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徹底マスター 薬の相互作用としくみ
利尿薬は尿酸分泌を阻害し血清尿酸値を上昇
日経DI2013年6月号

2013/06/10

日経ドラッグインフォメーション 2013年6月号 No.188

落合 寿史、杉山 正康 ラララ薬局(福岡市)、杉山薬局(福岡県嘉麻市)

 尿酸は、内因性または食事由来のプリン(アデニン、グアニン)ヌクレオチドの最終代謝産物であり、主に肝臓でキサンチンオキシダーゼの働きによって産生される。ヒトでは血清中の濃度が7.0mg/dLを超えると、高尿酸血症と診断される。同症は生活習慣病の一つであり、未治療のまま放置すると、痛風発作(関節炎)や尿細管・尿路結石、重篤な腎臓病の発症につながるほか、高血圧や心筋梗塞、脳卒中など、動脈硬化症のリスクも高くなる。

 一方、尿酸自体は強力な抗酸化作用を持ち、生体内で老化や様々な疾患の防御因子として機能すると考えられている。血清尿酸値の低下はアルツハイマー型認知症やパーキンソン病、多発性硬化症などの神経変性疾患の発症に関与することも報告されている。

 血清尿酸値の変動は、体内での尿酸の産生と排泄のバランスが崩れることで起こると考えられる。痛風患者の95%以上を占める原発性痛風では、約1割が尿酸産生過剰型であるのに対し、尿中尿酸排泄低下型が6割、両者の混合型が約3割と、実に約9割の患者で尿酸の腎排泄が低下していることが明らかになっている。従って、痛風の発症には、主に腎の尿酸排泄トランスポーターが関与していると考えられる。ただし近年、腸管の尿酸排泄トランスポーターが痛風の原因遺伝子であることも報告されている(後述)。

 今回は、尿酸トランスポーターの機能や相互作用について解説する。

4コンポーネント仮説の否定

 一般に、尿酸の全排泄量の約3分の2が腎から尿中に排泄されることが知られている。尿酸の腎排泄機構は、従来、(1)糸球体濾過、(2)再吸収、(3)分泌、(4)分泌後再吸収─という4つの独立した要素からなると考えられていた(4コンポーネント仮説)。しかし、このモデルは薬理学的な研究成果に基づく推論であり、分子生物学的な裏付けに乏しかった。

 そんな中、ヒト腎において選択的に尿酸を輸送するトランスポーターのURAT1(SLC22A12)が発見された(Nature.2002;417:447-52.)。以来、全ゲノム解析により多数の尿酸トランスポーターが次々と明らかになり、尿酸の腎排泄は、近位尿細管全体に分布する尿酸トランスポーターを介したものであると考えられるようになった。

再吸収に関わるURAT1

 複数ある尿酸トランスポーターのうち、特に血清尿酸値の調節に不可欠と考えられているのは、腎での再吸収に関与するURAT1とURATv1(別名GLUT9、SLC2A9)である。これらのトランスポーターの尿酸に対する親和性は約370μMと、血清尿酸濃度に近似していることから、尿酸に対する選択性は極めて高いと考えられる。

 有機アニオントランスポーター(OAT)ファミリーに属するURAT1は、近位尿細管上皮細胞の管腔側膜に存在し、細胞内のモノカルボン酸や芳香族カルボン酸と尿細管腔内の尿酸との交換を行う(図1)。従って、URAT1阻害作用を持つ薬剤は、尿酸の再吸収を阻害して血清尿酸値を低下させる。逆にモノカルボン酸および芳香族カルボン酸は、URAT1を活性化し、尿酸の再吸収を促進して血清尿酸値を上昇させる可能性がある。

図1 近位尿細管における尿酸の腎排泄機構

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 高尿酸血症治療薬のベンズブロマロン(商品名ユリノーム他)、プロベネシド(ベネシッド)はURAT1阻害薬である(表1)。また、フェノフィブラート(トライコア、リピディル他)、ロサルタンカリウム(ニューロタン他)などにもURAT1阻害効果があることが示されている。特にロサルタンは、URAT1のmRNA発現量を低下させる可能性も報告されており、高尿酸血症治療中の患者が高血圧を併発した際に投与されることも多い。

