筋痛症(polymyalgia rheumatica、以下PMR)の特徴の一つ。高齢で、全身の筋肉に痛みがあることも考え合わせ、私は宮本さんをPMRと診断した。左は診断後の処方箋である。

 PMRは、65歳以上の高齢者に多い原因不明の疾患で、患者は頸部や肩、大腿部など全身の筋肉の激しい痛みを訴える。朝のこわばりやESRの亢進などを基に診断するが、最大の特徴は、少量の経口ステロイドが著効すること。実際にはこれが診断の決め手になる。NSAIDsは無効である。

 宮本さんの処方箋を受け取る薬剤師は、痛みがあるのに痛み止めが中止され、経口ステロイドだけになったことを不思議に思うかもしれない。しかし、これがPMRに対する処方の特徴だ。

 宮本さんには、まずはプレドニゾロン(商品名プレドニン)15mg/日を3日間服用してもらい、その後漸減した。服用後2~3日で症状が改善し、2週間目には痛みはすっかり消失。「今までの痛みが嘘のようだ」と喜んでもらえた。

 今後はさらに減量し2.5mg/日にする予定だ。時々、薬を止めて様子を見るが、患者によっては何年も投薬する。その場合は、骨粗鬆症などへの注意が必要だ。(談)

太田 秀樹氏
Ohta Hideki
医療法人アスムス(栃木県小山市)理事長。1979年日本大学医学部卒業。自治医科大学整形外科講師などを経て、92年におやま城北クリニックを開業。在宅療養支援診療所、訪問看護ステーションなどを運営する。日本在宅医学会幹事などを務める。

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