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患者指導ワンポイントレッスン
虫刺されのケア
日経DI2013年6月号

2013/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年6月号 No.188

監修 大滝 倫子氏(九段坂病院[東京都千代田区]皮膚科顧問)

 虫刺症(ちゅうししょう:虫刺され)は、春から秋にかけて日常診療でごく普通に遭遇する疾患である。虫刺されの原因となる昆虫は、蚊、ノミ、ハチ、毛虫など多種類にわたる。昆虫のほかにもダニやクモ、ムカデ、海ではイソギンチャクやクラゲなどでも同様の症状を引き起こす。

 診療の場では、虫刺症と診断できても、原因の虫を特定することは一般に難しい。刺された瞬間に痛みを覚えるハチなどでは虫を確認しやすいが、多くは刺されたときは意識せず、後になって痒くなり気づくためである。

 虫刺症の症状は、原因となる虫の種類や刺された人の年齢、刺された頻度などによって個人差が大きい。刺咬部に生じる紅斑の大きさも人により異なる。さらに紅斑の形状も、(1)紅斑の中心に小丘疹を作る、(2)水疱となる、(3)水疱が血疱となる、(4)刺咬部に小さな結節を生じ、それが持続する─など多様である。

「子どもばかり刺される」理由

 虫刺症の症状には、即時反応と遅延反応があり、反応の強さは年齢や刺された頻度により変遷していく(図1)。例えば、蚊に初めて刺された場合には、皮膚反応は出ない(ステージI)。次に刺されたとき、刺された頻度の少ない乳幼児期には、即時反応は出ずに遅延反応が強く出る(ステージII)。同種の蚊に刺され続けると、刺されてすぐに即時反応が表れ、刺されるたびに即時反応が増強する一方、遅延反応は減弱していく(ステージIII)。さらに刺され続けると、遅延反応は出なくなり、即時反応だけとなる(ステージIV)。さらに進むと両反応とも出なくなり、蚊刺に対して免疫の成立した状態となる(ステージV)。

図1 蚊刺反応の変遷

 「子どもばかり蚊に刺されて、大きく腫れる」という親の訴えに接することは少なくない。これは、同じ環境で同種の蚊に刺されても、幼児はまだステージIIないしIIIで遅延反応が強く表れ、かつ長く続くために皮膚症状が目立つのに対し、親は短期間に消えてしまうIV、または全く反応しないVになっているからである。このような蚊刺による二峰性の反応は、他の吸血性あるいは刺咬性の昆虫でも基本的には同じと考えられる。

アナフィラキシーは即受診

 一般的な虫刺症で軽症であれば、抗ヒスタミン成分を含んだ軟膏を塗って様子を見るように指導する。

 応急処置として、患部を冷水や氷などで冷やすとよい。血管を収縮させることで、全身循環に入る毒の成分を減らすことが期待される。

 発赤・腫脹が強い場合は、副腎皮質ホルモン外用薬を塗布する。痒みが激しい場合、水疱や2次感染を起こし膿疱を形成している場合、長期間持続する結節が見られる場合などは、外用薬とともに抗菌薬、抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬などの内服が望まれるため、皮膚科の受診を勧めてほしい。

 なお、過去にハチやクラゲに刺された経験がある人で、全身に蕁麻疹(じんましん)が出た、息が苦しい、頭が痛い、全身がだるいなどアナフィラキシー症状が見られた場合は、大至急、医療機関を受診する必要がある。私は、このような患者には、アドレナリン注射液(商品名エピペン注射液)の携帯を勧めている。

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