表1 主な尿酸排泄トランスポーターと想定される相互作用

(下線は、添付文書に副作用として血清尿酸値上昇や高尿酸血症などの記載がある薬剤)

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 一方、URATv1は、URAT1と同様、腎性低尿酸血症の原因遺伝子として発見された(Am J Hum Genet. 2008;83:744-51.)。URATv1は、近位尿細管上皮細胞の血液側膜に存在し、電位依存的に細胞内の尿酸を血液中(体内)に取り込む(J Biol Chem.2008;282:26834-8.)。URAT1によって上皮細胞内に取り込まれた尿酸が負電荷に帯電しているため、細胞内外に電気化学勾配が生じ、電位差駆動性のURATv1が活性化されると考えられる。URATv1の選択的阻害薬は明らかでないが、ベンズブロマロン(最も強力)、プロベネシド、ロサルタンは阻害効果を持つことが示されている。

分泌に関わるNPT4

 腎で尿酸分泌(排泄)に働くトランスポーターには、上皮細胞の血管側膜に存在するOAT1(SLC22A6)およびOAT3(SLC22A8)のほか、管腔側膜に存在する電位依存性の有機アニオントランスポーター4(NPT4[SLC17A3])がある(J Biol Chem. 2010;285:35123-32.)。

 OAT1およびOAT3は、ジカルボン酸(αケトグルタル酸など)との交換により、血液中の尿酸を上皮細胞内に取り込む。それにより、電位差駆動性のNPT4が活性化され、尿細管腔への尿酸分泌が起こると推測される。NPT4の尿酸に対する親和性は低く、また、OATの基質は多数存在することなどから、これらのトランスポーターの尿酸に対する特異性は低いとみられる。ただし、NPT4の基質で強い親和性を示すループ系利尿薬やチアジド系利尿薬は、NPT4による尿酸分泌を競合阻害し、血清尿酸値を上昇させると考えられている。

 また、OAT阻害薬としては、プロベネシド、ベンズブロマロンのほか、シメチジン(カイロック、タガメット他)、スタチン系薬のフルバスタチンナトリウム(ローコール他;OAT1・3阻害)、シンバスタチン(リポバス他;OAT3阻害[Eur J Pharmacol.2004;483:133-8.])などが知られている。ただし現在のところ、これらの薬剤による尿酸値上昇は臨床上、大きな問題になっていない。

腸BCRPと高尿酸血症

 尿酸の全排泄量の約3分の1は、消化管を経由して糞便中に排泄されるが、従来、ヒト腸管内の尿酸は、腸内細菌により直ちに分解されるため測定が難しく、尿酸の消化管排泄と高尿酸血症との因果関係は不明だった。

 しかし2012年、日本の研究グループによって、腸管に存在する尿酸トランスポーターのBCRP(ABCG2)が痛風の原因遺伝子であることが報告された(Nat Commun.2012;3:764. doi:10.1038/ncomms1756)。研究では、高尿酸血症で国内の病院に通院している男性患者644人のうち、487人(約76%)にBCRP遺伝子の変異(蛋白活性低下)が認められた。だが、予想に反して、BCRP活性低下に伴い、尿中の尿酸排泄量は増加していた。

 これは、腎尿細管上皮細胞の管腔側膜に存在するBCRPの活性低下では説明できない。腎BCRPの活性が低下すると尿酸分泌が抑制され、尿中尿酸排泄量は低下するためである。そこで研究チームは、肝および小腸に存在するBCRPに注目した。BCRPを完全欠損させたマウスの尿酸排泄量を調べた結果、全排泄量の約2%を占める胆汁中への排泄量には変化が認められないが、消化管からの排泄量は低下し、血中および尿中尿酸値が上昇することが明らかとなった。

 これらの結果は、腸BCRPは主に小腸上皮細胞の管腔側膜に存在し、上皮細胞から管腔への尿酸排泄に働いていること、また腸BCRPの活性低下によって尿酸の消化管排泄が抑制され、高尿酸血症や尿中尿酸排泄量の増加を来したことを示唆している。

 研究チームは、このBCRP遺伝子変異による高尿酸血症を新たに「腎外排泄低下型」名付けた上で、従来の分類による「尿酸産生過剰型」と併せて、「腎過剰排泄型(renal overload type)」と呼ぶよう提唱した。

