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日経DI2013年6月号
薬剤管理
薬剤師のための「在宅アセスメント」入門

2013/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年6月号 No.188

執筆:高橋 康晃(シップヘルスケアファーマシー東日本株式会社[仙台市泉区])
監修:早川 達(北海道薬科大学)
在宅患者の薬剤管理の現況

 近年、日本における高齢患者の療養の場所は、病院から自宅・施設へとシフトしてきている。しかし、在宅現場での薬剤管理や服薬コンプライアンスは、決して良好とはいえない。図1に、薬剤師の初回訪問時に見いだされた薬剤管理上の問題点とその割合を示す。調査からは、在宅患者が「薬剤の保管状況」(57.3%)や「服用薬剤の理解不足」(46.4%)、「薬剤の飲み忘れ」(35.7%)、「副作用の発症」(23.3%)など、薬剤にまつわる種々の問題を抱えていることが分かる。

図1 薬剤師の初回訪問時に見いだされた薬剤管理上の問題点(複数回答)

(出典:日本薬剤師会「後期高齢者の服薬における問題と薬剤師の在宅患者訪問 薬剤管理指導ならびに居宅療養管理指導の効果に関する調査研究報告書」)

 こうした問題点の解決には、薬剤師の介入が大きな力を持つ。薬剤師が在宅患者の服薬上の問題に、積極的に関わって対応していくことが求められているのである。

初期アセスメントのポイント

 初期アセスメントに用いるアセスメントシートを、表1に示す。初期アセスメントでは、まず、服薬状況に問題がないかを確認する。患者宅の残薬をチェックし、飲み残しや過剰服用が疑われる場合は、認知機能の低下や嚥下障害など背景要因の追究も行っておく。服薬状況に問題がある例としては、(1)薬剤の飲み残しがある、(2)薬剤を指示より多く飲んでいる、(3)用法通り服用できていない、(4)服用方法・時間・量が理解できていない、(5)四肢の拘縮・変形、嚥下困難などのため薬が飲めない、(6)薬の飲み方を医師の指示なく自己調節している、(7)併用薬の飲み合わせについて確認していない──などが挙げられる。

表1 薬剤管理に関する初期アセスメントシート

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 また、患者が服薬しにくい剤形や、実施が難しい服薬手技がないかも確認しておく。坐薬の包装(ブリスターパック)が硬すぎて開けられない、カプセル剤が喉につかえて飲みづらい、手の震えや視力の低下のため液剤が計量できない、点眼ができないといったケースは珍しくない。手指の筋力や動作性、視力、嚥下機能、認知機能などは、加齢に伴い低下していくため、患者の状態変化を注意深く観察し、定期的に剤形などの適切性を評価することが大切になる。

 嚥下障害などのため、患者が錠剤やカプセル剤を服用できない場合は、錠剤の粉砕やカプセル剤の開封(脱カプセル)が相談される。この場合、粉砕・脱カプセルした薬剤が患者宅での保管中に吸湿や分解などで変質する恐れはないか、薬効や薬物動態に影響はないかについて評価しておく。

 薬剤の管理・保管を誰が行っているか、すなわち「薬のキーパーソン」が誰であるかは、ケアの方針に大きく影響するため把握しておく。本人以外が薬剤を管理している場合は、その関わりの程度(積極的か消極的かなど)も併せて確認する。

 薬剤の保管場所や保管方法は、薬剤の物理化学的安定性に影響するばかりでなく、過剰・重複服用や服用忘れといった服薬コンプライアンスにも関わる。問題がある場合は、適切な保管方法や保管・管理に役立つ道具などについて、薬のキーパーソンに指導する。必要に応じ、お薬カレンダーやお薬ボックスの導入を提案したり、一包化薬の薬包に色線を引くなどの工夫により、服薬ミスを減らしコンプライアンスを高めるようにする。

 なお、入院加療と比べると、在宅療養では医療職によるアセスメントの頻度が低く、患者の状態変化が気づかれにくい。認知機能や生理機能などの状態変化により、薬効や副作用が変わることはよく経験する。

 例えば、体内水分量が低下すると、睡眠薬などの脂溶性薬剤が残留しやすくなる。栄養状態の悪化により血中アルブミン値が低下すると、蛋白結合率が高い薬剤の血中濃度が高くなる。肝臓や腎臓での血流量や機能が低下すると、薬剤の代謝・排泄が遅れて血中濃度が上昇する。こうした変化を考慮して、剤形や調剤方法も含めた服用薬の適切性を随時評価し、見直していくことが、在宅医療・ケアにおいては肝要となる。

薬剤師による支援のポイント

 認知症やパーキンソン病などの中枢神経疾患がある場合、疾患の重症度をアセスメントし、重症度に応じたケア方針を立てる。認知症の場合、進行に合わせて服薬管理方法を見直していくとよい(図2)。服用忘れが多いようであれば、服用回数を減らすような処方整理を医師に提案する。また、服薬を促したり介助するための人的協力が必要であれば、ケアマネジャーに相談し、服薬介助が可能になる体制をケアプランに組み込んでもらう。

図2 認知症の重症度に応じた服薬管理方法

 パーキンソン病では震え、脳血管障害や骨・関節疾患では麻痺や変形、痛みにより、手指で細かい作業を行いにくくなり、服用困難や薬の飲み忘れ・使用漏れなどのリスク要因となる。服薬介助を含めたケアを医師やケアマネジャーと検討し、さらに機能回復のためのリハビリテーションを理学療法士などに相談する。

 服薬コンプライアンスを低下させ得る身体状況としては、(1)嚥下、(2)運動機能、(3)視覚、(4)聴覚─の4つの機能に関する障害が挙げられる。

 嚥下機能が低下すると、薬剤の飲み込みに支障を来す。また、手指の運動機能障害がある場合は、PTPシートや薬包からの薬剤の取り出しや、取り出した薬剤の保持が難しくなるために、服薬コンプライアンスが低下することがある。写真1に示すような自助具や生活用品を、患者や家族に紹介して役立ててもらうとよい。

写真1 手指の運動障害がある人の服薬を支援する道具の例

 視覚障害や聴覚障害がある場合は、服薬手技や薬剤管理への影響度をアセスメントし、必要に応じて服薬への支援を導入する。その際には、本人の意向や、自分でできる範囲を尊重する。

セルフチェックテストの回答 A1…(2)、A2…(5)、A3…(9)

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