 BCRPはABCトランスポーターの一つであり、様々な組織に発現し、抗癌剤を含む多くの薬物を細胞内から細胞外に排泄する働きを担っている。BCRPの阻害薬は数多くあるが、現在のところ、BCRPを介した尿酸値変動に起因する相互作用の報告はない。また、BCRPは多くの薬剤を基質とし、尿酸に対する親和性は低いが、BCRP阻害作用を示す薬剤は尿酸値を上昇させる可能性がある(表1(3))。

相互作用を回避する対応例

 尿酸トランスポーターが関与する相互作用により、併用禁忌となっている薬剤はない。ただし、高尿酸血症治療薬を服用中の患者に、血清尿酸値を上昇させ得る薬剤を投与する際は、薬効減弱に注意する。中でも、高尿酸血症治療薬とピラジナミド(ピラマイド)との併用は避けた方がよい。

 また、血清尿酸値を上昇させる薬剤を相互に併用する場合は、血清尿酸値の上昇や関節痛などの痛風発作の発現に注意する(ケース1)。特にループ系利尿薬のフロセミド(ラシックス)やチアジド系利尿薬のヒドロクロロチアジドを配合した降圧薬(商品名エカード、コディオ、プレミネント、ミコンビ)を服用中の患者では、血清尿酸値の上昇に常に注意する(ケース1、ケース2)。ただし、血清尿酸値の上昇は自覚症状をほとんど伴わないため、患者には定期的に血液検査を受け、血清尿酸値を確認するよう指導する。ケース1のように、利尿薬を中止せず、高尿酸血症治療薬を追加することも多い。

 そのほか、BCRPを阻害し得る薬剤が投与されている場合も、血清尿酸値の上昇に注意した方がよい。

 高血圧や逆流性食道炎などを治療中のAさん。飲酒の習慣はないが、40歳ごろから血清尿酸値が7.0mg/dL前後の境界域で推移していた。血圧コントロール不良のため、約1年前にミカルディス(一般名テルミサルタン)からミコンビ配合錠AP(テルミサルタン・ヒドロクロロチアジド)に変更になった。

 ミコンビ配合錠に含まれるヒドロクロロチアジド(チアジド系利尿薬)はNPT4を阻害するほか、オメプラール(オメプラゾール)にはBCRP阻害効果があるため、血清尿酸値が上昇する恐れがあった。そこで薬剤師は、ミコンビに変更されて以降、Aさんに対し、血液検査を定期的に実施して血清尿酸値の変化に注意し、手足の関節痛などがあった場合は相談するよう指導していた。

 ミコンビへの変更から約2カ月後の検査では、血清尿酸値が7.9mg/dLまで上昇していたため、さらに注意を促していたが、それ以降は、本人の事情により血液検査が実施されてこなかった。その結果、今回、血清尿酸値が9.7mg/dLまでに上昇していたため、アリスメット(アロプリノール)が追加された。処方医は、血圧が正常値を維持していることを考慮し、ミコンビの中止・変更はしなかったとのことだった。

 その後、現在まで同じ処方が続いているが、尿酸値は正常で痛風発作は認めず、血圧コントロールも良好である。

 Bさんは高血圧と高尿酸血症のため、コディオ配合錠EX(バルサルタン・ヒドロクロロチアジド)を1年間以上服用していた。その間、血圧は正常範囲でコントロールされていたが、血清尿酸値は7.5mg/dL前後と高値を示していた。そして今回、さらに8.0mg/dLに上昇した。処方医はコディオ配合錠からプレミネント配合錠(ロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジド)に変更した。Bさんに飲酒の習慣はない。

 Bさんは、高尿酸血症の薬ではなく血圧の薬が変更された理由について、薬剤師に質問した。薬剤師は、プレミネント配合錠に含まれるロサルタンには、降圧作用だけでなく、腎臓からの尿酸の排泄を促進し、血清尿酸値を低下させる作用があることを説明した。

 数カ月後、Bさんの血清尿酸値は7.5mg/dLに低下し、現在、経過観察中である。なお、血圧は正常値を維持している。

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